確信の嘘

【詩】


染みついた嘘と確信の嘘とは違う

オレのは確信の嘘さと彼は言った

まるででたらめに生きているよう

人は彼の言動を訝しみ近づかない

ただ染みついた嘘を無自覚に吐き

いざとなれば無罪を主張する人々

それよりは遥かに清々しく思えて

彼のでたらめで投げやりな態度に

ときに親しみをこめて目をやった

金に頓着せずに色を好んでいつも

ジーンズのポケットに手を入れて

広い歩幅で蹴るよう通りを流した

愚かな大人と未熟な若者で溢れた

30年前の狂乱の街で彼は鮮やかに

しばらくして彼は街を去り後には

彼の嫌いな嘘が通りに染みついた

5年後街で彼が死んだ噂が流れた

10年後遠国の街で誰かが彼を見た

いま街は染みついた嘘に覆われて

確信の嘘を吐く者などいないただ

ときどき過去から彼を見かけたと

時を超えていまでも連絡が入って

裏筋や横丁あたりを目が追う彼の

亡霊を探して確信の嘘をもとめて


tamito

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