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古典派奏法はレオタード姿??

今回は、時代別の「奏法の違い」について考えてみたいと思います。

以前もお話しましたが、楽器はその時代の製造技術によって現代まで徐々に進化を遂げ、作曲技法もそれに伴って進んできました。現代のピアノはベートーベンの時代以降に出来上がってきましたが、それ以前のものは、オーケストレーションや響きと響きを空間で混ぜ合わせる技術が、まだありませんでした。当時のピアノは音の減衰が速すぎて、空間に残された残響に新しい響きを混ぜ合わせることが出来ません。

ただ、それは逆の視点から見れば、古典派作品には欠かせない、とても素朴な味わいになります。一つ一つの粒立ちが、アナログの良さというか樹木を連想させる懐かしい音色です。

時代それぞれのテイストを実現する演奏には、その時代の楽器の性能を超越する、未来のテクニックはその時代には存在しないので、あくまでもその領域を守る、という視点が必要ではないでしょうか。

古典派奏法は、ペダルを最小限に、音の長さは譜面の要求を厳格に再現し、手の甲から手首、腕、肘まで一体化した動きが必要です。

モーツァルトの時代などにはピアノがありません。ダンパーペダルがありません。響きを空間で重ねる概念も、当時の楽器を使って作られた曲には存在しません。そして、音のダイナミックスを付けるためには弾いた先から消えてしまう音に対してトリルという工夫が発達しました。手のひらの強靱なバネを使って明瞭な滑舌の良さをアピールしてください!古典派奏法のチャームポイントですね。

奏者の技術が最も目立つ古典派奏法は、ぴったりしたレオタードを着て街を歩いているようなものです! 身体の輪郭が全部分かっちゃって隠しようもない感じです。音が少なくて易しい、なんて思ってるうちはまだまだ弾けていないかも・・・ね。

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