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1号店と2号店の差別化について

1号店を2号店と差別化するにあたって、馴染む店と、発見する店にしようと思った。

そもそもTypicaという名前は「普遍的な」を意味するコーヒーの品種から拝借したもので、ワインやコーヒーという難しい嗜好品をもっと身近に感じて欲しいという思いで名付けた。4年近く経営していく中で、液体の存在感を減らしてパフェにフォーカスしていく戦略に切り替えたが、そのイズムは今も健在で、街のインフラとしてお客様の生活を豊かにするために営業している。いわば生活に「馴染む」ことで価値を生んでいる現状がある。

そこに至ったのは意識的に私の手から離してTypicaを民主化していく方向に舵を取ったからだ。新しいスタッフも増える中で、私の持つエゴは「馴染む」コンセプトと少しズレたものになっているという感覚があった。そしてその舵取りは功を奏し、Typicaという店はある種の完成に至ったと感じた。それでハッピーエンドではあるのだが、その切り離したエゴを昇華させるために新しい店を作りたいと考えるようになった。そうして約1年の物件探しを経て、ついにTypicaから切り離した別人格を新しく誕生させる目処が立った。

全く新しいブランド名にするか悩んだが、根底にあるイズムは同じなので、Typica Inokashiraと名付けた。Typicaから切り離した「エゴ」からスタートした店ではあるが「嗜好品を身近に感じて欲しい」というコンセプトは主観の押し付け感が強すぎる。それを払拭するために「パフェとのペアリングとして嗜好品を提案する」というアイデアが生まれた。Typicaで培ってきた武器と自分のエゴが上手くハマり、説教臭さをマスキングできたように思う。

店を通して社会的貢献がしたい(=お客様の生活に豊かさを付与したい)という大枠の中でパフェや嗜好品を生活に「馴染ませる」ことで価値を生む1号店と、コース仕立てのデセールやパフェとのペアリングによって新しい価値観を「発見させる」ことで価値をつくる2号店。私の武器は「商品を通して(自分の好きな嗜好品の)愛を伝える」というプレゼン型の接客なので、1号店には無用の長物に成り下がったが、2号店で再び磨いてあげたい。

自分の才能に深く向き合い、時には柔軟に居場所を変えることが、人生を楽しむコツだと思う。

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