先山・千光寺(洲本市)
伊弉諾神宮を出た私たちは時間節約のため一区間だけ高速道路を使う。淡路島中央インターチェンジで降りて、途中、Googleマップのストリートビューで何度も検証して調べえたこの場所にやってきた。
ここは先山という山が一望できるスポットである。ちょうど建物などが少なく、山容が一望できるところとなっている。路肩に車をとめられるスポットがあることも含めて私が丹念に調べた結果、つきとめた場所である。
見える先山は淡路島を産んだイザナギとイザナミが、淡路島の中でも最初に作った山であるという。
「淡路富士」とも呼ばれるその山容もさることながら周囲は実に長閑で素晴らしい。淡路島は島全体がのんびりとした、とてもいい空間だ。
しかし、私たちが車を止めて写真を撮っていると、道を通り過ぎていくパトカーの警察官や乗用車の運転手たちが「何を撮っているのか」といった具合で私たちの方を見ていた。
淡路島の人たちにとって普通の山に過ぎないのであろう。
ここから車を再び走らせる。あまり時間はない。ウネウネの心細い山道をカーナビに従って走らせると…
やがて千光寺という寺についた。
ここは先ほど麓から見た先山の頂上にある寺院である。
寺は高野山真言宗の古刹である。千手観音の霊場で淡路島の八十八か所の第一番の札所なんだとか。
中世の遺物がいくつかあるようだ。
かつては荒廃していたが、戦前に和田性海和尚によって復興がなされた。
境内は人気がまったくないわけではないが、静かである。参拝客は私たちだけ。しかし、寺の関係者は結構いた。お坊さんが朝から境内をお掃除していた。
ここは方丈だろうか…?
車で行けるとは言え、山の頂上にあるだけ眺望は良い。
こうして津名丘陵、遠くは大阪湾や四国まで望めるという眺望が素晴らしい。しかし、春先なので少し霞んでいる。
眼下には走ってきた高速道路(神戸淡路鳴門自動車道)が見えている。
だが、妻の方はここへ来る途中の門の近くにう〇ちが落ちていたということで、(私は気づかなかった)ここでのイメージはそればっかしになってしまったらしい(笑)。
えっちらおっちら階段を上ると…
門があり…
本堂が見える。
境内。本堂を中心に左に鐘楼、右に三重塔がある。
本堂。ここに懸かる鰐口が天文15年(1546)の銘を持つ。
またこの梵鐘もやはり中世のもので鎌倉時代の弘安6年(1283)の銘を持ち、重要文化財の指定を受けている。
本堂の建築はなかなか好きなタイプだ。
この寺は観音菩薩の化身である猪に導かれた狩人が建てたという伝承があり、そのため神使として猪が相対して並んでいる。
狛犬だとか狐だとかこういった神使のたぐいはあまり寺院には見られない。ちょっと習合的な要素があって面白い。
淡路島で伊弉諾神宮以外に行くスポットがなくてなんとなく立ち寄ってみたここであったが、大変良い場所であった。何より静かでそれが良かった…
こんな山の中ではあるが三重塔があるのもすごい。
さて、次の予定もあるのでそろそろ行こうか。
また、階段を下りていく。
名残惜しそうに再びこの眺望をチラ見する。
これで淡路島からはさようなら。でも、いつかまた来る気がする。
淡路島は良かったが、見逃したところも多かった。自分としては奈良時代に孝謙上皇との政争に敗れ、藤原仲麻呂の乱(恵美押勝の乱)の後、淡路に流され、「淡路廃帝」と呼ばれた淳仁天皇の御陵にもよればよかったと思った。
(つづく)
◆おまけ
淡路島での時間に制限があったのは、妻が行きたがっていた大塚国際美術館(徳島県鳴門市)に午後いっぱい使うため。
このため高速道路で一路、徳島まで戻り、鳴門北インターから大塚国際美術館へ。
ここは「ポカリスエット」や「オロナミンC」などでお馴染みの大塚製薬を中心とする大塚グループが創立75周年記念事業で建てた美術館。
しかし、普通の美術館ではない。世界中の名画の精巧なイミテーション(複製画)を陶板に焼き付けたものを展示している美術館なのだ。
2018年の紅白歌合戦で米津玄師氏がここから中継出演して「Lemon」を歌ったことで(私も含め)全国にその名が知られるようになった。
全部複製画なので写真は撮り放題。陶板画なので触ることもできる(コロナなのでそれは叶わなかったが)。
本当は妻は西洋絵画が大好きで海外旅行に行きたかったのだが、それが叶わなかったからせめてということでここに。本物を見るのに越したことはないが、まあどちらにせよ、コロナで海外旅行はできない時期だったから替わりのものとしては最高だったのでは。
それにしてもこの美術館、この陶板画の開発・製作費、そして世界中の名画の著作権料(使用料?)や建物の建設費含めても莫大な額がかかってるらしい。大塚製薬、結構羽振りいいのね。
初日は徳島駅前のビジネスホテルだったから、この日からやっと夕食付のちゃんとした旅館。お部屋は鳴門海峡を望むお部屋でした。
(おわり)
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