告白

【詩】


言葉を殺したことがあります

まだ生まれたばかりのやわらかな

何の汚れもない言葉をこの手で

行為自体はあっけないほど簡単に

そして言葉の墓地に葬りました

実は何度も殺したことがあるのです

暗がりの路地でふいをついて

スクランブル交差点人混みにまぎれて

階段で後ろから突き落としたことも

たぶん極刑はまぬがれないでしょうね

なぜ殺したかって聞きたいですか

それは彼らが嘘をついたからです

もちろんつきたくてついた嘘じゃない

彼らはホントのことを語らなかったのです

胸の奥くだらないガラクタの陰に隠れて

ひっそりと息づいているホントのことを

引っ張りだして語ることができなかった

だから殺したのですよお前は偽物だと

きっと彼らにも言い分はあるでしょう

けれど偽りの言葉を生かすくらいなら

僕自身が葬られたほうがまだマシだと

彼らの声に耳をかさず闇のなか

葬るしかすべがなかったのです

これが僕が言葉を殺した経緯です

質問がある記者の方は挙手願います

内容は言葉を殺したことに限ります

僕の寿命については答えかねます

そう、ひとつだけ先に言っておきます

僕はあなた自身です

では質問をどうぞ


tamito

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