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感情移入すると情感を伝えられない?!

今回は「演奏と奏者の精神状態との関係性について」です。

楽曲の曲想は、演奏に当たってどのように創り上げれば良いのでしょうか?よく先生に、"情感を込めて・・・"って言われてきませんでしたか? 

悲しいフレーズは奏者も悲しみに暮れて、楽しいところは共に喜びに溢れて、ということでしょうか?奏者の一心不乱な曲想への感情移入が、本当に、聴き手にシンパシーを与えるでしょうか??

「曲想を伝える」ということは、例えば、悲しい曲想で「奏者も一緒に悲しむ」のではなく、「どうすれば聴き手に悲しみが伝わるのか」を追求した極めて冷静で緻密な技術で実現します。奏者が感情的になって、コントロール不能に陥ると、聴き手にはむしろ情感を伝えられません。

そのためには、「悲しみを伝える技術」が必要です。"聴こえ方"を徹底的に研究した、高い技術に裏打ちされた表現こそが、聴き手の心に届く力を備えています。奏者本人が曲想に溺れ、悲しみに打ちひしがれていては、腹筋も使えず、お腹も折れて身体に芯が無くなってしまいます。もう悲しくってグチャグチャなピアノです。これでは、とても満足な演奏が出来ませんね(笑)

「伝える」ということは、あくまでも、どのような表現ならばそれが聴き手に伝わるのかをデザインするような意識、「奏法の構成を組み立てる」とでも言うのでしょうか。

それには、自分の演奏を録音して聴いてみる事を是非お勧めします。ピアノは音量の幅が大きい楽器ですから、録音物は、マックスとミニマムの音量を切り捨てて真ん中の部分しか入りませんが、自分の演奏から作曲者が要求した曲想が伝わってくるかどうかは、確認出来ると思います。

そして、練習時の精神状態も出来るだけニュートラルに保てるように、平常心に整える自己管理がとても重要です。電話には出ない、メールも見ない、アポ無しの来客は応対しないなど、外界からの刺激は練習が終わるまではシャットアウトするのが得策ですね。

ちなみに、人の持つ様々な感情の中で特に"練習の邪魔"になるのは、"怒りの感情"だと筆者は経験しています。滅多にありませんが、何かにとても怒っていて怒りに震える状態だと、身体が自然とワナワナとうわずってしまって、腕の動きが制御出来ません。「演奏ベクトル」が全然作れない、お手上げ状態!でした(笑)

伝える技術が大切なのは、ピアノだけじゃありませんね。思っていること、何だかうまく伝えられなくて・・・

貴重なお時間を頂き、有り難うございます。今年も残すところあと僅かとなりました。皆様、どうぞよいお年をお迎えください。


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