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箱根駅伝往路 駒澤・中央・青学の高レベルの争い

面白かったぁ。いやもう、往路だけでお腹いっぱいなくらい面白かったですね。2強+事前に侮れないと予想していた中央を加えた3校の激しい争いがずっと続きました。
ただ、駒澤はなんだかんだで常に中心に居たように思います。ずっと、駒澤に対して中央、青学がどう戦うか、という図式だったな、と思います。
では、レースを振り返っていきましょう。

当日変更

箱根駅伝では、レース当日に補員登録から最大6名(1日4名まで)の変更は認められています。戦略的変更もありますし、アクシデントによる変更も、アクシデントに備えて登録しておいた変更もあります。
当日変更はこのようになっていました。

まず、本命・駒澤は、3区に佐藤選手ではなく篠原選手を入れてきました。篠原選手も強い選手なので意外ではないですね。5区は1年山川選手に変更。上り適正が非常に高いと噂になっていた選手です。
青学は、4区に太田選手。前回の3区でトップに立つ区間2位の爆走をして優勝を決定づけたランナー。ただエース岸本選手が往路に入らなかったのは、調子が上がらなかったと思われます。(これが「ちょっとトラブル」の正体か?)5区も脇田選手に変更。これは前日に若林選手が体調を崩したそうです。
中央が、2区吉居大和選手、3区中野選手。やっぱり1番のエースを2区に置くという意味では収まりは良いですね。1区区間記録を更新した吉居大和選手が田澤選手や近藤選手とどこまで戦えるか、非常に楽しみでした。中野選手も2区と予想されていた選手なので3区では当然、区間賞候補です。
國學院は、1区青木選手、2区平林選手と予想通りでしたが、4区に4年生の藤本選手でした。4本柱の中西選手を復路に残す判断がどう出るか?
順天堂は、1区野村選手、2区三浦選手で来ました。ロード向きではないけど一番基本走力のある選手に2区を任そう、という事ですね。5区は予想通り四釜選手。
法政が、3区予定の松本選手が変更で川上選手が入ります。主力が一人、走れなくなったのは、層は厚くない法政には痛手でしょう。4区は扇選手に託します。5区は予想通り細迫選手。去年の経験を活かしたい。
早稲田はこの表、間違っていますね。4区は佐藤選手が入っています。主将の鈴木選手の調子が上がらなかったのでしょうか。
大東は留学生ワンジル選手を2区に。今年は負担の少ない区間などで走らせて自信回復をさせてきましたが、2区の戦いは大丈夫か。ただ、ハイレベルの2区に耐えうる走力はワンジル選手しか持っていないので、頑張ってもらいたい所。
明治の2区は小澤選手。小澤選手も学生ハーフ7位と強い選手ではありますが、2区にどこまで耐えられるか。
一番トラブルがあったのが専修大学。3本柱のうち二人が当日変更で走れなくなってしまいました。

1区:牽制でスローペースの出だしから

1区、関東学連の育英大・新田選手が飛び出しますが、追いかける人はいなくて独走になります。関東学連はオープン参加で順位は付きません。なので基本的には「逃して良い」存在なので、誰も無理に追いかけない。それを利用して新田選手はすいすいと逃げていき、差をどんどんと開き始めます。集団は互いに牽制し合い、1キロ3分以上のスローペースに。ただ、10キロくらいから少しずつペースは上がっていきますが、特に集団を動かす人は出ずにずっといきます。六郷橋の手前で中央・溜池選手が少しペースアップしますが、スパートと言える程ではなかったので数名が集団から脱落しただけで多くの選手は付いていきます。
六郷橋の下りで、明治・富田選手が猛然とスパート。駒澤・円選手が反応します。二人が集団から抜け出す格好に。そして。

明治大学はここ数年、期待されながら奮わずシード権を獲得できていません。1区2区で出遅れ、それによって中盤後半区間も力を出しきれずに終わってしまっていました。それで、今年は出遅れ厳禁と、チームのエースを1区に投入しました。富田選手はその期待に見事に応え、貯金まで作る区間賞でした。
駒澤・円選手は、ライバル校青学・中央などに先行して襷を渡す事に成功。富田選手の飛び出しに一人だけ付いていき、離されても前を追い続けた気迫の走りが身を結んだ格好です。4年生になって台頭してきた経験の浅い選手でしたが大役を果たしましたね。3位以降に少し差を開けての継走でした。
学連の新田選手が3番目の位置。最後抜かれましたが、爪痕は残せたんじゃないでしょうか。
3位が法政の準エース松永選手。期待に応える快走だったでしょう。4位中央・溜池選手、5位創価・横山選手、7位順大・野村選手、8位青学・目方選手と上位を狙う大学が僅差で続きます。スローペースだった事で、17位東洋・児玉選手までが54秒差と1分無い差で繋ぐ事になりました。
大きく遅れたのが、立教、東海、専修。

