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ジョン・スタインベック「怒りの葡萄」「二十日鼠と人間」


怒りの葡萄


1940年作品。
世界恐慌(ルーズベルト恐慌)真っ只中のアメリカが舞台。
生産のオートメーション化を図る資本家達と、土地を追われカリフォルニアに移っていった貧困農民層との軋轢闘争を描いた作品。ジョン・フォードの乾いた表情が好き。
これも何度も見た作品だが、数年に一回はまた観たくなる。

先日ネット番組を見ていたら、この作品の原作者としてあまりに有名な「ジョン・スタインベック」についてインテリジェンス・安全保障評論家の江崎道朗さんが「スタインベックは実はコミンテルン(ソ連)のdupesだった」というお話しをされていたんだけど、スタインベックの小説を読んだことのある人なら確かにそれは頷けるなと思った。

この作品って、ラストは労働者たちが自らの手でコミューンを作って終わるんだけど…
それって言ってみればアメリカ版の「蟹工船」みたいな発想であり、ソ連コミンテルンが推進しようと暗躍していた共産化を望む潮流は、この時代はどの国の文芸、映画、演劇にも色濃く影を落としていたんだな…と。

まあ言っちゃ悪いが小林多喜二はdupesなんて高尚な立場でもなく、単にコミンテルン日本支部のスパイ(テロリストの手下)に過ぎない存在だったし、蟹工船はこの作品より10年も前に日本国内で発表されて酷評を受けたいわゆる「なんちゃって作家」なんで、かの世界的に有名なジョン・スタインベックとは才能の基準としても比べる価値ないのだけど。しかしまあ、それくらい生きることに失望し、鬱々としていた時代性を色濃く描き、モノクロ画面からその迸りを感じさせるのがこの「怒りの葡萄」という作品です。

二十日鼠と人間


しかしジョン・スタインベックと言えば、私らの世代はやはりこちらの方がピンとくる作品なんだろうな。
世の演技者にとって、主演のジョン・マルコビッチとゲーリー・シニーズの奇妙な関係性を配した人物同士の「距離感」は大変勉強になりますよね。
俺もこれは大好きな作品です。作品冒頭の河原のシーンで見せる、ジョン・マルコビッチ演じるレニーの水の飲み方とか(笑)

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