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貧困で闇に沈む前に。なるべく多くの選択肢を ~『女子大生風俗嬢』を読んで~

おはようございます、tamamioです(^^)
今回はちょっと重めのテーマ「貧困」です。「男の貧困は犯罪へ、女の貧困は風俗へ」を地で行くルポタージュを読んで、大人ができることを考えました。

1 参考文献・一定数の大学生を取り巻く環境

今回読んだのはこの本です。全員がこんな環境ではないにしても、一定数いる、しかも増加傾向にあるということは頭に入れておく必要があります。

購入しようかどうか一日迷いました。もう、楽しい話ではないことは確実で「人の不幸は~」じゃないけど、そういう興味本位とか、邪な気持ちで読みたいだけなんじゃないだろうか、と自問自答してしまい。

でも結局「教師だし、子どもに無関係ではない話だろうし、現実に起きていることだし、直視したほうがいいのではないか」と思い購入し読みました。

私はあまりネタバレするような発信はしないのですが、今回はちょっとネタバレ含みます。読み始めての感想は、まず「親は何やってる?!」でした。

本書には18人の大学生が登場します。前半に登場する大学生の多くは、自身の親によって大学生活を狂わされます。「大学は自費でやってね」と受益者負担を強いる親。奨学金を借りさせて、自分の生活費や遊興費に使う親。

当然、学費、生活費はとてもアルバイトで賄えるものではなく、消去法で風俗の世界へ。親によって人生を狂わされた大学生が次々に登場しました。

2 改めて「やっぱり恐ろしい風俗の世界」

次に思ったことが「やっぱり風俗の世界は恐ろしい」でした。本書中盤には「勝ち組風俗嬢」が登場します。夢は小学校教師。美人で「学費のために風俗で」という彼女は風俗嬢として成功し、学費も、贅沢ができるお金も手に入れました。

しかし「学費ができたから風俗から足を洗って大学へ」とはなりませんでした。彼女は、過酷な風俗嬢としての生活から自暴自棄となってしまいます。

風俗嬢としては、稼ぐって目標があって、そのために頑張ってたつもりだけど、夢だった教員は諦めたし、未来像みたいのは何もなかった。 30代、 40代にはこうなっていたいっていうのが何もなくて、大学も休みがちになった。日々風俗嬢をしながら、明日事故に遭って死んでもいいや、みたいな感覚で生きていたんです。

本書には女子大生だけでなく、男子学生も登場します。彼らは、ホストをしたり男性を相手にしたりしています。その中の一人は次のように答えます。

自分に時間あたりの価値が明確に付いた。彼女と付き合っているとき、彼女に対する不満があったりすると、なんでこの人、無料で自分に会っていて、かつこんな扱いなんだろうって。そんな不満が出てくる。

仕事ならともかく、恋愛で「時間あたりの価値」を考えるのも、やはり普通の感覚ではない。風俗は、そして貧困は、こんな風に人の心を蝕んでいくのだなぁと恐ろしくなりました。

もちろん、中にはたくましく生きる女子大生風俗嬢も登場します。まさに「花魁」。20代前半で数千万円の資産を手に夢を掴もうとしています。ただ、大多数はそのまま闇に沈む。そんな恐ろしい世界が垣間見えました。

大学時代に読んだ大好きな山田詠美さんの虚構的自伝も、主人公は女子大生風俗嬢でしたが、当時は今のように「貧困」なんて考えられなかった。

読了し、現実を知り「えらいことだ」と受け止めました。しかし、それだけで終わっては、教師の私が、しかもnoteで発信する価値がない。大人として、教師としてできることを考えました。

3 大人・教師は「多くの選択肢を示してあげる」


本書の締めくくりに、筆者の解決策が載っていました。曰く、

現実的な解決策は「自宅外通学」の断念

・・・って、それはないでしょう。本書には、自宅から通っても風俗で学費を稼ぐ女子大生も登場します。ただ、この本の価値は「大学生の貧困をあぶり出し、世間にその問題を知らしめる」ことにある。解決策は「つけ足し」的な扱いです。

私の解決策はこれです。子どもに「多くの選択肢」を示してあげること。貧困で闇に沈む前に、誰かがこの本を紹介してあげていれば、と思います。

筆者のタカ大丸さんは「DVと貧困から抜け出しトップ翻訳家に上り詰めた」実体験をお持ちの「先輩」です。帯にもありますが、「綺麗ごとなしでお金を稼ぐ25の方法」が紹介されています。ちなみに「AV女優はおすすめしない」とのことでした。

子どもの7人に1人は貧困家庭に育ち、コロナ禍でその傾向はさらに強まることでしょう。追い詰められて犯罪や売春に手を伸ばす前に、多くの選択肢を子どもに知らせたいと思いました。

4 大学に行くのは「手段」であって「目的」ではない

本書を読みながら、ずっと違和感がありました。タイトルの『女子大生風俗嬢』。大学に進学しないという選択もあったろうに、大学に進学しなければ風俗で人生を狂わせることもなかっただろうに。どうしてそこまでして大学に?

将来就きたい職業のために資格を取る必要がある、そのために大学、専門学校、と言うのならわかります。例えば、教師になるのなら教職免許を取得する必要があり、そのためには大学に行く必要がある。医者、看護士だってそうでしょう。

ただ、それだって教師なら「通信大学」という選択肢もあるはずです。一度社会に出てそれから教師に、という人も今は珍しくありません。40代で新卒教師という人もいますし、元同僚は高卒自衛官でした。

ここにも「多くの選択肢を示していない」大人の責任がありそうです。大学に進学することは、「手段」であって「目的」ではないはずです。

教師や大人は「大学に行かないでも成功した人の事例」や「自己実現して幸せに暮らしている人の事例」を、数多く示さなければいけなかった。

つまり、大学進学という「手段」で
1 自分の能力を生かした仕事ができる
2 経済的な豊かさを手に入れられる
3 自分らしく生きられる(=自己実現ができる)
という「目的」を達成することが最大の課題なのです。

大学進学しなくても「目的」を果たせる方法を示し、一緒に考える大人が身近にいたら、と『女子大生風俗嬢』を読んで思いました。そして、私はそういう大人になりたいなと思いました。

ただ、大学生活に単純な憧れもありますよね。それはとても理解できます。望む人には全員、大学生活を送らせてあげたい。そういう社会になることが一番ですよね。

今日はちょっと重めのテーマでしたが、ここまで読んでいただいてありがとうございました。
この週末はいい天気のようですね(^^)
今日も良い一日を!


私の創作活動の糧は「読書」です。より多くの書籍を読み、より有益な発信ができるよう、サポートいただけると嬉しいです。