善知鳥峠(塩尻市)
これは去年の夏のお話。恒例の長野旅に出かけた時のこと。塩尻から辰野へ抜ける国道153号線の途中に善知鳥峠(うとうとうげ)という峠がある。善知鳥というのは難読だが、海鳥の名前である。塩尻方面から南下すると、峠の麓は小野の集落となる。この峠は、かつては南信から塩尻・松本へと抜ける重要な峠であった。また、中央分水嶺の一つで、ここを境に北へ降った雨は信濃川(千曲川)を経て日本海へ、南へ降った雨は天竜川を経て太平洋へ注ぎ込む。
そんなわけで峠には分水嶺公園という名前の公園が設けられている。
こちらの水のモニュメントは、ここが分水嶺であることを表しているのだろう。
ここから流れた水は・・・
左は太平洋へ、右は日本海へそそぐ。
水が流れていないので、いまいちわからん。
かつて塩尻と岡谷を短絡する塩嶺(えんれい)トンネルがなかった頃は、中央本線は辰野回りと言って、大きく南へ迂回していた。塩嶺トンネルの開通後、辰野回りは中央線のメインルートから外れ、支線と化してしまった。ちなみに辰野回りの中央本線は現在、善知鳥峠をトンネルで通過する。
道路も同じで、長野自動車道が開通していなかった頃は、名古屋方面から塩尻、松本方面へ向かうには、中央道の伊北ICで降りて、善知鳥峠を経由する車が多かった。
現在では長野自動車道が同じく塩嶺トンネルで塩尻峠を通過するため、善知鳥峠の交通量は非常に少ない。
かつてはここにドライブインがあったようだが、すでに廃屋となっていた。
善知鳥峠の名は、この辺りに伝わる民話による。
北信濃に伝わる悲話で、トラウマになった人も多いであろう、あの「雉も鳴かずば撃たれまい」と同じで、鳥がからむ信濃の民話はどこか切なく、物悲しいものが多い。
やはり信州の厳しい気候が織り成すものなのだろうか。
現在の閑散とした峠道の様子と、不思議な名前、そして悲しい民話。
ここを越えると、まもなく辰野。
そんな善知鳥峠はこの日もとても静かでした。
何にもないけど、行ってみたかった善知鳥峠への到達に大満足。
さて、これからこの峠を南下し、辰野町小野の集落へ向かいます。
(つづく)
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