見出し画像

2020/1/12卓log:大島選手応援歌

以前、大島選手に関するコラム的な記事をRallysに寄稿しようとしたが、掲載には至らなかった。2020年のオリンピックには間に合わなかったけど、怪我からの復帰でこれから再チャレンジして世界代表になるチャンスもある、というタイミングで、改めて、載せたいと思う。

特定の選手ばっかりニュースで取り上げるのでなくて、他にも沢山頑張っている選手がいるのだから、そういう人達にもスポットライトを照らして欲しい。

<「大学デビュー」した選手>

張本のように10代から活躍する選手を見ると、大学選手はもう勝ち目はないのかと思うかも知れない。しかし、大学に入るまで世界では無名だった選手が花開き、世界卓球の代表を掴んだ例がある。その一人が大島祐哉だ。

<突然世界の舞台に躍り出た大島>

大島祐哉は学生卓球界から世界の舞台に躍り出た選手である。2014年のシーズンまで、大学生の試合ではほぼ負け無しだったが、世界大会での試合経験はあまり無かった。

筆者は、大島祐哉が早稲田大学の1年生の頃の姿を見たことがある。当時の4年生の矢野主将とリーグ戦前のウオームアップで全面のフットワーク練をしていた。

2011年まで毎年、早稲田大学は優勝争いをしており、春は早稲田大学、秋は明治大学が学生リーグ戦で優勝していた。明治大学には水谷隼がいたが、団体戦のダブルスで水谷隼に勝つ等、ほぼ互角の勝負を繰り広げていた。

<「エーストリオ」が抜けた穴を埋めた大島>

ところが、2012年は、前年度に3人でリーグ戦100勝する「エーストリオ」が抜けてしまった。毎春優勝していた早稲田大学は、この春の学生リーグで3敗し、何とか3位という順位をキープするにとどまった。

特に、「エーストリオ」の一角である笠原の抜けた穴は大きかった。彼は、同期で明治に入学した水谷以外には4年間全勝していた。馬龍をほうふつとさせる高い投げ上げサーブからの三球目が強く、両ハンドのブロック、ドライブも非常に安定している。試合を見ていても強過ぎるので、必ず勝つだろうと安心して味方も見ていられる。そういう選手だった。

そんな笠原が抜けた穴を同じ高校の後輩である大島が埋めるのは荷が重いだろうと筆者は当時考えていた。

大島選手はいつも「頑張っている」選手である。フィジカルを駆使して、オールコートをフォアで回るタイプ。サーブからの展開も笠原選手ほど良くはない。なかなか自分の三球目攻撃のパターンに持ち込めない場面が多い。

それでも、学生卓球のなかではほぼ負け無しだった。しかし、世界で勝てる実力はまだまだ足りなかった。2014年1月の世界ランキングは242位だ。

2014年当時、早稲田大学に所属している頃の記事が残っている。

【連載】春季関東学生リーグ戦直前特集 第4回 大島祐哉×山本勝也(早稲田スポーツ新聞会 2014/5/11)

http://wasedasports.com/feature/20140511_14632/

これは3年生の頃のインタビューである。「世界卓球に出ている丹羽君」というあたり、まだまだ世界を目指すというより、学生の試合のなかでどう勝っていくかということに意識が向いていた頃だと思う。

なので、4年生になって急に代表選手として活躍し始めたことは、筆者にとってはとても新鮮だったのだ。

<大学引退間近に世界のトップ選手に勝ち始めた>

大島選手は2015年になってから世界のトップ選手に勝ち始め、急激に世界ランキングを上げていった。

2015年4月の世界選手権(中国、蘇州)では、森薗政崇と組んだダブルスで、中国ペアを追いつめた。8月の中国オープンでは、シングルスでオフチャロフ、丹羽、荘智淵に勝ち、馬龍をセットオールまで追いつめた。

大島の世界ランキングは2015年9月には22位になり、日本選手上位5人のうちに入っていた。

大島選手のオールフォアで動き回って攻めるスタイルは基本的には変わっていない。しかし、そのプレースタイルを貫いて、世界のトップに勝つようになったのだ。大学の先輩である笠原選手をいつの間にか実力で追い抜いてしまった。

大学生のリーグ戦はたいてい9月の中旬に行われる。大島は、4年生の9月、ほぼ学生選手として引退する直前に日本代表になるチャンスを掴み始めたのだ。そして、2016年の世界卓球団体戦で代表を勝ち取り、決勝戦で中国選手と戦った。

大学生になってから飛躍的に実力を伸ばす選手はいる。しかし、4年生になれば、ある程度自分の成長度合いが分かり、いくら今から練習しても実力が飛躍的に上がらないだろうと思うのも仕方が無い面もある。

だからこそ、大島のように大学生から世界で活躍する選手がもっと生まれて欲しい。諦めなければ、世界で活躍するポテンシャルを持っている選手は沢山いるのだ。今の代表選手もたまたま世界で活躍するきっかけを掴んだだけ。

世界で活躍するには、今からだって遅くはないのだ。

サポートで下さったお金は、今後の創作やライティングに活用していきたいと思います!