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”2011年の開業以来、常に変化する京都のアート&カルチャーのいまを発信してきたホテルアンテルーム 京都。 2013年より続く日本最大級のインディーゲームの祭典、BitSummit。 両者の出会いから生まれた本展” 『art bit - Contemporary Art & Indie Game Culture -』 に、寄稿しています。 『アートもゲームも現実を引き写したバーチャルでありメタ観光の第一歩』 https://mailchi.mp/5335cf16ee97/local

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寄稿者
玉置泰紀(KADOKAWA/2021年室エグゼクティブプロデューサー担当部長、元ウォーカー総編集長、一般社団法人メタ観光推進機構理事)

『アートもゲームも現実を引き写したバーチャルでありメタ観光の第一歩』

 なるほど、contact Gonzoのゴンゾは、ゴンゾ・ジャーナリズムから来ていたのか。ハンター・S・トンプソンの「ラスベガスをやっつけろ」自体が、砂漠のモーターレース、ミント400とかが出てくる、ある意味、ラスベガスというエリアを舞台にしたハチャメチャゲームとも取れる。ジョニー・デップ主演のテリー・ギリアムの映画でも有名だが、1971年の空気が真空パックされている。

 contact Gonzoの身体性というのは、コンテンポラリー・ダンスというよりは、ルールや小道具、設定、仕掛けによってゲーム性が高められていて、それは新たなスポーツや肉体を使った表現・遊びにも近いと言えるかもしれない。そしてそれは、彼らの作るビデオゲーム作品にも通じ、さらにはeスポーツの戦略ゲームにも近いかもしれない。

 人生ゲームやバンカースとか、ゲームは例えば盆栽のように現実の世界のバーチャルな写し絵だったりする。スポーツやゲームは人間同士の争いといった実際にやると大変そうなものを写したものという一面がある。アート自体も、いわゆる「見立て」だったり、普通に風景画や戦争画、歴史画のように、想像に美的ブーストをかけて現実のミニチュアを作っているともいえる。フェルメールのデルフト眺望のように彼が立っていた視点に行ったこともあるが、実に巧妙に混ぜた虚構もあって、シン・ゴジラではないが虚構と現実の妙味は尽きない。

 今年、理事の一人として立ち上げた一般社団法人メタ観光推進機構は、元々、ポケモンGOとブラタモリに触発された部分が大きくて、ポケモンGOを作ったナイアンティックはGoogleの地図部門からスタートして、位置ゲーム、イングレスを作り、そこからポケモンGOへ発展しブレイクした。グーグルマップ自体がメタ的な要素を包含していて、位置情報上に様々なレイヤーの情報を載せられるようになっていて、ここにファンタジー要素を重ねることも可能だった訳だ。

 「ゴースト・オブ・ツシマ」なども、位置情報と歴史的な立て付けなど複数レイヤーを重ねた面白さだ。「刀剣乱舞」もこれに連なる。京都府宇治市が制作したスマホゲーム「宇治市~宇治茶と源氏物語のまち~」にいたっては、実にメタなおかしみに満ち満ちている。レトロゲームのビット感とギャグ風味が宇治についての教養を臭みなく伝える。

 メタ観光は、従来の観光の視点が単層だったものを複層で見ようというもので、現実とゲーム、アートという層を重ね合わせることで、観光をエンリッチし、ひいては、そこに住み関わる人たちに、その土地について理解を深め、シビック・プラウドを醸成させるフックにしてもらいたいという考えだ。ゲームもアートも、そもそも、現実を引き写したバーチャルであり、そこに含意される歴史やキャラなどの多層要素がメタ的であり、周到に重ね合わせを楽しめば、実に豊かな観光の果実が得られるはずだ。

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