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父と会う

出張で遠方の地にいる。

さっき、単身赴任中の父に会って鰻をご馳走してもらった。
ご飯は美味しかったし、そして数年ぶりに父ときちんと会話した気がした。

1時間くらいで店を出て、そこで別れた。
ちらと見た後ろ姿は、この地ではたらいて、生きてる人のそれだった。


一方の私は、こんなにもたくさんの人が街に繰り出している中で(ちょうどプレミアムフライデーだった)居場所のない、水に浮かぶ草のような存在だった。

しっくりこない、異物感みたいなものを感じたが、不快ではなかった。
人懐っこい人間好きなここの人たちの空気に、なんとなくそぐわない気がして、少し申し訳ないくらいの気持ちだけ。

カウンターで一人酒を飲んでいて急に話しかけられるというのも、ほとんど経験したことのない出来事で、私はいかにも「こういう場所に不慣れな人」を演じてしまった。


その時 久しぶりに一人になっていることに気づいた。

行き帰りの電車の中では大勢の孤独のうちの一人だし、仕事で一人で外出することも多いが、完全に一人の瞬間はめったにないこと。

一人旅は昔はよくやっていたけど今は全然だ。
最近は人と旅行に行くことが増えて、「誰かといる自分」がデフォルトになっていた。

人と行く旅行も楽しいが、一人旅の絶対的な価値は「極められる」ところにあると思う。

一人で名所旧跡を訪れ、良さそうな居酒屋ののれんをくぐり、
やがては一人で山を登りパラグライダーで空を飛ぶ。

アップグレードの手軽さが、すごいのだ。

近い内に島でも行こう。

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