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清白寺(山梨市)

雲峰寺を出ると、次なる目的地へ。今度は山梨市にある清白寺(せいはくじ)である。山梨県は、身延山のお膝元であるから、日蓮宗地帯なのかと思いきや、さきほどの雲峰寺といい、案外、臨済宗の古刹が多い。他に山梨県で有名な臨済宗の寺は、塩山の恵林寺(えりんじ)や向嶽寺(こうがくじ)などがある。ただし、いずれも京都や鎌倉の五山の系統ではなく、妙心寺派のようないわゆる「林下(りんか)の禅」の系統に位置する寺が多い。そして、夢窓疎石や信玄と関わりがある寺が多いのも特徴だ。

国道411号から塩山の市街地へ向かう。

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グネグネの峠道を越え、やっと里に下りてきた感が出てきた。

なんとなくほっとする。

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そして、塩山の駅前である。

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塩山は昔、学生の頃、訪れたことがある。

その時から町の廃れっぷりはかなり強く感じたが、この日も町には人が少なかった。

ちなみに塩山から甲府までの間は、中央線に沿って山梨市、石和と市街地が連続している。

自治体名としては甲州市、山梨市、笛吹市となる。

市町村合併に伴い、塩山や勝沼、石和といった地名は消えたが、ここらは旧国名や河川名を使って、わりと無難な新市名を選択したように感じる。

やがて塩山を越え、山梨市へ。

目的地の清白寺は、なんとなく走っていたら着いた。

普段は仕事をしている時は、勘が悪くてしかたがないのに、車に乗って寺や史跡を目指している時だけ、妙に勘が冴えわたるのだ。

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しかし、清白寺に駐車場はない。周囲はごらんの通り、ブドウ畑に一本の真新しい道が通っているだけである。

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駐車場がない、というのは正しくない。本当はあるにはある。

だが、そこに行くまでが結構大変なのだ。

理由はこの後、説明する。

というわけで、GFS号は非常駐車帯のような場所へ路駐である。

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この道は、どうも作りかけのようだ。交通量も少ないし、道も広いし、駐車禁止の標識もないので、しばらくここに置かせてもらうことにした。

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「国宝 清白寺」と質素な看板がある。

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そう。このお寺は国宝が所在している寺である。

だが、観光客や参拝客用の駐車場もなければ、案内看板も非常に少ない。

寺は観光用の施設ではない、という姿勢なのかも。

いかにも禅宗らしい感はする。

入り口。

ブドウ畑の中、長くて細い参道が伸びる。

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ちなみに駐車場はある。ただし、この細い参道を車で進まなければならない。

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めったに来ないとは思うが、対向車が来たら、どちらかはかなり長駆のバックを強いられそう。

そもそも、案外幅が広いGFSでこの道を進む気にはなれなかった…

それにしても、のどかである。静かだ。両サイドはブドウ畑。

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しかし、山が見えるというのは素晴らしいことだ。

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定年退職したら、一年の半分くらいは、こんな静かなところで余生を送りたい…

山梨と言えば、果実の栽培が盛んだ。甲府盆地では、それが特に有名である。

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見ると、収穫は終わってしまったようだ。

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枝にはシワシワになったブドウしか残されていなかった。

帰ってから思ったが、収穫が終わっているなら、甲州産のおいしいブドウでもお土産に買って帰ればよかった。

そして、そのブドウから作られる甲州ワインも魅力的だ。

ワインの製造は、勝沼あたりで盛んなようだ。ワイナリーもたくさんある。

そして山梨は、果物だけでなく、水も良いということもあって、白州にはサントリーの蒸留所があって、ウィスキーを作っている。

最近は、お酒をあまり飲まなくなったが、地場産業は応援したいので、今度は山梨県産のワインやウィスキーを買って帰ろうと思った。

入り口から50mほど進んだところに山門がある。

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瓦葺きの質素な四脚門である。

これだけ見ると、農村のどこにでもありがちなお寺なのだが…

その先には珍しい鐘楼門があった。

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禅宗のお寺に特徴的なのだろうか。

門の上に鐘楼がある、鐘楼門は、他に鎌倉の臨済宗浄智寺で見たことがある。

その鐘楼門の先に、こじんまりとした仏殿が姿を現した。

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これが国宝の清白寺仏殿である。

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ちなみに、このブログを御覧になっている方も、上の写真の「HITACHI」と書かれた重要文化財看板をどこかで目にしたことがあるだろう。

