そのうずくまるような悲しさも

【詩】

 

そのうずくまるような悲しさも
その天駆けるような喜びも
その波立たぬ沼のような孤独も
その花開くような情愛も
不確かな地のうえで歌う唄
遥か彼方の星の瞬きの刹那

その凍えるような淋しさも
その弾けるような輝きも
その皮膚を破り出そうな憤りも
その凪いだ海のような安らぎも
頼りをなくした迷い子の記憶
遠くで聞こえる祭りの囃子

その月を恋うるようなせつなさも
そのふと触れた手の温もりも
その理不尽に立ちつくす虚しさも
そのあふれた温かな涙も
まがり角の先の袋小路
取り残された大洋のゴムボート

それでもあなたが歌うならば
目を瞑り耳を傾けて
その小さな情の発露を手に取り
わずかなときを費やすだろう
そのうずくまるような悲しさも
その天駆けるような喜びも

 

tamito

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