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ルームメイト

アメリカの大学に留学していた頃、私にはルームメイトがいた。
最初のルームメイトは、アメリカ人のK。私は、語学学校に在籍していて、秋学期となり、寮の部屋が同じになった。Kは、私とルームメイトになる前から日本人の友人がいて、日本人と同じ部屋でもいいと希望したらしい。優しくて美人、私と同じ専攻だった。1年間、同じ部屋で暮らしたが、Kの彼氏はその間に5回ほど代わった。1年後に、「他の友だちも一緒に大学の近くの一軒家でシェアハウスをするから一緒に住まないか?」と聞かれたけど、気後れしてもう一年、寮生活を希望した。

次にルームメイトになったのは、アメリカ人のJ。私より年下で、日本に留学経験があり、セーラームーンと馬刺しが好きだった。日本語が少し分かるので、時々、「昨日、日本語で寝言言ってたよ」と言われたりした。Jは飛び級で大学に入り、異文化に興味があるようで、私と一緒に留学生の集まりにも参加していた。彼女は年上のイスラム教徒の彼氏ができ、ラマダンに断食などもしていたが、彼女の母親が、彼氏と別れさせるために(彼女がもともと希望していたが認めてもらえなかった)転校を許し、転校していった。

2年間、寮で暮らした私は、大学の近くの2LKのアパートで、アジア人の友人と住むことにした。彼女は頭もよく、美人で英語も堪能だったが、金銭的なトラブルが発生した。寮は、学費と同じで口座振り込みだったが、アパートとなると、自分でいろいろ手続きがいる。彼女は、大家さんに私がまとめて払うからと言うので、私は家賃の半分の値段を書いた小切手を渡していた。友だちだったので、特に疑うこともなかったが、彼女は小切手の数字を書き足していた。銀行から普通、使った小切手の記録が送られてくるのだが、彼女と住み始めた途端に届かなくなった。私は大学で働いたりしていて、帰りが遅いのをいいことに、彼女が先に郵便ポストをチェックして、破棄していた。銀行に記録を再発行してもらったところ、数字部分に彼女の筆跡が確認でき、驚愕した。
別件で、同じ頃、日本にいる母から「急にクレジットカードで沢山買い物をし始めたけど、どうかした?」と聞かれ(このクレジットカードの請求先は日本の実家だった)彼女が私のクレジットカードを使っていることが判明した。もともと散財してなかったのが幸いした。カード会社から記録を取り寄せると、私の名前を書いたサインの筆跡は彼女のもので、宛先は自宅の住所だった。一緒に住んでいれば誤魔化しようがないのに、彼女はなんでそんなことをしたのだろう…。「寂しかった」と言われたが、それは理由にならない。
キッチリお金は返してもらい、同居はもちろん解消し、彼女とは疎遠になった。

その後、夏学期の間、メキシコ人の友人と暮らした。部屋中にスペイン語と日本語、英語で単語を貼り、お互いの国の言葉を教え合った(私の第二ヶ国語はスペイン語だった)。彼女とはつきあいも長く、それなりに一緒の生活は楽しかったが、秋学期になり、彼女が他の留学生と何人かで一緒に暮らす(その方が安い)と言うので、なんだかもう、うんざりしてしまって、彼女の後はルームメイトを探すのはやめにした。だからといって、人とつきあうのは嫌にはならなかった。日本人の後輩たちなどを招いて日本食をふるまったりしていた。

留学中は、部屋代の節約にもなるし、英語の勉強になるので、日本人以外のルームメイトを選ぶのはいいと思う。私は高校までは、親元で平和に暮らしていたので、そこまで人を疑うことはなかったが、苦い経験を踏まえて、一定の距離感は保つように、慎重になった。楽だと言って、金銭関係を人に任せ過ぎるのは良くないし、レシートなどの管理や処理も、人に見られないように慎重にしないといけない。家や車は密室なので、よく知らないうちは注意した方がいい。同性、異性問わず、一緒に住んでみないと分からないことも多いと思う。たとえ失敗したとしても、そこから今後気をつけることを学んでいけばいい。

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