人前で漫才をやったことがある~③本番、それから編(了)~

本番。
バッと出て行って、視線が自分たちに注がれているのが分かった瞬間、頭に血が上った感覚になった。
興奮しながら、言葉を繰り出す。テンションが上がっているから、声は上ずって大き目、動きも大袈裟。
緩急など、どこかに行ってしまったと思う。

だけど。

ウケてる!
みんな笑ってる。手を叩いている子もいる。
これが内輪受けネタ×最後の夜のテンションのパワー。
楽しい!気持ちいい!

必死に掛け合いをしながら、観客である友人達の様子を精一杯目に焼き付けた。
高揚感のまま、終えた。

直後、まだ興奮の最中にあったのか、相方や友人達と、どんな会話をしたか、まったく覚えていない。
ただ、様々な観光名所や名物料理よりも、何よりも、この漫才の時間が私にとって印象深い思い出となった。

修学旅行終了後。漫才を見たかったと言ってくれた、別のクラスの友達数人向けに、放課後に教室で同じネタをやった。
本番のときより落ち着いてできたはずなのに、盛り上がりはそこそこ。その場の空気って大事なんだな。

翌春。3年生でも相方とは同じクラス。
文化祭で、漫才がまた出来るのでは?と考えたが、個人単位でステージ利用の制度がなかった。先生に掛け合うほどの度胸はなく、断念した。

そして受験勉強も本格化。
相方と「二人とも大学全部落ちたらNSC(※吉本の養成所)行くよ!」なんて言いながら、放課後は自習スペースで過ごした。
それが功を奏したのかなんだかよく分からないが、それぞれ希望の大学に合格し、NSCに行くことはなかった。

まあ「『全部』落ちたら」なんて言ってる時点で、99%冗談だったわけだけど。滑り止め受けてたし。

ただ、何かの間違いや偶然が重なって本当にNSCに行ってたら、どんな人生だったんだろう。売れてないのは確実。ダラダラ続けてたのか、別の道に切り替えていたのか…。
また、芸人さんたちとは、どんな関係性だったのやら。

今、芸人さんを応援している中で、特にネタが出来てから磨かれていく過程に、一際興味と尊敬を持っている。
自身の経験は、本当に拙くて些細なものだけど、それが自分の中で応援の楽しさを増幅させているとしたら、本当に良かったなあと思う。

あれ、そういえば、解散…してないな。
先日相方と飲んだときに、「久々に同窓会やりたい」と言う話になったなあ。

さて。

【おしまい!】

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