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「ザ・ケルン・コンサート」 キース・ジャレット ~ 田舎の中学生は、諦観の丘を目指そうと思った ~

九州の片田舎での話。

中学生の僕はまったくもって平凡極まりない・・・いや、どちらかといえばぐうたらな毎日を過ごすだけの、今なら「なんとか」とくくられて問題児扱いされかねない様な学生でした。

音楽は好きでしたが、インターネットもない時代。家にはTVとラジオがある程度。自転車で10分ほどのところに商店街がありましたが、小さな本屋とレコード屋が2~3件ある程度。音楽に関する情報なんて知れたものです。

そんなぐうたら中学生が友人の影響でギターと出会います。
友人には大学生の兄弟がいて、手ほどを受けた友人もギターが弾けたのです(披露してくれた曲はアメリカの「名前の無い馬」という曲)。
運が良かったのは、友人宅のレコードコレクションが幅広いジャンルのものが揃っていたこと。フォーク、ロック、ジャズだけでなく、当時は「新しいジャンル」のクロス・オーバー(今のフュージョンです)と様々。
その後僕も(紆余曲折ありながら)ギターを入手する事ができましたが、他の友人たちが弾き語りに興味を持ったのに対し、僕はなぜだか「歌の無い」インスト系に惹かれていったのでした。
楽器の「音が好きだった」というところでしょうか。

当時の音源はレコードとカセットテープだけでしたが、レコード盤を買うというのは中学生にとっては大変なことでした。なにせLP1枚が1か月の小遣いと同じでしたから。なので周囲でも「エア・チェック」という名前でラジオ放送をテープ録音してコレクションしていました。

そんな時、ある番組のテーマ曲にえらく感動してしてしまったのです。

番組のタイトルは「夜のみちくさ55分」。
パーソナリティは岡田真澄氏。
そしてこの番組テーマ曲がキース・ジャレットの「ザ・ケルン・コンサート」でした。初めて聴いた時、文字通り世界が変わりました。
「仄暗い空間に一人で座っている」そんなイメージ。
「楽しい」とか「悲しい」とかそういう感覚とは全く違った不思議な感覚でした。

このテーマ曲は問い合わせが多かったらしく、ある時番組内でフルで流される事になりました。この時初めて知ったのですが「全編即興演奏」「20分超の長尺」であること。岡田氏が「これから曲をかけますが、エア・チェックの用意はいいですか?○○分あるのでカセットテープは長めのものを準備してください」みたいなことを話されていて、今考えると随分とおおらかな時代だったなと思います。録音したテープは宝物となりました。
後日レコード屋にいったところ、なんと2枚組でお値段4000円。しばらくは我慢するしかありませんでしたね。

番組のテーマとなったのは、1枚目のA面すべてを占める演奏。
ピアノのシングルトーンで始まり、最後に歓喜の歌となります。
アホな中学生は「自分もいつかここにたどり着こう」無謀にもそう思ったのでした。

時は流れて・・・世の中にCDなるものが登場した時、一番初めに買ったCDがこのアルバムでした。
その音は、レコードで聴くより少し神経質な感じがしました。

*おまけ
その後、「リマスター」やら「紙ジャケ」やら「ゴールド仕様」やらと何度も同じものを買う羽目になりました(笑
同時に「ECM沼」にもはまっていきますがそれはまたいつか。



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