日本学術会議 任命拒否 10・8質問の解説 その1

 1983年の会議録がなぜ重要か

私の質問の大部分は、1983(昭和58)年の参議院文教委員会の会議録の紹介です。「推薦に基づき、内閣総理大臣が任命する」ーーこの条文解釈として公に示されているのは、83年の政府答弁だけだと判断したからです。

私は公設秘書の経験があります。日本共産党の国会秘書は、法案を分析し賛否の起案もします。その際、重要な条文について、過去の国会審議で何が問題にされ、どのような答弁(条文解釈)が示されていたかを確認するのは当然の作業です。
今回も質問準備の第一は、83年の会議録を熟読することから始めました。

83年の会議録を読んで、「総理大臣による任命」の条文解釈が、まさに審議の核心だったことがわかりました。あれこれの議論の一つではなく、ここが焦点だったのです。
学者相互の選挙によって会員を決めていた、これを大きく改定し、学会推薦に基づくとはいえ内閣総理大臣が任命することになれば、人事を通じて政府からの独立が崩されていくのではないか。

政府答弁は、この懸念、危惧を全力で否定していることがわかります。その中で使われたのが「形式的任命」という言葉です。

「二百十名出てくれば、これはそのまま 総理大臣が任命する。二百十名出るとかなんとか であれば問題外ですが、そういう仕組みにはなっておりませ ん。そういう意味で、私どもは形式的任命という ふうに考えており、法令上もしたがってこれは形式的ですよという規定」
1983年5月10日、参議院文教委員会会議録 7ページ、内閣総理大臣官房総務審議官の答弁

「推薦していただいた者は拒否はしない」「形 だけの任命をしていく」
11月24日、参議院文教委員会会議録23ページ、丹羽総理府長官の答弁

さらに、なぜ形式的任命なのかは、なんと中曽根総理自らが答弁していました。

「政府が行うのは形式的任命 にすぎません。したがって、実態は各学会なり学 術集団が推薦権を握っているようなもので、政府 の行為は形式的行為であるとお考えくだされば、 学問の自由独立というものはあくまで保障される ものと考えております。」
5月12日、参議院文教委員会会議録34ページ

国会は憲法に定める立法機関です。国会の法案審議で示される政府答弁は、国民に公に示された条文解釈そのものです。
任命は形だけで、総理に選考や拒否の裁量はない、それは憲法23条、学問の自由の保障のためであるーーこの条文解釈を、なんの議論もなく、いきなりの任命拒否によって破棄する。これは学問の自由だけでなく、国民主権を踏みにじる暴挙と言わなければなりません。

余録

①会議録のページまで紹介
視聴した方にぜひ原典にあたってほしいからです。マスコミの記者も調査報道がすぐにできるようにと。
国立国会図書館のホームページで、国会会議録は自由に読めます。

②官房長に答弁を読ませる
会議録を示すことが質問の中心、しかしこれでは演説にはなっても質問にならない。どうするか、秘書さん達と作戦会議。
大臣答弁を政府側に読み上げさせて、再度議事録に残すことにしました。読み上げることで、官僚に自戒の念が少しでも芽生えると良いのですが。