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【薬学生向け】分かりやすい糖尿病の話

体に入った糖の行方

糖尿病についてお話する前に食事などにより体内に取り込まれた糖の行方についてはご存知ですか?

糖は体にとって一番大切なエネルギーです。

糖がなければ動くことも考えることもできません。

つまり、エネルギーを必要とする体の部位に糖が届けられるということです。

では、食事をしてから糖はどうやって全身の細胞に届けられるのでしょう?


簡単に説明すると、

①食事により摂取された糖は小腸から吸収され、門脈を通って肝臓に運ばれます。

②肝臓から放出された糖が血液を通って全身を巡っていきます。

③インスリンと呼ばれる膵臓から分泌されるホルモンによって、血液中の糖が細胞内に取り込まれます。

以上が体内に入った糖の流れとなります。


糖尿病とは

では、本題の糖尿病についてお話していこうと思います。

糖尿病とは、インスリンの分泌障害やインスリン抵抗性などにより、血液中の糖を細胞内に正常に取り込むことができない状態。

つまりは高血糖状態となってしまう疾患のことをいいます。

血糖値は正常だと70~110mg/dlなので、この値より高いと高血糖、低いと低血糖となります。

正常値より高ければ、インスリンの働きにより、筋肉や肝臓、脂肪組織に取り込まれ、貯蔵されます。

逆に、低ければ、グルカゴンなどの働きにより、肝臓に貯蔵されていた糖が血液中に供給されることで血糖値を正常の範囲内に戻すといった仕組みが働いています。


グルカゴン・・・膵臓のランゲルハンス島のα細胞より分泌されるホルモン
        肝臓での糖新生を促し、血糖を上昇させる
インスリン・・・膵臓のランゲルハンス島のβ細胞より分泌されるホルモン        


1型糖尿病と2型糖尿病の違い

同じ糖尿病でも高血糖状態になる要因の違いから1型糖尿病と2型糖尿病に分類されます。

1型糖尿病では主にインスリンの分泌障害が原因で高血糖を引き起こしてしまいます。

一方、2型糖尿病では主にインスリンの抵抗性の増大が原因で高血糖を引き起こしてしまいます。

つまり、両者はインスリンの分泌の有無で比較することができるのです。

また、遺伝因子が関与する可能性は2型糖尿病の方が高いです。


1型糖尿病についてもっと詳しく

1型糖尿病と2型糖尿病の違いが簡単にわかったところで、それぞれについてもう少し深堀してみることにしましょう。

1型糖尿病の発症要因として挙げられるのが、膵β細胞が破壊されてしまうということです。

膵β細胞が破壊されるということは、すなわちインスリンの分泌ができなくなってしまいます。

これは、ウイルス感染などが引き金となり、自己免疫異常が起こってしまうことが原因だと考えられています。

ウイルス感染が引き金となるということは、環境因子が強いということです。

ただし、遺伝因子が関係してくる場合もあります。

発症年齢は10代~20代が多く、不可逆的に進行してしまうため、インスリン投与が必須の体になってしまいます。


2型糖尿病についてもっと詳しく

続いては、2型糖尿病について深堀していきましょう。

2型糖尿病の発症要因として挙げられるのが、遺伝因子と生活習慣です。

遺伝因子が関与している場合は、生まれつきインスリンの分泌能が低い。もしくは、インスリンに対する感受性が低い。という可能性が考えられます。

また生活習慣に起因する場合は、過食や運動不足などが挙げられます。

発症年齢は40歳以上に多く、進行が緩やかであるため、自覚症状が出た時には、すでに多くの合併症が起きているということも少なくありません。


主な症状

〈1型糖尿病〉
口渇、頻尿、体重減少
糖尿病ケトアシドーシス

〈2型糖尿病〉
口渇、頻尿、体重減少
眼のかすみ、手足のしびれなどといった合併症による初期症状


【口渇・頻尿の仕組み】

糖尿病では血液中の糖の量が多くなっているため、薄めようと体が水分を求めます

つまり、喉が渇き、たくさんの水分を飲むようになってしまいます。

しかし、水分は不足してはいないので、尿として排出させようと、頻尿になってしまうという訳です。

【体重減少の仕組み】

インスリンが機能していないということは、血液中から体内に糖を取り込むことができないということです。

つまり、エネルギーを蓄えられないので、体重は減少してしまいます。

【糖尿病ケトアシドーシス(DKA)】

ケトアシドーシスとはケトン体が増加している状態であるケトーシス血液が酸性に傾いている状態であるアシドーシスが組み合わせてできた言葉です。

ケトン体は酸性であるため、ケトーシス状態が進行するとアシドーシス状態となってしまうという訳です。

人間の体は酸性状態に傾くと呼吸や心臓などが正常に機能しなくなり、やがて昏睡状態に陥ってしまう恐れがあります。

では、なぜ糖尿病ではケトン体が増えてしまうのでしょうか?

1型糖尿病では極度のインスリン欠乏状態となっています。

そのため、糖を取り込みエネルギーとして利用することができないので、代わりに脂肪組織を分解して生成されたケトン体をエネルギーとして利用しようとします。

こうやって体内のケトン体が増えていき、ケトアシドーシスとなってしまうという訳です。


【合併症】

高血糖になることで、様々な合併症が引き起こされます。

特に三大合併症として網膜症、腎症、神経障害があります。

網膜症は失明に、腎症は慢性腎不全により透析が必要となり、神経障害は痛みや温度に鈍くなり、怪我の原因につながる恐れがあります。


診断・検査値

糖尿病の診断には当然、血糖値を測定します。

しかし、食事をしてから何時間経過したかで、血糖値は大きくばらついてしまいます。

つまり、様々な血糖値の測定タイミングがあるという訳です。

①空腹時血糖値
食事から10時間以上開けて測定
126mg/dl以上で糖尿病、110mg/dl未満が正常値

②75gOGTT
食事から10時間以上経過した後、75gのブドウ糖を飲み、30分後、1時間後、2時間後の血糖値を測定
2時間後の値が200mg/dl以上で糖尿病、140mg/dl未満が正常値

③随時血糖値
食事とは無関係に測定
200mg/dl以上で糖尿病

④HbA1c
HbA1cとは、ヘモグロビンにグルコースが結合したグリコヘモグロビンのこと。
高血糖状態が長く続くほど、この結合は強固となる性質を持つ。
赤血球の寿命は約120日であるため、約2か月の平均血糖値を反映するばらつきの少ない検査である。
6.5%以上で糖尿病、4.6~6.2%が正常値


まとめ

以上が糖尿病のお話となります。

次回は糖尿病治療薬についてのお話をさせていただきますので、気になる方がいましたら、そちらの方もお願いします!


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