この看板、なぜ日立が建てているのか、気になった私は、帰った後、インターネットでこの国宝看板のことを調べてみた。

そうしたら、何と、この看板、重要文化財ではない場所になぜか建てられていたりと、謎が多いことが判明した。

ちなみにその重要な指摘を行っているページは、ある方の旅行記の中に出てくる。
それはともかくこの清白寺の仏殿は、れっきとした国宝建造物である。

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ちなみに山梨県内にある国宝建造物は、ここと勝沼にある大善寺本堂だけである。

強く反った屋根など、いくつかの特徴を持つこの建築は、鎌倉時代に伝わった禅宗様と呼ばれる様式を持つ建物だ。

古い例だと、他に功山寺仏殿(山口県下関市)、円覚寺舎利殿(神奈川県鎌倉市)、正福寺地蔵堂(東京都東村山市)、永保寺開山堂(岐阜県多治見市)などがある。上の例は、鎌倉期から室町期にかけて作られたもので、いずれも国宝指定を受けている。また、入母屋造りではないが、善福院釈迦堂(広島県広島市)も禅宗様の建築で、こちらも鎌倉時代の貴重な建築物だ。

この清白寺仏殿は、建てられた年がはっきりしている。

1415年。応永22年で、建物内部の墨書名に記録されていた。

寺自体は鎌倉末期~南北朝期の創建で、例によって夢窓疎石と関係が深い寺院だったようだ。

江戸時代の火災で、仏殿以外の建物は焼失してしまい、他の建築物は近世のものである。

唯一残った仏殿は、円覚寺舎利殿聖福寺地蔵堂と似ている。

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ただし、サイズはそれらと比べると、非常にコンパクトである。

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だが、コンパクトな故、まとまった美しさがある。

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これはミニチュアに美しさを覚える感覚と似ていると思う。小さくて精巧なものを、人は美しく感じるものだ。

禅宗様の特徴は、まずこの反った屋根である。

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よく中国のお寺なんかを見ると、極端に屋根が反っている建物を見ることがあるが、なるほど中国の影響であることがよくわかる。

そして、この花頭窓(かとうまど、火灯窓)である。

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扉の左右に2つずつ並ぶ花頭窓。これもまた独特な美しさがある。

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その他、細部に芸が細かい。

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今まで仏像彫刻ばかりに目が行き、それほど建築物にこだわったことはなかったが、この清白寺の仏殿で建築物に目覚めた。

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特に禅宗様の美しさには、正直驚いた。

今後も禅宗様の仏殿は追っていきたいが、教科書なんかにも載っている禅宗様の代表建築である円覚寺舎利殿は、通常公開されていない。

それに比べると、この清白寺の仏殿は、貴重な国宝建造物を間近に見ることができて、素晴らしい!

ちなみに仏殿の脇に駐車場がある。

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結構広々としているが、ここに行くまでが大変だ。

だが、私が仏殿前に到着すると、参拝客らしき他県ナンバーの車が2台、ここから出て行った。

その後、寺の人の車がやはりあの細い道を通って出て行った。

あの細い道、案外車の往来が激しかった…

その駐車場の奥に寺の庫裏がある。

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こちらは国の重要文化財の指定を受けている。江戸期のもののようだ。

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禅宗の寺でよく見る庫裏のスタイルだが、なかなか立派だ。

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雲峰寺の庫裏も似たようなスタイルをしていたが、地域性があるのだろうか?

横の建物もなかなか立派であった。

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さらに横に行くと、ちょうど仏殿の裏にあたる位置に本堂があった。

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本堂というより、方丈といった感がある建物である。

こちらは市指定の文化財である。

そこから先に進むと、お墓があった。

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ここは東山梨の駅の至近である。お墓の向こうに公団住宅が見える。

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しかし、ブドウ畑のど真ん中に、こんな素晴らしい建物が残されているなんて…

今回の旅は天気も良いし、いろいろなものを見ることができたし、山梨の魅力再発見の旅であった。

山梨最高!

なかなか素晴らしいお寺であった、清白寺。

余韻を楽しみつつ、ブドウ畑の中を歩いて、GFS号へ向かう。

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さて、それでは最後の目的地へ。

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(続く)

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