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セブンイレブンでの大事件

それはある日の夕方のことだった。

この日は職場のくだらない(心底どうでもいい)、しかし、なかなか大変な会議のため心が折れ、その日の夕食を作る気がなくなった。帰ってからもやらなければいけない仕事がいくつかたまっており、夕食にあまり多くの時間を費やすわけにいかない。そこで簡単にコンビニで食事を買って夕食を済ませようと、自宅の最寄り駅のすぐそばにあるセブンイレブンに妻と立ち寄った。

事件の発端となった7Pクリアクーラーシチリア産レモン

弁当や総菜などをひとしきり選んだ後、「ちょっとお酒でも飲もう」と思って、セブンイレブンプライベートブランドのレモンサワーを買い物籠に入れ、レジに向かった。
いつもそのセブンでよく見る、年の頃、40代…くらい?の男性店員がいるレジに籠を置いた。その人は私が会計をしようとしているのを見てレジを開けた。

「どうぞー」
いつもと変わりない感じだ。
私も何気なく会計が済むのをぼんやりと待っていた。

「レジ袋どうされます?」

「大丈夫です」

私は手をあげてそう言った。その直後であった。

「温めの確認お願いします」

男性店員は確かにそういった(隣にいた妻も確かにそう聞いていた)。

私は「温めの確認」という妙なフレーズに違和感こそ感じたが、おそらく「温めはどうされますか?」という意味だととって、先ほどと同様、

「大丈夫です」

…と言って手をあげた(いらないよ、というポーズ)。

その直後だった。事件が始まった。

「だ、大丈夫と言われましても、法令で確認していただかないと会計の処理が進まないもので…」

店員は私のほうを見て急にそんなことを言い出した。

「?」

私がふと傍らのPOSレジのディスプレイの方を見ると、酒類の購入にあたり、20歳以上かの年齢確認を問う画面とボタンが表示されていた。

私はここで初めて聞かれたのが、「(弁当の)温めの確認」ではなく、「ディスプレイにタッチをお願いします」という意味だったことに気づいた。

見ると例のレモンサワーをスキャンした直後だったらしい。

「ああ、はい」

私はぼんやりとそう答えてボタンを押した。
向こうの言い間違いとこちらの勘違い。

ただ、それだけのことだったと思っていた。

すると、店員は

「お手数をおかけしまして、もうしわけございません!」

とものすごい勢いで深々と頭を下げて謝り始めた。

私は別に何も怒ってなどいない。
まあ、返事が小さかったのでムスっとしているように思われたのかもしれない。
ただ、自分は聞き間違えた(そして彼は言い間違えた)だけだった。

だが、彼は何度も何度も同じ文言で謝り続ける。

私はその一連の様子に「馬鹿にされているのかな?」。「皮肉を言われているのかな」と思ってしまった。
しかし、様相がおかしい。

彼はだんだんと手が震え、残りの商品のスキャンもおぼつかない感じになってしまった。

(この人、様子がおかしい!)

そう感じるや、私も妻も茫然としてしまい、妻の方は「いえいえ」とか「大丈夫ですよ」とか「勘違いしてました」とかいろいろ言ったのだが、彼は何度も何度も

「お手数をおかけしまして、もうしわけございません!」

とすごく頭を深く下げて謝るのだ。

その謝り方がちょっと尋常ではない。常軌を逸している。

なお、妻の方はこのまま土下座とかされたらどうしよう…と思ったのだとか。

確かに彼は「年齢確認をお願いします」と言って(……もっともそう言ったと思い込んでいる)、それに対して私が「大丈夫です」と言ったから、私が明らかに成人なのに、そのようなボタンを押させたことに対して(私が)不快に感じている、と思ってしまったのだろう。

 確かにネットで検索してみると、ボタンを一つ押すだけなのだが、このシステム自体に不満や不愉快さを持っている人は一定数いるらしい。

…あるいは彼は以前、このボタンをめぐる何か大きなトラブルがあって、それがフラッシュバックしたのだろうか……

そこのところは明確ではないが、とにかく彼は頭頂部が見えるくらいの勢いで頭を下げ、

「お手数をおかけしまして、もうしわけございません!」

と繰り返すのだ。

これではまるで私が店員に何かイチャモンをつけ、謝らせているみたいではないか。

これでは周囲の人に、私がいわゆるカスハラをしているみたいに思われてしまう!!!

どうしたらいいかわからず、それでも誤解を解かなければと、私は多少大きな声で「温めのことかと思ったんですよ」と言ったのだが、彼は謝り続ける。

なんだ、この状況。

もうどうでもいいや。

とにかくさっさとこの場を去りたい。

彼によってすべての商品のスキャンが終わると、私はもっともスピーディーに決済できる交通系ICカードで素早く決済。

しかし、妻がエコバックに商品を詰めている間も彼は異常にへりくだる。

結局、彼が相変わらず

「もうしわけございません!」

と言いながら頭を下げたままの状態であるにも関わらず、そそくさと店を出てしまった。正直、この段階では私も妻も恐怖心の方が勝っていたのだ……

「……い、今のはなんだったんだ…」

店を出た直後、私は妻に問いかけた。そこから家までの帰り道はずっとこの事件の話題で持ちきりになった。

何が衝撃的だったって、だって相手は自分よりたぶん年上で(風貌はおっちゃんと言っていい)見ようによって多少強面である。

以前からこの人にレジ対応してもらっていたが、多少ぶっきらぼうな感じがするくらいで、それまではぜんぜん普通だった。

そんな人が手をガタガタ震わせて謝り続けるのだから、マジで恐怖以外の何物でもない。

逆に私の方がトラウマになって、もうたぶんあのセブンイレブンには(絶対に)行けない。あの人いる限り、二度と行けない……

でも、冒頭にかかげたセブンのレモンサワーは美味しかったので定期的に買いたい…

…が、買うなら、だいぶ遠いけど、違うセブンイレブンに行かねば………

 この事件、私にとっては衝撃的過ぎて、とにかく誰かに話したくて、ここに書いてみました。

(終わり)

注:杉並区内の某店舗です。皆さん、お酒を買うときはぼんやりは禁物!POSレジのディスプレイに要注意です!

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