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医療DXによって医療事務は絶滅するのか?

4/4(木)に初めてスペースに参加しました!
ちなみに、そのスペースはカルロス山本(@carlosnote_)さんのKindle出版記念イベント。

そこで「DX(デジタル)化によって医療事務の仕事はなくなると思う?」というご質問が。

せっかくなので、医療事務の経験をもとに文章化してみたいと思います。

DX化で医療事務の仕事はなくなるの?

結論、ゼロにはできないと思う
というのが個人的な見解。

その理由は、
医療事務をゼロにする=医師が会計まで完璧にやらなければならない
ということを意味するからです。

現在、多くの医療機関では医師が電子カルテに処置や検査のオーダーを入力して、そのオーダー内容とカルテの記載をもとに医療事務が会計を作るという流れがほとんどだと思います。

(※電子カルテがない病院では、手書きのカルテから診療内容を読み取って会計計算。そもそもカルテの記載が読めない問題もなかなか厄介。)

「医師がすべてのオーダーを間違いなく電子カルテに入力できているか」と言われると、そんな完璧なことができる医師はごくわずかかと…。

たとえば、患者さんの体の細胞をとって病気かどうか調べる「細胞診」という検査をしたとしましょう。

「細胞診」という検査そのもののオーダーをしなければ、担当部署で検査をしてもらえないので、医師は忘れずにオーダーします。

忘れがちなのが「採取料」です。

尿や痰をはじめとした、患者さんが自分で採取できる検体であれば不要ですが、医師が内視鏡を使ったり、処置をしたりしないと採取できない細胞は「採取料」と呼ばれる手技料を請求できます(気管支や乳腺、子宮などの細胞がありますね)。

ちなみに、私の勤めていた病院で採取料を正確にオーダーしてくれる医師は9割5分いなかったです(笑)。

会計作成時に「子宮の細胞診をやってるのに採取料がないやないかーい」と、医療事務が追加で入力します。

(病院によって異なりますが、医師がオーダーし忘れた採取料をもし医療事務が見逃して、会計時に追加するのを忘れたら医療事務の責任です。医療事務が患者さんに追加会計の連絡をして謝罪します。)

現時点では、この例のように医師がオーダーを漏らしていても会計時に医療事務が補える仕組みになっています。

しかし、医療事務をゼロにしてしまったらこうはいきません。

医療事務が一切手を加えなくても会計を自動作成をしてくれるシステムは、いずれ登場するかもしれません。ですが、医療事務の関与なしで会計作成をするためには、医師が漏れなくミスなくオーダー入力をする必要があります

ただ、医師の本来の仕事は医療であり、会計作成ではありません。それを求めてしまうと、医師の負担が超絶増えるだけでなく、請求漏れによって収入が低下するおそれがあるのです。

忙しい医師をサポートする医療事務「クラーク」の存在は消せない

「医療事務」とひとくくりに言っても、おおまかに以下の種類があります。

  • 受付・会計を担当する医療事務

  • 医師の外来診療を補助する外来クラーク

  • 入院病棟の事務作業をする病棟クラーク

個人的に、受付や会計はある程度システム化できたとしてもクラークをゼロにはできないのではないかと考えています。

クラークは医師の代わりに電子カルテの記載をしたり、書類を作ったりするのが仕事です。そのほか、患者さんへの検査説明なども引き受けます。

忙しい医師に代わって事務的な作業をするスタッフがクラークです。

また、医療クラークを導入すると一定の要件のもと「医師事務補助作業体制加算」という加算の算定が可能になります(※入院設備のある医療機関のみ)。

診療報酬は2年に1度改定されますが、この医師事務作業補助体制加算の点数は上がり続けています

(ちなみに、今年の診療報酬改定でも20点アップ)

2024年4月からは医師の働き方改革も始まりますが、医師の負担を軽減させるためには、クラークの存在は欠かせません。

つまり、国は「医師じゃなくてもできる医療以外のことはクラークが代わりにやって医師の負担を減らしてね。だから、クラークをどんどん増やしてね。それができる医療機関にはお金あげるよ」と言っているのです。

いくらDX化が進んだとしても、この流れでクラーク(医療事務)がゼロになるとは考えにくいのでは?と、個人的に思っています。

とはいえ、確実に医療事務の仕事は少なくなる

医療事務が絶滅しない理由について私見をつらつらとつづってきました。とはいえ、DX化が進めば医療事務の仕事は確実に減るでしょう。

最近は患者さんが自分でQRコードを読み込ませて受付し、ディスプレイやスマホの通知で診察室に呼ばれ、会計の表示が出たら自動精算機で支払いをして帰る、という医療機関も多くなりました。

これ全部、システムと患者さんの間のやり取りであって、来院から帰宅まで医療事務の方と話すことはありません。
(※実際に私が通院しているクリニックの話です)

月に1度、保険証の確認時だけ事務の方とお話ししますが、これも保険証が廃止されてマイナンバーによるオンライン資格確認になったら、医療事務を介さず確認可能です。

医療事務がゼロになることはないけれど、生き残るためにはレセプトに超詳しい人材になったり、医師が手放したくないと思うスーパークラークになったりと、何かしら努力が必要なのではないか

元医療事務として、そんな風に思う今日この頃です。


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