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小説

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書いた小説まとめ。
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#冬

初恋、失って、失わなくて。

こちらの企画に参加させていただきます。3月14日まで募集中だそうです。 ❄️ 日和は、初恋と言うドラマを見ながら、自分の初恋にタイムトラベルする。一軒家の玄関先では少しでも暖かさを求めたデブ猫が日向で寛いでいる。 ◇ 思い返せば、小学生の頃、なんであんな奴の事が好きだったのか分からない。 日和は虎太郎のことが六年間好きだった。 虎太郎は日和たちが熱狂していたアイドルとは真逆の容姿をしていた。 髪は丸刈りで、そのくせ少し髪が伸びてきたら必ず後頭部に寝癖をつけて登校

冬の海(ショートショート)

これでやっと終わる。眼前には冬の海。波が岩壁に幾度も砕かれている。人をひとり殺すたびに俺も、ああやって砕かれていたんだろう。殺していたときは大切な人を守ることだけを考えていたから気づかなかった。だけどもう疲れた。こんな俺をも想ってくれる彼女も母さんも妹もいるのに贅沢な奴だなんて言われるんだろうな。 でもどうしようもないんだ。 後戻りできないと気づいた頃、俺の心は執念、怨念、増悪まみれの青の炎で包まれてしまっていたんだ。 この青の炎を消すことができるのは一つだけ。光だけ。

真っ赤な手袋【才の祭】

人生って幸せと不幸のバランスが上手く調節されているのかもしれない。私の人生、19歳までは常に幸せの自己記録更新だった。 小学4年から想いを寄せていた1個上の先輩、舜くんと中学1年の時に付き合い始めた。付き合った1年目の誕生日にくれた真っ赤なミトンの手袋。白猫の刺繡がされている手袋。可愛いくって、嬉しくって、舜くんに 「なんでこの絵柄にしてくれたの」 って聞いたら 「この前一緒に帰ってた時、黒い猫の絵が描いてあるトラック見て、『黒猫も可愛いけど、私は白派かな』って言って

助けた亀、託す。

◇はじめに この小説は30分程の長さです。そしてこの小説は丸武群さんに紹介して頂いた、フェルマーの最終定理という本の影響を大きく受けています。それだけではなく皆が紹介してくれた本から得たものが少なからず反映されています。読むことも書くことも1人でするものですが、1人では決して書けなかった作品であることだけは事実です。またしても僕は多くの人から大きな恩を頂いたのです。その恩をこの小説を通じて少しだけでもお返しできたら幸いです。 『助けた亀、託す。』サンタクロースが子供達に無