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井沢元彦『逆説の日本史 22 明治維新編 西南戦争と大久保暗殺の謎』を読んだ

井沢元彦『逆説の日本史 22 明治維新編 西南戦争と大久保暗殺の謎』を読みました。逆説の日本史シリーズ、すごく好きなのです。おお、西南戦争…ずいぶん近いところまで来ました…。

西南戦争の話の前にあった、明治六年の政変についての記述で、江藤新平について書かれていました。江藤新平、すごいな…。そして優秀ではあるが、明治国家の将来のために最短距離を行きたいがためにバッサリ切り捨てる大久保利通、怖い…(大久保利通、すごく好きなんですけどね)

江藤新平が「ナポレオン法典」を持ち帰った箕作麟祥を讃えて作った漢詩が掲載(p.203)されていて、これがすごくかっこいいです。

廟堂用善無漢蕃(廟堂が善を用うるに漢蕃無し)
孛國勢振佛國蹲(孛國(ぼっこく)は勢振い仏国は蹲る)
佛國雖蹲其法美(仏国は蹲ると雖も其の法は美なり)
哲人不惑敗成痕(哲人は敗成の痕に惑わず)

<大意>
政府が善いことを採用するのに関学だとか洋楽だとかこだわるのは愚かだ。
また、フランス(仏国)はプロイセン(孛國)に戦争では負けたが、その法典は見事であり、真の賢人は戦争の勝敗で文化の評価を変えたりしないものである。

大久保利通暗殺後については、長くシリーズが続いたからこその、振り返りがかかれているのですが、その中にあった日本教(逆説の日本史シリーズではおなじみ)についてのところで、六歌仙と『源氏物語』について書かれていました。このあたり、『QED』シリーズでもよく読んでいたので、「おお!」となった部分。

欧米社会の文明はキリスト教以後、そのキリスト教を根本的基軸として展開している。あらゆる美術や文学そして音楽がそうであり、十字軍も絶対王政も民主主義ですらキリスト教抜きには考えられない。同じように日本では神道の根本信仰である「ケガレ忌避」「言霊」「怨霊鎮魂」の「三本柱」抜きに歴史は考えられないのである。
『古今和歌集』は政治的には藤原氏に対する「負け組」であった古代豪族紀氏が編纂を担当した。彼等は藤原氏によって排斥された惟喬親王の側近であった人々を六歌仙として賞揚した。歌仙とは和歌の大名人ということだが、この六人はそこまでの名人ではない。にもかかわらず、そのように呼ばせたのは、菅原道真の死後、生前の右大臣より二階級上の太政大臣にしたのと同じこと、つまり鎮魂なのである。
また『源氏物語』において、現実の世界では藤原氏に敗れ去ったはずの源氏が勝つのも、もちろん鎮魂である。「フィクションの世界では勝たせてやる」ということだ。『古今和歌集』も『源氏物語』も、言ってみれば反権力の物語であり、普通そうしたものが書かれるのを権力者は許さない。しかし『源氏物語』は藤原氏の応援のもとにできた物語だ。
それが日本なのである。(p.447-448)

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