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小説

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2021年2月の記事一覧

陽光底光

○春光に包まれた季節頃、コイン精米所が大活躍しているような田舎に伸二は生を受けた。ごくごく一般的な家庭に迎えられて。(大人になってこの一般的な家庭というのが、どれだけ恵まれた環境なのかに気がつくのだが。)両親がいて、祖父母がいて、兄弟もいた。家の近くの小学校、中学校に通った。高校は進学校に通い、そのまま関西の大学に進学し、無難な会社に入社した。ごくごく平凡な青年だ。 そんな伸二の人生も、かの太宰治程では無いが、女と共にあった。 これは伸二の人生に現れた女たちとの物語であり

常連の彼女

伸二は田舎から大学に通うためにこの大都会に上京してきた。ワンルームのアパートに住んでいる。身長も体格も平均値な平凡な男だ。顔は童顔なおかげで、初対面の相手ともすぐに仲良くなれる特性を持っている。 そんな伸二の大学生活はというと、他の大学生と同じように、単位を落とさない程度に授業に参加し、それ以外はバイトとサークルと遊びに費やしていた。 1年生の時に付き合った女に3年生の時に振られた。 その失恋のショックを補うために、煙草を吸い始めた。伸二にとって煙草は実家の香りだった。