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§8 行ったり来たりの人生となきむし #旅する土鍋 vol.3

ひやぁ、第二の故郷での生活はこの人生のなかで幾度もくりかえされてきたわけだが、今回はなぜなにどうして「行ったり来たりの人生」を腕をくんで椅子にすわって考えている。人の生き様が沁みて沁みてたまらない。

人の生涯を半ば以上知り、ともに思い出のアルバムをつくってきた師匠やその周囲の人たち。そしてお世話になっている友人たち。人が生きていて、こうして再会して、つみきを共に重ねていけていることがどんなに貴重なことなのか。

ある日、ローマからイタリア人の友人が訪ねてきてくれた。わたしたちは20年ほど前にミラノの師匠の工房で作陶していた仲間。イタリア人同士であっても、人生には互いに小休止というものがあって、関係性にインターバルを置くことがある。(写真は連絡先の交換中)

しかし、必然性がある場合、ぴたりと時を分かち合える瞬間がやってくるものらしい。

師匠は最初は複雑な顔をしながら、しかしすぐにジワと感動した笑顔で、まるで20年前にタイムスリップしたように「納品に一緒にいかないかい?」と師匠っぽい顔をして偉大なイタリア家具ショールームに弟子ふたり(私と彼女)を連れて行ってくれた。いいオトナになってしまった弟子の我らもいたずらっ娘のようなふるまいに戻った。

DePadova ショールーム
左の白いのが師匠作品。他にもあちこちに。

展覧会も近づき、やることいっぱいと胸いっぱいでなかなか旅日記の記事が書けない。

そうか、旅であり旅でないのだ。
ここに住む師匠や友人は、私が「旅をしている人」ではなく、昔のように「暮らしている人」だと思っているのだ。別れはそのぶんいつも辛い。なきむしは一段と成長している。

Gatto(猫)という名のネコちゃんもすっかりなついてしまい、なきむしにいっそう拍車をかけそう。

現在7:17。だいぶ朝が明けるのが遅くなった。

Cocciorino 地球のかけら


展覧会のおしらせ(ミラノ)





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