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「恋焦がれる魂」第十一章 融ける

   彼は「セックスは五感全てを使ったコミュニケーション」だと言う。本当にその通りだと思う。特に触覚。繋がって密着している部分は、もう皮膚というより、細胞の一つひとつが会話しているような気さえする。そしてその感覚を私達は共有する。この感覚の常時共有は、まるで融け合うような一体感で、心の底から「一つになってる」と思える。こんな感覚は、他の誰とも感じたことがない。
    私達は、スキンも要らない、ヘアも邪魔、ということで、お互いVIOをツルツルにしてしまった。するともう、奥まで入れた時に根元の皮膚と皮膚がぐにぐにと触れ合って、本当に融け合うような一体感を感じられた。
「触れてるところ一つひとつが愛しい」
これは彼の言葉だが、私も同じように感じている。触れ合ってるところの皮膚の細胞一つひとつが、ミトコンドリアまで愛し愛される悦びに打ち震えているような気さえする。もっともっと距離感をゼロに近づけたい。本当に融けて一つのものになってしまいたい。そうすれば、時が来ても離れなくて済むのに……。
    でも、たとえ物理的に肉体の距離が離れたとしても、魂は決して離れたりはしない。もう一つの完全な球体になってしまったのだから。それは命尽きるまで、私の中で輝き続ける。命が尽きたら、ともにあの世に行くだろう。そしてあの世では、永遠に一緒なのだ。生まれ変わる時まで。生まれ変わったら、また巡り合って、想い合って、結ばれる。何故って、二人は元々一つの魂だから。永遠に想い合い、愛し合う運命なのだ。
    それを確信できてから、私は死ぬことさえも怖くなくなった。死が二人を分かつとも、想いは永遠に消えはしない。だったら何も怖くない。私が先に行くなら、待ってるだけだし、彼が先に行っても、絶望しない。いつか必ずまた逢えるのだから。

    今、私は人生史上最高に幸せだ。今までの人生のつらかったあれやこれやは、全て今この時のためにあったのだ。もちろん今でもつらいことは少なからずあるけれど、彼と愛し合っているという事実だけで、相殺して余りある幸せだ。後悔もなくはないけれど、大切なのは「今」だ。それと、「これから」。
    私にはささやかな夢がある。年老いたら、彼と同じ老人ホームに入って、三食昼寝付きで、日がな一日、それも毎日、彼とイチャイチャしてのんびり暮らすのだ。長生きはしないと思っているから、叶うはずのない夢だけれど。

    とにかくあんなに人生に慟哭し、絶望していた私が、彼と出逢い、愛し合うことで、自らの生まれてきた理由を知り、生きている意味を知り、人生の悦びと愉しみを知って、生きる希望を得たことは、特筆すべきことだと思った。
    私はこれから先も、彼との愛の日々を重ねていくことだろう。願わくば、この物語が、その序章に過ぎないことを。

                                                                 (終)

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