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30年前のSF漫画が読者の愛で現在に完璧な形で復活した

ロバートロドリゲス監督、ジェームズキャメロン制作の「アリータ」という映画が2/22から公開されています。Twitterで既に試写会の模様とかアップされていて、ただただ最高だったという感想ばかりあがっていたので、個人的には楽しみでしょうがなかったです。

映画が始まるしょっぱなの20th century foxのイントロのくだりから既に感動していました。(それは何故か映画を見るとわかるかも知れません。そんな始まり方が!)

この映画は、日本の漫画の原作がありまして、木城ゆきと先生が描いた「銃夢」という傑作漫画がベースになっています。

この原作の漫画(正確には「銃夢 Last Order」)がウルトラジャンプで連載されていた頃、私はジョジョのスティールボールランが気になってウルトラジャンプを買っていたのですが、(因みにLast Orderも超面白いので読んで欲しいですね)

この銃夢という漫画も話の筋途中からしか見てないから分かんないけど絶対面白いと思って、復刻版のコミックスを漫喫で確か読んだんですね。

感動し過ぎて、数日で全部読んでしまいました。

主人公のガリイは、どんなものにも興味を持ち、探究心があり、世の中がどうなっているのか常に知りたがっている、喜怒哀楽がすごくはっきりしていて、好きな男の子がいる、犬が大好きで、悪を憎み、いろんなことに葛藤しながら冒険をしていく一人の少女。

でも、純粋すぎるせいで、何でこんな酷い目に合わなきゃいけないのか、と思うくらい色々なトラブルに巻き込まれます。読んでてガリイまじで可愛そうになってきます。それでもめげずに前を向いて色んなものに立ち向かっていく。

サイボーグで超強いんだけど、なんかめちゃめちゃ応援したくなる女の子なんです。

AIや自立型ロボットが現実になりつつある今の世の中で、より人間らしいサイボーグが自らのアイデンティティを探し求めて葛藤する姿を見ると、30年前のSF漫画が今だからこそ映画実写化されるべきだったんだなと思います。

で、最近猫も杓子もハリウッド実写化していて、色々作品ごとに毀誉褒貶ありますが、「アリータ」はほぼ完璧に「銃夢」のエッセンスを取り込んで、原作以上の作品を作り上げたと思います。

「30年前に見たかった」という原作者の言葉は、全くその通りでした。

VFXなのにマジで違和感が全然無いんですよね。

ここ3年くらい原作を読み返してなかったのですが、ありありと漫画のシーンが思い出されて、3Dの映像の中で原作の追体験をしているような感覚になりました。

この熱量は何なんだろうと思ったのですが、これは原作者に対する深い愛が絡むと、もともとそれを読んでいて愛読していたファンにはめちゃくちゃ刺さる、ということだったのだと思います。

私の大学の先輩が映画「ボヘミアン・ラプソディー」を7回観に行ったらしくて、僕も見に行った後に、クイーンを家で沢山聴いてたら、カラオケで歌詞見れば大体85点くらいで歌えるようになって、歌えば歌うほどクイーン好きになる現象が自分の中で起こっていたのですが、

それに近い熱量のことが起こっていたなと思います。

で、三田先生のプロジェクトでも、三田先生の漫画が大好きで集まっている人がいたり、こしのりょう先生の過去の漫画を様々なところから探して読んでいる人が集まっていたり、理屈でない好きの感情が結集している感じがコルクラボでも感じるんですね。

そして、今の会社でやっているBOCCOやQooboというロボットを買った人、使っている人達のコミュニティにも同じような雰囲気を感じるのです。

コミュニティのオーガナイザーになるには、自分も大好きになろうと思って、自分のお金でQooboを買って、事あるごとにベッドに置いてみたり、BOCCOを実家に持って帰ったりしてたのですが、自分の心の中から自然に湧き出す好きは、後付けすることは不可能だなと感じます。これは本当に難しい。

その作品が自分が好きになるかどうかって、自分の生き様などにもよってしまうから、個人の趣向性は多分に出てしまうからです。

だから、それぞれの趣向性に寄り添って出来る限り理解しようとする姿勢があらゆるコミュニティを運営するのに大事だと思っています。

今回の映画化は、簡単に言ってしまえば、原作を好きな一人の読者から生まれた同人作品の超凄い版だった訳ですが、それを引き出すエネルギーは誰かがコントロールできるものではない気がするんですよね。

構想25年ってことは、原作がまだ連載されてた1994年からずっと映画化したいって考えてた訳だからとんでもない話ですわ。

イブニングに連載が移行した時、編集長が「木城先生に来てくれて本当に感激している」というようなコメントを残していて、LastOrderが終わってほどなくして火星戦記が始まり、つい最近イブニング内で映画化が発表されたのは知っていました。

そういった愛の深さは真似出来ない売れ方をするんだろうなと思います。


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