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Mr.Children の好きな歌い出し

Mr.Children の好きなところの一つに歌い出しというものがある。ちょっと違和感のある言葉を綴ってフックを持たせることが多い。そのフックというものをつらつら並べていく。

one two three

「戦闘服よりはブレザーがよく似合う」

まずはこちらから。この歌い出しすごくないですか。一言でこの歌の主人公の性格を表してる。立ち向かうための戦闘服よりも牧歌的なブレザーが似合ってしまう。そんな気の弱い性格をたった一言で表してしまう凄さ。

そしてこの歌の後半で

いつか君に見せよう戦闘服のカウントスリー

と高らかに宣言して主人公の成長や立ち向かう意志まで表してしまう。この流れが淀みなくて無駄がない。

名もなき詩

ちょっとぐらいの汚れ物ならば残さずに全部食べてやる

代表曲の歌い出しもすごい。「汚れ物」とか普段全く使わない単語なのに、意味の幅は広いからどんな解釈もできる。
そしてこの歌詞から主人公の強気な姿勢や意志が感じられる。なぜこんなこと思ってるのか続きの言い回しが気になってしまうから引き込まれる。
フックとして最大限使用した例の一つ。

花 -Memento-Mori-

ため息色した 通い慣れた道

名もなき詩につづいて発表されたシングル曲。この曲はとにかく暗いんだけど、歌い出しの「ため息色」っていうのが秀逸すぎる。
まず、ため息に色なんてない。ただの空気の流れである。ただそれが通い慣れた道の色として描かれることで、毎日の繰り返しに飽きてモノクロ化した情景が浮かび上がってくる。

そしてこのフレーズがサビの最後に繋がる。

風を集めて空に放つよ今

なんてことないフレーズだが一見してもよく分からない言葉である。けれどもこれやってること「ため息」と同じなんですよ。空気を吸って、吐く。同じため息なんだけどこの言い回しだと希望が感じられませんか?

冒頭で語られた主人公の状況がサビまでの展開によって変化する。その変化を伝える技術が巧みすぎることを言いたかった。

himawari

優しさの死に化粧で 笑ってるように見せてる

2017年発表のシングル曲。これも出だしからかっ飛ばしてる。
なんと言っても「死に化粧」という強烈なフレーズ。辛い苦しい気持ちの表情や顔を平気なふりして誤魔化すその姿勢をたった一つの比喩で全てを表現しきっていて痺れる。
死化粧以外は至って平易な言葉なんだけどこの組み合わせが深みをもたらしているんですよね。

ちなみに二番冒頭は

思い出の角砂糖を 涙が溶かしちゃわぬように

死に化粧というフレーズに今度は「角砂糖」が入っている。次はこういう言葉が入るのか!と変に唸った記憶がある。またも歌詞ではあまり使われない絶妙な言葉を用いた比喩。すごいなぁ。

GIFT

一番きれいな色ってなんだろう?

こちらは歌詞単独だとべつにそんななんだけど、背景を考えるとよく冒頭をこれにしたなと思う。なぜかというとこの曲は北京オリンピックのテーマソングだったから。

オリンピックといえばメダルを懸けて競う古代から伝わるスポーツの祭典であり、金銀銅の3色を追い求めているんですよね。それを踏まえてこの歌詞を見てみる。そう、単なる問いかけがメダルの色を全否定しているようにみえてくるんですね。それをあからさまではなくさらっと冒頭で言っちゃうあたりすごい。

ちなみにこの曲で紅白にも初出場するけど、それまで皮肉ってるように聞こえてくるから不思議。

一聴しただけでは何とも思わないが、背景まで含むとひねくれた姿勢が見えてくる面白さがある。

以上、他にあればまたやるかも。


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