偏見を助長する描写とは何か


 以下は、拙著『コロナ・アンビバレンスの憂欝』の「あとがき」からの抜粋である。

 私が作品における精神障害の描写が偏見をあおっていると判断する場合の基準は、次の通りである。


・そのキャラクターがほぼ匿名の存在として描かれ、きわだった属性として精神障害者であることのみが強調されている。


・たとえ「診断名」への言及がなくとも、精神障害者であるという認識を誘導する形でステレオタイプな描写がなされている。


・精神障害者への偏見を強化するようなステレオタイプとは、以下のようなものである。すなわち、暴力的、非理性的、話が通じない、遺伝する、治らない、病識がない、など。


・精神障害者の犯罪が描かれること自体は偏見を助長しない。犯罪に至る個人的な動機や状況が描写されていれば偏見にはつながらない。だから「ジョーカー」が精神障害者として描かれていても私は批判しない。逆に、犯罪の理由がひとえに精神障害であるかのように誘導する描写は差別的である。

・以上をまとめれば、「精神障害という属性」を、安易に「悪」や「穢れ」、あるいや「暴力性」や「有害性」に結びつけるような描写を私は問題にしているのである。

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