3月のおわりに

愛ではない。
という詩集を少し前につくりました。

最近知ったんですが
わたしの好きな人がよく歌っていた歌の歌詞に
「愛ではなかった」というフレーズがありました。
ほんとうに、だから何なんですか?
という話でしかないんだけど、
というか、知らなかったんかい、という話なんですけど。
そんなこともあるんだな、と。
こういうときにふわっと心に風が吹いたりしますよね(ね)


「愛ではない」に書き下ろした詩と
そこからさらに新しく書いた詩を
あの人が生まれた3月のおわりに。






愛ではない


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ただの友達だったらよかった
何もなくたって
何気なく声をかけられるような
気付いたらそこにいて
いるとちょっとだけ楽しいみたいな
ただの友達だったら
ただの友達だったなら
ほんの少しの澱みをすくって
その透明を守れたかもしれない
その光の盾になれたかもしれない
ただの友達だったらよかった
きみが大切
遠い人


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見ないでほしい
想わないでほしい
大事なきみに
ほんの少しの影響も与えたくない
自然の摂理すら煩わしい
見つめていたい
覚えていたい
気づかれぬように
溢れるほどの気持ちを
ただわがままに


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地球が割れてしまうだろう
花も枯れてしまうだろう
水も干上がり すべてが焼かれ
なにもかもが無くなってしまうだろう

そんな力を目の当たりにしても
私は ただ
好きでいるしかできないなんて
ただ 息をのむしかできないなんて

そのはかりしれない力を持って
すべての粒子をおどらせる
躍動する命にのまれないように
どうか幸せでいて つよい、つよい人


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愛と思わぬように心を冷やす
冷やして冷やして
残った熱を
それでもそれを愛と呼ばず
愛なんかではないと言い聞かせて
走りたくても走らず
歩きたくても歩かず
落ち着け 落ち着け
愛ではない
愛なんかではない
食い尽くさぬよう
おそろしい人にならぬよう

心を冷やす 冷やし続ける
熱は消えない 愛なんかではない











3月のおわりに


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ただありがとうと言えばいいのか
ただありがとうと言っていいのか

どちらもちがう気がするのに
そうすることが正解な気もするのに
落ち着かない すわりが悪い
いったいきみはどこのだれで
わたしはいったいどこのだれなんだろう

出会ったらわかるのか
出会ったら終わってしまうのか
どこのだれだか知らないまんま
そのままに、そのままで
言葉にするありがとうは
うそみたいにするりと消えてなくなった
届かないままなくなった
ありがとうが言いたい
言えないので、言いたいのだと思う


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うれしそうな
弾むような
溢れるような
噛み締めるような
きみのその喜びを
ひとつ残らず
わたしは覚えていようと思う
祝福の夜は永遠に続く
踊り、遊び、笑う
拍手は止まない
鳴り止ませない
永遠に、永遠に


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流れるような白髪を見たとき
目尻の皺を見たとき
生命を煌めきを見つけた気持ちになって
嬉しくなって
苦しくなって
しゅわしゅわと弾けて
生まれすぎる愛おしさは
どこまで罪深いのかなんて
それは宇宙
炭酸水に溶けて
なくならない気泡
生まれて消えて
ずっとずっと なくならない気泡


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タージ・マハルの話を聞いて
愛とはなんだろうと考える時
歴史を超えて語り継がれた愛が
誰かの腕を切り落としたほどの愛が
私の身体を通り抜けて
私の思考を通り越して
あなたに届いてしまわないだろうかと
バカげた心配をしてしまいました


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きみが「天使だ」と思える人がいてよかった
きみが「天使だ」と思える人でよかった
きみの「天使だ」は特別にうれしい

「天使だ」と思える真っ直ぐな心には
見えない傷があって
さらけ出しながら
転がりながら

それでも誰かを「天使だ」なんて
そんなふうに そうやって
世の中を見ている 世界を見ている
その純度があまりにも天使だ
きみが天使だ


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慎ましやかでいることは
時に私を無意味にする気がして
透明にする気がして
ぜんぶ無いことにしたくもなるが
私のそんなくだらない
どこかの知らない誰かとの駆け引きは無視して
私の中の愛は今日も確かにここにあるのである
私を無視して、私の気持ちすら知らないふりで
いつもいつも強くここにあるのである


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揺れる前髪が眩しい やさしい
温度も感触もしらない
声が好きで 表情が好きで
ほんとうが見えなくていい
目に見えるものがやさしい
全部が やさしい
やさしくてやわらかい 泣きたい
とても好きで なんにも知らない
なにも知らず だけどやわらかく
とてもやさしく とても好き


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全然毎日思い出したりしなくていい
全然毎日考えたりしなくていい
仕事をしたり 休憩したり
その合間に ふと想ったりしなくていい

その代わりに
毎日思い出し 毎日考え
仕事や休憩の合間に
ふと想ったりさせてほしい

生き甲斐にはしない
だから生き甲斐にはしないで
生きたり死んだりしないで
ずっとずっと 無関係でおどりましょう
約束をありがとう
お元気で 愛しています また会う日まで


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ダメダメだ 厄年だ
コーヒーを溢してパソコンを壊した
風邪を引いた挙句に副鼻腔炎になった
本にした詩集のデータも消えて無くなった
私は愛を証明できない


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この気持ちが尊敬と
堂々と言えたらよかった
美味しそうなご飯を見て
めぐって たどって
恋しくなって
この気持ちを尊敬と言いたかった
ただただ 好きだという
それだけの気持ちで
そんなまっさらなもので
箸にも棒にも
何にもならずに
いまは ただただ
持て余して泣いた


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大きな愛とあたたかな応援を
送ってあげられているだろうか
この知らせを告げられる中に
私は含まれているのだろうか

服務を全うし、元気な姿で復帰する日まで
その言葉に滲む想いがあったとしても
奥歯を噛み締める
何があっても 何がなくても
私も変わるだろう
変わった姿で また愛せれば

それが世界の希望となるだろうか
今日は眠ろう
とにかく眠ろう
おやすみなさい
愛しています
泣かないように、おやすみなさい


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待つのが好きだ
会えないのが好きだ
音沙汰がないのが好きだ
勝手に暮らして
勝手に頑張って
勝手に泣いたり笑ったりもして
それぞれがそれぞれに生きているのに
確実に好きだと思わせるきみが好きだ
たくさんの水をやる
今日も呼吸する
空は青く、夜は眠い
早く会いたい、この時間も悪くない


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3月のおわりに
お元気ですかと言いたい
寒い雨の日に
たくさん眠れましたかと言いたい
晴れて眩しい日に
お昼は食べましたかと言いたい
成長したり
学んだり
頑張ったり
そんなことは少し忘れて
肩の荷があるならおろして
この3月のおわりに
ただ会いたいと言いたい




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