2区:エース達の一歩も引かない争い

2区の戦いは、非常に面白かったですね。まず、中央・吉居大和選手が超ハイペースで突っ込んで、駒澤・田澤選手も抜いて独走状態に。しかし、落ち着いて入った田澤選手が徐々に差を詰め、吉居選手を抜き単独首位になります。青学・近藤選手は堅実なペースで徐々に順位を上げ、落ちてきた吉居選手に追いつき、吉居選手を引き連れて田澤選手との差を詰めていきます。
最後、この3人で激しい争いとなり、一気に差を詰めた吉居選手を田澤選手が突き放し、と思えば近藤選手が吉居選手を抜いて、と激しく争います。最後、ラストスパートで抜け出した吉居選手がトップで継走、3秒差で田澤選手、さらに1秒差で近藤選手が襷を渡します。
田澤選手はコロナに感染し万全ではなかったそうですが、意地の走り。

2区の結果は
1位:吉居(中大)66:22
2位:近藤(青学)66:24
3位:田澤(駒澤)66:34
4位:石原(東海)67:09
5位:ムルア(山梨)67:22
6位:ムルワ(創価)67:29
7位:平林(國學)67:32
8位:内田(法政)67:53
9位:カマウ(国士)67:54
10位:石塚(早大)68:05
11位:丹所(東国)68:06
12位:三浦(順大)68:11
12位:藤本(日体)68:11
14位:小澤(明治)68:43
15位:斎藤(城西)68:46
16位:キサイサ(専修)69:05
17位:西脇(帝京)69:13
18位:國安(立教)69:37
19位:石田(東洋)70:04
OP:工藤(学連)70:07
20位:ワンジル(大東)71:35

区間上位3人は先頭争いをした3人。そして、区間4位に東海の石原選手が入りました。長く怪我をしていて、予選会では失速し、後半厳しい2区で大丈夫かと心配された石原選手でしたが、1区で出遅れた流れを引き戻す激走でチームを11位まで引き上げました。
他の有力校は、國學の平林選手は区間トップから1分10秒差、持ち堪えた方でしょうか。順大の三浦選手も計算内だったとは思います。

3区:レースの流れは変わらず

3区も、中央・駒澤・青学の3校がトップ争い。中央の中野選手が差を広げ、青学・横田選手に駒澤・篠原選手が付く形。終盤、横田選手を突き放した篠原選手が激しく追い上げますが、中野選手が多少差を広げた状態で継走しました。

3区の結果は
1位:中野翔(中央)61:51
2位:篠原(駒澤)61:58
2位:井川(早大)61:58
4位:森下(明治)62:05
5位:山本(國學)62:07
6位:花岡(東海)62:21
7位:伊豫田(順大)62:22
8位:横田俊(青学)62:23
9位:小林(東洋)62:33
10位:漆畑(日体)62:36
11位:キムタイ(城西)62:41
12位:白井(東国)62:44
13位:川上(法政)62:52
14位:山森(創価)62:58
15位:成島(専修)63:45
16位:関口(立教)64:01
17位:小林(帝京)64:12
18位:入濱(大東)64:25
19位:村上(山梨)64:31
20位:山本龍(国士)64:40
OP:内野(学連)66:17

区間12位までは1分未満の差、11人(14位まで)が62分台で走るという接戦でした。山梨が大きく遅れ、区間2位で追い上げた早稲田が5位まで上がってきました。追い上げが期待された順大・伊豫田選手は前半突っ込みすぎたのか後半伸びず、上位との差は逆に広げられる結果となってしまいました。國學も順位は上げましたが差は詰められず。やはり先頭を逃すと後ろから追い上げるのは大変という結果になりました。

4区:激しいトップ争いは変わらず

4区の争いも激しかったですね。前回3区で区間2位、チームをトップに押し上げ優勝の立役者となった青学・太田選手が激しく前を追い上げ、先頭の駒澤・中央に追いついた所は、3校での争い再びと盛り上がりました。その後、中央の吉居駿恭選手は引き離され、太田選手と駒澤・鈴木選手の一騎打ちになりましたが、太田選手が激しいロングスパートをかけて2秒ほど離した所、鈴木選手が諦めずに追い上げて追い抜きスパート、それに対し太田選手もスパートをかけ返すと、一歩も引かないスパート合戦を繰り広げました。2区の争いも面白かったですが、こちらの戦いも負けずと面白かった。思わず「面白い」とつぶやいてしまいました。

