初めてのプロの撮影現場(DJとして)

昨日、幸運なことに役者の友人の宣材写真の撮影現場にアシスタントとして入らせていただくことができた。カメラマンとヘアメイク、そしてモデルである友人のみのコンパクトな撮影現場であったが、プロのカメラマンの撮影現場を初めて経験することができた。

春からスタジオマンで勤務するとはいうものの、スタジオ撮影を手伝うのは初めてである。なので、機材一つを扱おうにも、何が何だかわからない。このネジは何のネジなんだ?っていうか、どうやってこの照明機材はカメラと連携してるんだ??というような感じであった。
まさに右も左も分からない私にカメラマンの方は一から教えてくれた。このライトは背景を飛ばすためにあるとか、ここにウエイトを置かないと倒れちゃうよという具合に。ほとんど良質な撮影講義をマンツーマンで受講しているような状態だった。私が貢献できることは、重いものを運ぶことくらいであった。

そしてモデルがメイクをしている間に私がモデルとなって照明の具合を調整する。テザーケーブルにつながれたMacBook Proの高精細な画面に、寝不足の神様が作ったであろう私の精彩を欠いた顔面が表示される。なんども地面に叩きつけた粘土細工から、工芸品のような美しい顔立ちの友人の宣材写真の仕上がりを予想することは、これからの世界情勢を予想するより困難に思われたが、カメラマンの方はライティングを完成させていく。

いざ撮影となると、私は友人に撮影時の音楽を任された。初対面の人がいる環境で音楽を流すというのは緊張するものだ。友達の友達もいる車の中で助手席に座っている時のような状況だ。無難に流行りのJPopか?いや、ミーハーだと思われたくないな。けど、普段聴いてるマイナーなやつばっかり流したら、そういうメジャーどころをあえて聴いてませんようみたいな感じにならないか??と、心底どうでもいいと思われる自意識の渦の中で、私はジェームスブラウンのプレイリストを再生した。どうこうできない状況はリズムアンドブルースが何とかしてくれるだろうと思った。
しかし、思いの外、ジェームスブラウンって奇声をあげるんだな。いや、普段聴いている分にはシャウトなのだけれども、集中した撮影環境の中ではあまりふさわしくなかったかもしれない。こっそりとNujabesに切り替えた。

カメラマンがシャッターを切るたびにストロボが閃光し、被写体は今の瞬間をキャプチャーされたのだとわかる。それを受けてモデルは姿勢を変えて、それにまたシャッターを切る。閃光する。これだ!という瞬間には連写に伴って連続した閃光が被写体を襲う。いや、襲うというよりはそれは祝福のようなものだった。光を通してやり取りする二人の様子には明らかに非日常的な空気が流れていた。私はしばしそれに見とれながら考えていた。これが自分の踏み込んで行こうとしている業界なのかと。チカチカと明滅するストロボに眼球を焼かれ、心まで焼き尽くされていた。心底、楽しいと思った。MacBook Proにはキャプチャーされた瞬間たちが記録されていく。時折それらの画像を確認しながら目指すべきイメージに向かって二人は会話をする。音声による会話。そしてまた二人のセッションは深く鋭いものになっていく。

Take2ではメインライトを少し硬いものに変更し、シャドウを黒レフで締めた。それに伴って音楽も流れるようなものから、ソリッドなジャズにしようとしたが、なぜか私はsing sing singを流してしまった!聞き馴染みのあるキャッチーなメロディに、みんなでちょっと和んでしまった。しかも、アナログ音源をデジタルに変換したものであったために、レコードのチリチリ音が結構うるさかった。イヤホンで聞く分にはあまり気にならなかったが、スピーカーで大音量となると、ほとんどチリチリを聴いているようなもんだった。撮影時間も残りわずかとなり、私は賭けに出た。BlackEyedPeasのレッツゲットスターティッドを流したのだ。この賭けには成功した。軽快な音楽に合わせラストはモデルとともにシャウトして終了(カメラマンの方は冷静に撮っていたけど、私はモデルよりでかい声で叫んでいた)。最後の最後にして最高にグルーヴィーな瞬間を体験することができた。

その後スタジオ周辺をロケして撮影をし、通行人の整理やレンズ交換をサポートするなどしてアシスタントは終了した。
真っ先にした反省は「スタジオ撮影用のプレイリストを作らにゃいかんなというものだった。私の初めての撮影現場のアシスタントはDJとしての経験として蓄積された(と言いつつもライティングのセットも覚えてノートに記録したりどんなコミュニケーションを取っていたかというのをめちゃくちゃ勉強になった)。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?