医療機関になぜお金が渡らないのか(その2)
新型コロナ患者を受け入れる病院ほど大赤字になる。手術をとめ、救急医療を止める、感染症対策として入院患者も他の病院に移す、他の診療を「切る」ことで、感染症に人を集中させる、するとたちまち診療報酬が大幅に減額になってしまう。
4月には悲鳴があがっていたが、それでも、新型コロナ患者受入れ病院に対してさえ「減収補てん」を政府は拒否し続けて今日にいたる。
2・3兆円が都道府県に交付済みなのに・・・
やっと、医療機関への大きな予算がついたのは6月に成立した第2次補正予算だ。
都道府県が、医療機関への支援を行えるように「緊急包括支援交付金(医療分)」を準備し、すでに2・3兆円が都道府県に交付済みとなっている(11月16日現在、以下同様)。
ところが、都道府県から医療機関にわたっているのは6000億円でしかない。
しかも、これは医療機関からの申請の5割だと、菅総理は答弁した(11月30日、参議院本会議)。申請があってもお金が届いていないという問題はあるが、私が驚いたのは、申請を全て執行しても1.2兆円程度ということで、このままでは交付金は5割近く残ってしまう。
医療の逼迫は日に日に深刻になり、億単位の融資を受けてしのいでいるというのに、医療機関への予算は「使い残し」さえ起きかねない。これはどういうことなのか!
医療機関に返金求めることまで起きかねない
埼玉県に、日本共産党県議団が詳しくヒヤリングした。
例えば、新型コロナ患者を受け入れる準備として「病床確保事業」がある。「病床を空けて受入れに備える」という事業で、1日1空床5.2万円〜7.4万円支払うというもの。(注 金額が古い情報だったので訂正しました。確認不足で申し訳ありません。12月11日記)
埼玉県は、4~7月は600床、8月~来年3月は1400床という目標をたてて、医療機関に依頼し目標達成する病床確保となった。医療機関には、概算払いですでに来年3月分まで支払い済み。ところが、「病床確保事業」として積まれた交付金は、まだ約6割が残っているという。この6割分は、もはや医療機関に支払う術がない。
それだけでない。医療機関は4月以降、準備した病床をつねに空床にしていたわけでもない。感染が落ち着いている時期など、他の疾病の患者を受け入れることになる。埼玉県によれば、空床になっていなかった分は、一部返金を求めることもあり得るという。
赤字なのに、感染症と最前線でたたかっているのに、渡したお金を返金しろという事態までありうるとは!
「その1」で、政府の考え方は「ベッド」「設備」への予算であって、医療機関の体制をどうするかを現場に即して考えたとはとてもいえないということ指摘した。医療体制とは、新型コロナ患者受け入れ病院だけでなく、地域医療全体の体制確保が必要で、医師、看護師が辞めていくような事態は何としても回避しなければならない。
用意した予算が、このままでは使い切れない。一方で医療従事者は、心身共に最も苦しい状況で勤務し、ところが冬のボーナスは最も大きな減額になる(医労連の調査では、昨年比で冬のボーナス10万円超減額が加盟労組の1割に達しているという)。
都道府県の裁量で医療機関への支払いを
緊急包括支援交付金は、緊急にもなっていないし、包括的支援にもなっていない。
細かに事業を指定し、細かな計算を求め、事務負担を医療機関に増やし、しかも必要なお金は届かない。
「減収補てん」というシンプルな予算こそが、最も迅速に、最も適切に、最も直接に、給料やボーナスにあてられる。
ここまでくると、様々な合わせ技で、とにかく医療機関にお金を届けることが必要。
交付金が「使い残る」など、あってはならない。一度交付した金額は、都道府県の裁量で、とにかく医療機関支援に使うことも認めるべきではないのか。まして、医療機関に返金を求めることなどあってはならない。
あらゆる知恵をつくして、とにかく政府に求めていきたい。どうか、どうか、間に合うように――そのために、どうか、一緒に声を広げてほしい。