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【本を紹介】百人が一冊ずつ、本を紹介する企画 #5 「かかる軍人ありき」伊藤桂一

百人が一冊ずつ、本を紹介する企画「百人百冊」。
第五回は、「かかる軍人ありき」伊藤桂一。

紹介してくださるのは、横浜市北部にある、たまプラーザ駅から徒歩5分「3丁目カフェ」のオーナー、大野承さん。

いつも陽気な大野さんですが、戦争を身近に感じながら育った世代だからこそ語れること、伝えていきたいことがあります。

大野さんと、直接語りたいという方は、毎月第3火曜日に行われている「たまプラーザ読書会」へご参加いただくか「3丁目カフェ」へお越しください!


-大野さんは、どんな本が好きなんですか

あの本質的に本はあまり好きじゃない(笑)
この二三年はね、ほとんど読んだことないですね、読んでも、大体十行ぐらい読むと寝ちゃう。

だから活字が追えない。頭の働きと、それから目が弱ってきたんでね、新聞なんかもうほとんど読めないんだけど。

まあ昔は結構、かなり読んで、一週間に一冊とか二冊三冊はずっと読んでたんですね。

文庫中心なんだけど、鴎外とか漱石とか、それからもちろん松本清張から司馬遼太郎ね。

宮城谷昌光っていう中国の古典を題材にする人がいたりとか、山岡荘八の徳川家康だったり、あと黒岩重吾っていうまあミステリなんだけど、日本の古代史をね、書いているんですよ。

蘇我一族だとか、そういうものを題材にしたロマンですね、古代ロマンとか。

あとは帚木篷生っていうんだけど、それは元々医者だから、医者の観点に立った障害者の話だとか、病気の話だとか、死とか生にまつわる題材の本があるんだけど、そういうのをずっと読んでましたね。

ー骨太な感じの本が多いですか。

いや、「サザエさん」と「ゴルゴ13」も全部読んだし。「いじわるばあさん」も読んだし。

最近の漫画はね全く読まないですよね。だからその「鬼滅の刃」だとかね、「ワンピース」だとかってのは、もう全然読んでない。あの読むとね止まんなくなって時間がもったいない。

あとは、会社員だったから、いわゆるノウハウものね。マーケティングだとか、そのドラッカだとか、そういうのは読みましたね。

ー多読家でいらっしゃるんですね。

昔は読んだ。だけど、ここのところ、特に3丁目カフェ始めてこの十年はね、ほとんど読んでないんですよ。文字が入ってこない、目に入ってこない、内容が頭に入ってこない。

ーそんな大野さんですけど、今日ご紹介いただく本は。

ちょっとジャンルがあれなんですけれども。

本当はね、野間宏の「真空地帯」という本を紹介したかったんだけど、ちょっと手持ちなかったんで、代わりに同じようなあれで、伊藤桂一の「かかる軍人ありき」っていう本なんですけどね。

伊藤桂一自体は、もう生きてれば百歳を超えている方で、ようするに軍隊経験があって。

七年ぐらい軍隊に行って、その後出版社に入って、作家として独立したという経歴の人で。

時代物も書いてるんだけど、特にその戦記物を書いているということで有名な方ですね。

でこれは、光人社文庫っていうんですけども、そのいわゆる戦争物の専門の出版社なんですよね。

これがやっぱり一時期好きで、八重洲ブックセンターっていう、三十年ぐらい前だね、八重洲ブックセンターに行っちゃ、光人社のコーナーをずっと見て二三冊買って帰って読むっていう、そういう習慣がありましたね。

本の概要っていうかどんな話なのかっていうのを、説明していただけますか。

まあ「かかる軍人ありき」っていうことですから、こういう軍人もいますよということで、これ短編集なんですよね。

タイトルで十数編載ってるんですけど、「戦犯記」だとか、「参謀記」だとか、それから「イラワジは渦巻くとも」、「ブーゲンビリアよ、咲け」とかね。

そういう、主に取材で軍隊に行った人から、取材をしてまとめた本、十数編の短編が入っている訳です。

で実際にその体験を表しているわけですけど、その時代のことをおって、色んな体験を書いて、その最後に1ページぐらい、現在のその本人とか、周りの人にインタビューした形を取ってですね。

