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「天使の影」ライナー・ベルナー・ファスビンダー

80年代前半、ニュージャーマンシネマの旗手ということで日本に紹介された映画作家が、ファスビンダー、ヘルツオーク、ヴェンダースでしたが、ヘルツオークのディモニッシュな作風も好きですが、僕はやはりファスビンダー。
最近、ファスビンダー傑作選という特集で3本の映画が上映されていますが、こちらは、ライナー・ベルナー・ファスビンダーの戯曲「ゴミ、都市そして死」を、彼の盟友であるダニエル・シュミットによる映画化。もちろん、ダニエル・シュミットいえば、蓮見重彦さんなど日本の映画関係者が、“発見”したスイスの映画作家で、怪作「ラ・パロマ」は、今でもカルト的な人気ですが、そこに出演していた死者のような蒼白な表情で退廃的な雰囲気を濃厚に醸し出すイングリット・カーフェンが娼婦役、そしてそのヒモの夫として、ファスビンダーが登場します。(一時期この二人は、実際に夫婦だったそうです)
彼女に暴力をふるうヒモの夫のあまりにも露骨で卑猥な会話と娼婦たちの哲学的会話の対比、カーフェン演ずるさえない娼婦がユダヤ人の実力者の愛人となり豊かにななっていくが、実は、彼女の父は、ユダヤ人を何人虐殺したか覚えていないと話す元ナチス高官で、今は、女装してキャバレーで歌い踊り、車いすに乗り、マルクス主義を礼賛する母。
そんな聖俗、正悪という二項対立では、説明できない混然とした状況で、ナチスの爪痕がいたるところで残る戦後のドイツを描いた映画。ポスターになった写真のように、ハッとする美しい構図が随所で見られます。


#ファスビンダー #ダニエル・シュミット

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