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「殺しの烙印」「Branded To Kill」1967年 鈴木清順監督作品

 この「訳のわからない作品」を撮ったおかげで、日活を首になり、その後、復帰作を経て、大正浪漫三部作で、時代とシンクロするまで、約10年映画を撮れなかったという曰く付きの作品。
前半は普通にハードボイルドなスパイ映画なんですが、中盤ぐらいから、夢と妄想と現実が混ざり、これでは経営者も怒るだろうと思わせる清順ワールドが全開となります。
日本のスパイだからと、ご飯を炊く匂いに興奮する主人公(制作予算がないため、家電メーカーとのタイアップから発案)や部屋中蝶々の標本だらけのヒロインの部屋。
生活のために日活と契約したという割に
「娯楽映画なので、映画の文法は必要ない。時間や空間無視しても、面白ければ良い」とジム・ジャームッシュ、クゥエンテイン・タランティーノ、ウォン・カーウァイも愛したやりたい放題の世界。
日活の解雇は契約違反として、裁判を起こす訳ですが、その理由はご本人曰く、「江戸っ子の恥だから」(鈴木さんは日本橋のご出身)だそうです。
「会社に怒られましてねえ」と相変わらず飄々とニコニコしながら、独特の持論を展開する映画界の仙人でした。

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