私の好きな「半沢直樹」

ドラマ「半沢直樹」は視聴率25-26%で前評判に違わずすごい反響のようだ。
(9/20放送が9回目?コロナ禍の影響で放送が1回飛んだ。それと出演者本人の楽屋トークみたいな放送を1回挟んだ。これは不要だったかなと思う。ダイジェストとかのがマシだったんじゃないかな)
ただ前作では最終回がなんと42%という大台叩きだしたということで(それも勢いのある右肩上がりの)、それとは大きく劣後しているな、という印象。で、個人的には、香川照之演じる大和田の顔芸がどうしたのこうしたのと、毎日悪ノリだけが取り上げられて、喧しいことこの上ない。
私は「半沢直樹」シリーズが人並み程度には好きで、全部の原作を持っていて何回か通読している。
そのため、今のドラマとそのブームに思うところを記録しておこうと思う。

実写化が大嫌い

まず言いたいのは私は実写化という経済活動が大嫌い、ということ。自身を原作至上主義者と自称しています。
当然、作家などのクリエイターにカネが入ること自体は悪いこととは思わないし、作品が有名になること、良作を多くの人間が知ることができるなどの宣伝メリットも理解はするが、消費者としては不快極まりないと常々感じている。
特にキャスティングが不快。好きな漫画のキャラクターなど、自身の偶像である。それを生身の人間が演技とは言え代替するなど、読者への精神的暴力だとも感じている。
了見が狭いのかもしれないが、そこは自分の頭の中で想像することで読書を楽しんでいる。たかが放送キー局ごときが、「キャスティングの正解はこれだ」という傲慢でその楽しみを取り上げることが、甚だ不満、不快を感じるところである。
原作のレイプ。心の凌辱を何の抵抗もなくやってのける、テレビキー局の横暴には辟易とする。
結局、漫画や小説原作に依存しなければ、映画もドラマも作れない無能な集団。公共の電波を取り上げるべきなのではないか。

しかし堺雅人は好き

実写化は大嫌いなのだが、例外的に堺雅人という役者は大好き。
堺雅人というと、2004年だかに(もうあれから16年も経つというのが衝撃…)、NHKの大河ドラマで、「新撰組」をやっていた時の、山南敬助のキャスティング。
幕末ファンの私も、このキャスティングには納得せざるを得なかった。
何とも優しくて知的で冷静な二枚目なのだけれど、深奥に熱いアブないモノを秘めた、山南敬助にピッタリのイメージだったのである。
そして、堺雅人は、半沢直樹のイメージにも正直ピッタリである。原作至上主義者であるにもかかわらず、堺雅人の好感度だけは否定することができない。
実写化がどうしても許せない私でも、堺雅人の半沢直樹なら仕方ないと思わされるほどのフィット感なのである。
笑顔がチャーミングだし、早口言葉ももはや芸術作品のよう。好き。

本当の「ロスジェネの逆襲」

現在放送されているドラマは第一部が原作「ロスジェネの逆襲」で第二部が原作「銀翼のイカロス」がベース。
私はこの「ロスジェネの逆襲」が半沢シリーズで一番好きである。その大きな理由が、当作の中に出てくる名言に感銘を受けた、というところにある。

原作中で、半沢と部下の森山、東京スパイラルの瀬名社長が、キーマンのひとりである、電脳雑伎集団の財務部長だった玉置克夫という人と初めて会う、という描写が物語の佳境にある。
この玉置というCFOの言う以下のセリフが私にとっての「ロスジェネの逆襲」のすべてである。
以下は本文中からの引用。

「電脳の財務部長職なら待遇面は相当よかったでしょうに。よくお辞めになりましたね」
自身が就職に苦労した経験があるだけに、森山には、そういう理由で職を辞する玉置の考え方が理解できないのだ。
「仕事の質は、人生そのものの質に直結しますから」


「仕事の質は、人生そのものの質に直結しますから」


半沢、森山、瀬名の疑問に玉置が簡潔に答えるこのフレーズが、当時、会社や上司に不満ばかり感じていた(現在もそうだが)私に本質的な何か、をハッと気づかせてくれたと思っている。
我々サラリーマンは、毎日オフィスで8時間以上、あるいはもっと長い時間を仕事して過ごす。
それなら、その時間が楽しければ人生も当然楽しいものとなるが、そんな簡単な事実があるのに、多くの人が案外とそうでもない。そのことを意外と深くえぐってくるのが玉置のこの名言なのだと思うのだ。

単に私が見逃しているだけなのかもしれないが、ドラマの放送で、この発言って出てきてなくないだろうか?少なくともあまり印象に残っていない。
大和田の顔芸とかに注目が集まったりしている。それって本質なのだろうか?池井戸潤が本当に言いたかったことなのか?(顔芸なので当然言いたいことではないだろうが)
この名言がクローズアップされない半沢直樹、ロスジェネの逆襲など、クソである。クソは言い過ぎでも、牛肉の入っていないすき焼きを食べさせられたような違和感だ。

総括

堺雅人は好き。
原作こそが至高。
でも実写化は大嫌い。
実写化の中でも、とりわけ、キー局の人間の手垢がついたものなんて最悪です。
「仕事の質は、人生そのものの質に直結しますから」
私にとっては、「ロスジェネの逆襲」とはこのフレーズだけでもいいくらいの名言。当時の池井戸潤も実は、このワンフレーズだけが書きたかった、とかないのだろうか、と邪推すらしてしまう。
倍返しや顔芸よりも大事なものではなかったか?とにかく実写化は本当に厭だ。その認識を再度深くさせられた。

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