老梅
【詩】
まだ肌寒い弥生の風に誘われて
僕らは老梅を見に少し遠くの公園へと足を伸ばす
いつもの散歩路より倍以上ある道のりを歩きながら
ふたりでこの一年間に起きた出来事について話をする
辛く居たたまれない長く尾を引く出来事がふたつあり
それはいまだに気持ちの整理がつきかねている
日々のささやかな幸福の積み重ねで塗り潰そうと試みるも
喉元に刺さった小骨のような異物感はまだとれないねって
ふたり同じ暗さの闇を瞳の奥に湛えている
3月の穏やかな陽光は北風の冷たさに勝って
あの世界を優しく包み込む春を招く
いつからだろうそこに生えている梅の木に
薄紅の花びらがところ狭しと咲き咲きて
春はくりかえしくりかえし訪れることに
ふたりつないだ手と手が気づく
tamito
#詩
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