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さつい。③

ぶちくらすぞ×××!😡


先週の日曜日
イオンモールへ向かう道中の三叉路で
青のホンダフィットがノロノロとしていた為
先に右折させてもらったのだが
すれ違う際に
フィットの助手席の窓が開き
高齢の男性が怒鳴り声を上げてきた
キレやすいのはどうも若者だけではないらしい


喧嘩を売られた気分で妙に懐かしくなり
学生の頃の思い出に浸る

中学高校時代は喧嘩三昧だった
根っからの格闘好きの俺は
目が合ったら直ぐに挑発して
相手に1発殴らせた後に
正当防衛だと言っては
合気道の技を喧嘩に応用して
血溜まりができるほど殴ったものだ
よくあんなゴロツキみたいなことをしながら
浪人したとはいえ大学に進学し
英語教師になれたのか不思議でしょうがない

ゴロツキ?




きっかけすら分からない記憶の断片に酔う


あれは確か英語教師になる前のサラリーマン時代
新入社員だった俺は飲み会の席で
得意先の田中さんだったか田島さんだったか、
俺の頭髪(当時は長髪にして禿げを隠していた)
を掴まれ弄られて遊ばれていた
ホステス達もウケていたので
まあ、不快だがこれも仕事のうちだと思う矢先
ひと回り上の先輩社員の久保さんが
何故か鬼の形相でその取引先の部長に襲い掛かり
重いパンチが炸裂したところで
俺は久保さんを投げ飛ばした
その勢いで久保さんは一瞬気絶してしまった
身長150センチ台の小柄な俺が取り押さえ
周りは更に呆気に取られてしまっていた

あれから俺は直ぐに会社を辞めた
髪はすっきりとスキンヘッドにして
教員試験に向け大きく舵を切った

久保さんはまだ元気にしているだろうか
恐らく取引先から通報されるなどして
解雇されたに違いない
久保さんは毎朝5時に起きて
アポ無しで狙った企業のオフィスに向かい
偶然を装って担当者を出待ちして
喫茶店に誘い出し商談する
俺には到底無理だと思った

後にも先にも
会社員人生を台無しにしてまで
俺の為に暴力を振るった人は久保さんだけだ


待てよ、久保さんだったか?窪田さんか?



そう言えば俺が新設の進学校に赴任した時
久保だか窪田だか忘れたが
妙に俺に食いついてくる男子生徒がいた

授業中は熱心にバンドの譜面を読んで
クラスの誰とも口を利かない
しかし俺が雑談をすると
目を輝かせ聞いている

俺はある日その生徒を呼び出した


俺: ところでお前は進学する気あるのか?

生徒: え?ないですよ

俺: ないってお前、、卒業してどうすんだ?

生徒: 音響の専門学校に興味あります

俺: 音楽で手に職ってことか?

生徒: まあ、、そうですかね

俺: お前勉強は嫌いなのか?

生徒: 嫌いじゃないです、ただ
  それどころじゃないって感じです

俺: 大学で学んでからでも遅くないぞ?
  お前みたいなこだわりの強い人間ほど
  文学部に向いてるんじゃないかと思うんだ

生徒: はい?俺、本読むの苦手なんですよ
   それに得意教科は数学です

俺: 得意不得意なんて関係ない
  大事なのは関心だ

生徒: 関心ないですって笑

俺: お前が英文法の質問してくる時
  活き活きしてるじゃないか

生徒: ウザいんすよ英文法
  例外ばっかりでムカつきますし
  だから白黒はっきりさせたくて

俺: 楽しんでる証拠じゃないか笑
  ドイツ語履修しろよ、ドイツ語

生徒: はい?なんでですか?

俺: お前みたいな屁理屈をこねくり回す奴が
  もっと楽しめる言語だからだ

生徒: へえ、じゃあもし浪人することあれば
   文学部でも目指しますね

俺: 浪人?お前の実力なら
 今から勉強したら間に合うぞ

生徒: 高校生活でやるべきことは
  勉強じゃなくてバンドです

俺: どうしようもない奴だな笑
  じゃあ暇な時にこれでも読め

生徒: なんですかこれ?文法書?

俺: ああ、バンド終わったら読め
  きっとお前は人文系に向いている

生徒: だからバンドは終わりませんって

俺: しつこいな笑

生徒: しつこいのは先生でしょ笑

俺: 俺からもらったこと言うなよ

生徒: はーい


確かあいつは浪人したと聞いた
大学入学後に俺を訪ねてきたらしいが
その時俺は脳梗塞で入院していた
受かったなら大学名と学部くらい伝言しろよ
と言いたいところだが
何だかそれもあいつらしい
結局は職場復帰して直ぐに転勤となったので
まあ、噛み合わなかったということだ

歳のせいなのか
後遺症なのか
どうも人の名前というものを
俺はなかなか記憶できないらしい
教員にとっては全くもって致命的だ

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