みんなそれぞれ軍隊で一応苦労して帰ってき人は、みんな各地元地元で根付いて、しっかりした生活を固めているというような、短編集ですね。

出版されたのはそれはどれぐらいなんでしょう。

これはね、2003年だけど、文庫なんかでも出てるからね、書いたのはいつ頃だろうね。

平成15年というと、15年20年くらい前、2000年ぐらいですかね。

だからその頃はまだ、経験者の本人もあれだし体験者もね、まだまだ六十とか七十だったから、十分色々聞き取りができたんでしょうね。

俺の小さい頃は、新聞でも色々やってて、読売新聞取ってたんだけど。

読売新聞でも、一年か二年にわたり、戦争のことを克明に追った記事が、ずっと出てましたね。

満州のことだとか、色々出てましたね。

この光人社の文庫とか小説類を読んで、戦争するわけですけど、要はその戦争っていうのもどうしようもないことだよね。

今のコロナどこじゃないですよね。

完全にこのそれこそ、さっき言った野間宏の「真空地帯」ですけど、もう真空の中に人間が放り込まれてね、自分ではどうしようもない。

突き破れない殻の中でね。

それでも、人間らしく生きるっていうね、そういうのにちょっと感動しましたね。

この本を読んでみて、大野さんにとって影響があったというか、心境が変わったとか、そういうことはありますか。

あるんですよね。

あるんだけど、本人おバカさんだから、ヤクザ映画見ると自分がヤクザになったみたいにするとか、座禅とか瞑想すると翌日ぐらいまではね、こうやってんだけど、すぐどうでもよくなっちゃう。

だから実際にどういう影響を受けたかというのは分からないですけども、やっぱり自分の知らない時代の背景、もちろん、黒岩重吾のの古代史じゃないけど、そこま遡るっていうのね。

僕の小さい頃は、進駐軍っていうのがいてね。

雅叙園ホテルっていうのがあって、すぐ近くだったから、進駐軍がいて。

オンリーさんっていうのがいて、オンリーさんっていうのは、日本人は相手にしないで進駐軍だけを相手にするような女性がいて、そういうのをオンリーさんっていうんだけど。

家の前のまだ空き地になってて、戦争で焼けちゃった地面に掘っ建て小屋立ててね、そこにオンリーさんがいる訳ですよ。

子供だから遊びに行くとね、ある日スカートまくって、真っ白い太ももね、ぱっと出すわけですよ。

子供の頃だから、あんまりそんな感じなかったですね、でこう注射をね、ブスーっと刺す。

麻薬の一種で、ヒロポンっていうんですけど。

まそういうような記憶があったり、まその進駐軍のその兵隊たちに、ギブミーチョコレートとは言わなかったけども、そんなようなことがあったんで、戦争っていうのは体験していないけど、身近なんで。

やっぱりそのどうしようもない、もう今は自由ですけどね、社会の箍っていうか環境っていうか、そういうものに放り込まれたときは、どういうものなのかなということで読み始めてましたね。

あとはそのなんだろうな

戦争の死の経験から言って、例えば今回のコロナにしてもね、やっぱり同じような、例えば戦力の逐次投入とかね、小出しにする訳ですよね。

そういうのは日本人の性質だしね。

それかノモンハンの時もそうですけど、特にあのインパル作戦っていうのがあったんだけど、あれはね全く馬鹿げた戦争でね。

司令官が俺はやりたいってやりたいっていうと、上層部でもね、まあ成功はしないだろうなって思うけど、あまりにも司令官が言うもんで、そうかあいつがそれだけ言うならやってみろっていう、そういう判断で走っちゃった戦争なんですよ。

