紐の数

【詩】

 

何ものにも縛られずに生きていると
思える人は世にどれほどいるだろう

少し思い浮かべただけでも僕のまわりを
取り巻く紐の数は七本くらいあって

その張り巡らされた紐の隙間を縫うように
日々を送っている

いっそ切れ味鋭いハサミでブチブチブチと
すべてを裁ち切ってしまったら

どんなに生きやすくなるだろう
どんなに呼吸が楽になるだろう

けれど僕はそれをしてはいけない人間で
これ以上紐を増やさないよう慎重に行動しながら

一度張られてしまった紐とうまく折り合いをつけ
それも自分の個性だと思いこむよう暮らしている

この世界には社会に適合できず苦しんでいる人がいて
そんな当たり前なことにも僕は気づかず生きてきた

踏み外す道が正しいものか検証もせず
疑いもせず歩いてきた

そして一年半ほど街をさ迷った
日中、街を歩くことでいろんなことに気づいた

助けを求める人の多さそして
素通りする人のそれを超える多さ

気づいたところで何も変わらないだけど
気づかないよりはどれほどましかと思う

 

tamito

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