諸問題

どんな人にも親はいる。
どんな仕事にもそれにお金を払っている人がいる。

小石を蹴ったら、止まっている黒塗りのベンツに直撃してしまった。バンパーと塗装に傷がつき、その部分だけ白く剥げてしまった。それはごくごく小さなものであったが、たいそう念入りに手入れされたピカピカなボディーと、今まさに自分がつけたという事実が相まって、大変目立つものに感じられた。ベンツは今まさに駐車禁止のシールを貼られているところだった。
こんなところに停めているベンツが悪いのだ————その言い訳の背中をそっとひと押しする駐車禁止のおじさんと目が合う。そうですよね、このベンツをここに停めるのが悪いんですよね、という意味を込めて笑顔で会釈してみたが、おじさんは無表情でまた手元のバインダーに目線を落とした。

コンビニのトイレを借りた。小便をしようとしたら、便座の一番手前の部分におそらく前に使った人の小便が引っかかっていた。便座をあげずに用を足したためだろうとすぐに気が付いた。このコンビニは周辺の現場作業員や、何をするわけでもないご老人がたむろすることが多い場所だったので、大雑把なヒトが盛大にマーキングしたんだなと納得することができた。私はそれをトイレットペーパーで————決してその褐色の液体が手に触れることがないようにたっぷりとくしゃくしゃに丸めて————除菌液を使って拭き取った。私も用を足すために便座をあげた。しかしあげた便座は上がった状態で止まらずにまた下がってきてしまった。何回あげても下がってきてしまう。私は観念して座って用を足した。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?