だから無謀っていうか、そういう面じゃ、なかなか日本人の体質っていうのは抜け切れないっていう話ですよね。

なかなかそういう戦略性だとか、そういう先見性はなくて、まあそこは日本人の情緒的な

いいところなんでしょうね。

みんな一人一人はいい人間なんだけど、結局ああなっちゃってね。

誰のせいっていったら、結局時代のせいで、戦争っていうのはね。

今後必ずいつかは起こる、また起こると思いますけどね、それは避けられない。

この頃の時代っていうのも、戦争の時代と少しかぶれる状況もあって、やっぱり日本性質というか、そういうところが出ちゃっているのかもしれませんね。

やっぱり日本のやり方っていうのがあってね。

批判するけどじゃあ実際やってみろって言ったってね、お前菅さんの代わりに行って指揮取ってろって言ったって、誰も多分取れない。

なかなか取れる人はいないと思いますけどね。

そういう人たちにもこういう本を読んで、少し学んで欲しいっていうのもありますね。

失敗の研究っていう有名な本があるんだけど、その作戦を全部見て、日本人の特性を見てね、権力の逐次だとか、そういうものを導きだした本があるんだけど、そういうのが非常に参考になりますよね。

どんどん戦争を体験した方とか、戦争を身近に感じてた方が、どんどんお亡くなりになって、どんどん年が経つごとに、戦争の記憶って薄れていってしまうかもしれないですけど、そんな中でも、本として、こうやって残って語り継がれていくっていう、大切さっていうのを含めて、これを見ている方にメッセージというか伝えたいことをお願いします。

戦国時代だとか、それこそ塩野七生の「ローマ人の物語」だとか、あんまり通り過ぎる。

やっぱり太平洋戦争っていうのは、すごく近い先々代の人が体験したものだから、非常に身近なんでね。

別に宣伝する訳じゃないけど、光人社のシリーズが本屋さんの一角にあるんでね、そこで見て読んでみるのも、いいじゃないかなと思いますね。

そうですね、戦争っていう歴史の中の大きな事実だけじゃなくて、そこに本当に生きてた人がいて、一人一人の人格があってっていう、そこを感じるのが凄くいいですね。

本当にそんな感じ。

放り込めたら、俺はは戦争反対だなんて、誰も言えなかった時代になっちゃったと思うんでね。

その中でも、如何に一人ひとりが過ごしていったかということだよね。

こういった本を色々とお持ちだと思うんですけど、3丁目カフェの中に本をたくさん置いてあるんですか、これは何なんでしょう。

これはね、冒頭、本はあんまり好きじゃないって言ったんですけど、これも成り行きで、3丁目カフェはじめたのも成り行きで、別に信念があった訳じゃなくて、これも成り行きで。

一つにはね、青柳志保さんが、つい近所に、プラ2って図書館始めちゃったんですよね。

あっという間に三千冊あつめて、皆さんに寄付してもらって、若者と子どの図書館って、凄いことを始めちゃってね。

それに触発されたのと、もう一つは、今認知症カフェを月に一回ここでやってるんですよ。

ある人ない人カフェっていうんですけれども。

もう十一回目になるんだけど、そういう風に認知症に接してくると、そこをちょっと知りたいなというような形で、こっち認知症の本。

それから、志保さんから寄贈された、本来はどなたか寄贈してくれたものを、家でまた再度預かっている本で、老年に関する本。

それから僕自身がやってた、いわゆるまちづくりの本ですね。

一般的な本もあるんだけど、非常にローカルな、ディープな本もあって。

うちは駅から五分なんで、プラ2じゃなくてプラ5って名前を志保さんに許してもらって、付けようと思ったんだけど、ぷらっと五分。

ただ全てのジャンプができないんで、いわゆるまちづくり系と、それから認知症系とそれから年寄り系、老人学、ジェロントロジーとか言うらしいんですけどね・・・

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