結果、鈴木選手が意地を見せて前で襷を渡しましたが、太田選手は区間記録にあと5秒と迫る記録で走りきりました。素晴らしい走りだったと思います。

4区の結果は
1位:ヴィンセント(東国)60:00 区間新!
2位:太田(青学)60:35
3位:鈴木(駒澤)61:00
4位:藤本(國學)61:48
5位:吉居駿(中央)61:49
6位:佐藤(早大)62:18
7位:扇(法政)62:19
8位:嶋津(創価)62:20
9位:越(東海)62:31
10位:北村(山梨)62:46
11位:尾﨑(明治)62:48
12位:柴戸(帝京)62:52
13位:柏(東洋)63:04
14位:大野(大東)63:16
15位:石井(順大)63:46
16位:馬場(立教)64:08
17位:清水(国士)64:16
18位:鈴木(城西)64:24
OP:山田(学連)64:51
19位:新井(専修)65:46
20位:分須(日体)66:06

もっと凄い記録で走ったのが、東国のヴィンセント選手。事前の予想通り、普通に走って区間記録を大幅に更新しました。本調子ではなかったようで終盤ペースダウンはしていましたが、それでも30秒更新。正式記録でわずかに1時間切りはならなかったものの、これで2区3区4区の区間記録保持者という恐ろしい事になってしまいました。箱根駅伝の歴史に残る選手になりますね。
上位校では順大・石井選手が奮わず。前回区間2位だったのですが、調子が上がらなかったようです。順大としてはここが大きな誤算だったでしょう。前回区間賞の創価・嶋津選手は万全ではなかったようですが、なんとか粘った形でしょうか。

5区:ハイレベルな山登りではわずかな誤算も命取りに?

5区、山登りもレベルが高い争いでした。非常に見応えがあり終盤までハラハラの展開でした。
ほぼ同時にスタートした駒澤・山川選手と青学・脇田選手。脇田選手のペースが上がらないと見るや、山川選手は差をどんどん開いていきます。それ以上のペースで差を詰めてきたのが中央・阿部選手。脇田選手を抜き、さらに前を追います。ポイントで差が表示されるたび、少しずつ、少しずつ差が縮まっていて、追いつくか、逆転あるかとハラハラする展開でした。しかし、登り終盤で逆に少しずつ差が開き始めます。下りは阿部選手得意で下りで差が詰まるかも、との事でしたが、山川選手も下りで見事に切り替え、逆に差を戻してゴール。後ろから差を詰められプレッシャーがかかる中、自分の走りを見失わない見事な度胸でした。
脇田選手は、急遽走る事になって、最初どうなることかと心配させましたが、後半なんとかまとめて約2分差でゴール。しかし駒澤との争いでは、この差が致命傷になりそうです。

5区結果は

結果、駒澤大学の往路優勝。箱根制覇、3冠達成に王手をかけた格好です。

1位:駒澤大学

田澤選手が万全ではない中、それでもエース区間を守り抜き、他の選手もミスなく走ったと思います。1区は独走を一人追い、2区の3校での争い、3区の中央での争い、4区の青学との争い、5区中央との争いと、常にトップ争いに居続けました。往路は駒澤大学が常に首位争いの中心に居て、それが実った形です。
1区、円選手が素晴らしかったと思います。牽制が続く難しい展開でも焦れずに集団で力を溜め、ペースアップする人が居れば無理なく反応し、最後、明治のスパートを一人で追い引き離されても後ろを気にせず前を追い続けた姿勢が、駒澤の流れを作ったと思います。区間賞の居なかった駒澤のMVPを挙げるなら、円選手を挙げたいと思います。
他の選手も闘争心を全面に出した走りだったと思います。さすがに今年の駒澤は外さないですね。

2位:中央大学

中央大学としては100点のレースをしたのではないでしょうか。ルーキー溜池選手が区間4位と好位置で継走し、2区・吉居大和選手が区間賞! (万全ではなかったとは言え)田澤選手、近藤選手に競り勝ちました。3区・中野選手も区間賞て続き、4区・吉居駿恭選手はルーキーには今年のハイレベル4区は荷が重かったもののしっかり繋ぎ、5区阿部選手は「リスクを負って前を追う」走りを見せました。結果、30秒差と、全然分からない差で復路を迎える事になります。

3位:青山大学

青山大学も強かった! 岸本選手が往路に使えない状況ながら、4区までは素晴らしい走りだったと思います。特に、2区・近藤選手と4区・太田選手は凄かった。それだけに、5区が悔やまれます。今年の駒澤の隙のなさを考えると2分差というのはかなり大きな差になります。

