ジョルジュ・ルオー 聖なる芸術とモデルニテ
パナソニック 汐留ミュージアム「開館15周年 特別展 ジョルジュ・ルオー 聖なる芸術とモデルニテ」のプレス内覧会に参加してきました。
宗教画に関心がなくてもルオーの絵は目にしたことがあると思います。厚く盛り上がった絵具、太い線で縁取られた顔、荘厳さと物哀しさ。
今回の展覧会はヴァチカン美術館が初めて日本に出品する作品やポンピドゥセンター パリ国立近代美術館、ルオー財団からの出品を含む、油彩画を中心とする約90点。ルオーの画業を存分に堪能できる内容です。
展示は4つの章に分けられており、それぞれに部屋の壁の色が異なります。白、青、赤、緑。
大胆と言えば大胆ですが、この色分けが今回の展示にはとても効果的だと感じました。空間のことを言えば、入口すぐの展示コーナーは半円形に形づくられています。既にある空間にどう展示するかだけではなく、作品のために空間自体を作り変える。キュレーターの熱意と苦労が伝わってくるようでした。
第1章のタイトル「ミセレーレ」はルオーの版画集のタイトルです。イコンとは礼拝用画像。ルオーは誰もが少しのお金で自分の絵を部屋に飾れるようにとの思いで版画という方法を選んだとのこと。描かれているテーマは重いものですが、「苦しみや矛盾の中にも必ず希望がある」ことを伝えようとした作品集だという学芸員の方のお話を踏まえて鑑賞すると違った印象が浮かび上がってきました。
第2章「サバルタン」には、ルオーの代表作〈聖顔〉、慈愛を象徴するような女性像〈サラ〉〈ヴェロニカ〉などが並びます。本展監修者の後藤新治氏(西南学院大学教授)の「ルオーの描くキリストは栄光のキリストではなく、むしろサバルタン(抑圧されているけれども反抗する言葉を持たない人々)を代弁するもの」という解説に頷きながら鑑賞させていただきました。
第3章は「パッション」。ここでのパッションの意味は情熱ではなく、キリストの受難です。ルオーが繰り返し描いた主題を紹介すると共に、ルオーのマチエール(絵肌)の変化を考えるコーナーとのことです。「時代によってなんとなく変化しているな」程度の印象は持っていましたが、見比べることでなるほどと腑に落ちました。
第4章の前の特別コーナーにステンドグラスが飾られています。太陽の動きによって移ろう影を模した展示に心惹かれるものがありました。
第4章は「聖書の風景 未完のユートピア」と題され、風景画が並んでいます。劇的なシーンではなく、親密な日常の光景を描いた作品群にこの世界に対するルオーの愛が滲みでているようでした。
パナソニック汐留ミュージアムはJR・地下鉄新橋駅、地下鉄・ゆりかもめ汐留駅から徒歩とアクセスがよく、下階のショールームも広くて楽しいです。お台場への行き帰りに時間を作って立ち寄るのもいいかと思います。
見ごたえのある展示です。この機会に訪れてみてください。
[副題の「モデルニテ」は直訳すると”現代性”だそうですが、ここでの意味はボードレールの芸術論から取られており、「一過性のもの、移ろいやすいもの」とのことです。]
※ 写真は特別な許可を得て撮影したものです(一般公開期間中も特別コーナーは撮影可能です)
パナソニック 汐留ミュージアム「開館15周年 特別展 ジョルジュ・ルオー 聖なる芸術とモデルニテ」
■会場 パナソニック 汐留ミュージアム
港区東新橋1-5-1 パナソニック東京汐留ビル4F
https://panasonic.co.jp/es/museum/access/
■展覧会の概要 https://panasonic.co.jp/es/museum/exhibition/18/180929/
開館期間
2018年9月29日(土) ~12月9日(日)
開館時間
10:00~18:00(入館は17:30まで)
10月26日と11月16日は20:00まで(入館は19:30まで)
休館日
水曜日(但し11月21・28日、12月5日は開館)
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