4位:國學院大学

國學は万全なオーダーではなかったみたいですね。中西選手が走れない状況で、代わりに走った藤本選手は素晴らしい走りでした。ただ、少しずつ、ほんの少しずつ、3強に遅れを取り、4区終了時で2分以上の差が開いてしまいました。挽回を期待されて投入された5区・伊地知選手はかなり突っ込んで入ったものの、終盤伸びきれず、差は4分まで開いてしまいました。やっぱり山はペース配分が難しいですね。

5位:早稲田大学

今日走ったランナーについては、充分に力を発揮したと思います。1区も大きな差は開けられずに繋ぎ、2区もなんとか区間10位で粘り、強い3区以降に繋ぎました。挽回を期待された3区エース井川選手が区間2位で大きく挽回、佐藤選手、伊藤選手も上手く走りました。
ただ、本来なら往路を走るはずの鈴木主将が入っていません。復路の切り札のはずだった佐藤選手を往路につぎ込んでしまっているので、鈴木主将の状態が気になります。

6位:順天堂大学

5区・四釜選手の区間新(区間2位)の激走で6位まで持ってきましたが、誤算が多く上位争いから置いていかれる結果になってしまいました。2区でなんとか9位で耐え抜いたのですが、3区4区で上げていく事ができなかったですね。

7位:東京国際大学

ヴィンセント選手の4区区間新で大幅にジャンプアップし、往路を好位置で終える事ができました。3区までなんとか挽回可能な差で繋ぎ、大砲に託す。山もなんとか耐え抜きました。出雲・全日本の惨状を思えば、良くここまで立て直してきたと思います。

8位:法政大学

恐らく急遽入っただろう3区を除けば力を出し切ったのではないでしょうか。
1区・松永選手が区間3位と期待に応えました。2区・内田選手の区間8位はハイレベルな2区を思えばまずますでしょう。4区の扇選手も区間7位、5区細迫選手も区間10位と安定していました。3区も区間13位と言っても区間賞から1分1秒差と大崩れはしていません。もう少し上に行きたかった所でしょうが、現状の力は出せたと思います。

9位:城西大学

前回の東海大学パターンで、山で大きく捲って9位まで持ってきました。5区区間新の山本選手は見事の一言。山本選手を起用した櫛部監督の眼力も流石です。あと、地味に大きかったのは2区ルーキー斉藤選手の粘走! 誰が走っても厳しいハイレベルな2区で、区間15位ながらシードラインと40秒ほどで耐え抜きました。山に切り札が居たので、ここで挽回可能な差で保ってくれたのは大きかったです。

10位:創価大学

2区・ムルワ選手、4区・嶋津選手が期待ほど稼げなかった、といった所でしょうか。ただ、それでも高レベルで安定していた両選手、大きく貯金ができなかったもののある程度ではまとめてくれました。(創価大学のここ数年の躍進はこの両選手の活躍による部分がかなり大きかった訳で。)ただ、大崩れする所はなかった事でこの順位でした。

11位:東洋大学

5区・前田主将の激走で11位とシード目前まで引き上げてきました。どう考えても登り向きじゃない前田選手が序盤から突っ込んで入り、画面に映る度、ものすごい形相で鬼気迫る走りをしていました。正に魂の激走とも言える素晴らしい走りだったと思います。(東洋ファンは皆、泣いたんじゃないでしょうか。)
ただ、そこに至るまでは、誤算続きでした。まず1区児玉選手が出遅れ。今年の誤算はスターター児玉選手の変調で、箱根でも調子を取り戻せませんでした。石田選手は体調不良もあったそうで、区間19位と厳しい走りに。2区終了時で19位と下位に沈んでしまいます。その後、順位こそ上げるものの、下位の流れの中で区間上位では走れずシードラインまでの挽回がなかなかできない状況でした。そんな大ピンチを救ったのが前田主将の走りだったと言えるでしょう。
復路には自信を持ってるとの事、シードラインとの差も大きくはありません。何とか挽回できるでしょうか。

12位:明治大学

1区エース富田選手が区間賞、しかも終盤独走で少し貯金を作る最高のスタートでした。2区小澤選手はハイレベル2区でさすがに苦戦したものの、1区の貯金のおかげでシードラインまで12秒の位置で粘って繋ぐ事ができました。3区ルーキー森下選手が区間4位で挽回、4区尾崎選手は区間11位でしたがシード権内で山に入ったのですが。
山登りを任されたルーキー吉川選手は区間15位と苦戦、順位を落とした以上に、シードラインと2分以上の差まで開いてしまいました。せっかく良い流れできていたのですが、山は厳しいですね。

13位:東海大学

1区で大きく出遅れてしまいますが、2区・石原選手の大激走で挽回。3区4区も上手く走ってシード権内できていたのですが、ここも山で落としてしまいました。吉田選手が居れば、と思ってしまう結果ですね。

明日・復路の展望は別原稿にします。とにかく面白かったです。

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