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電車での居眠りにおけるフォルテ・ピアノ奏法の考察

さて、初回のテーマは、「演奏に必要な脱力」ということですが、これは簡単なようで実は大変高い技術です。このテクニックがクリアされているかどうかが上級者からセミプロ(音大ピアノ科卒業以上レベル)昇段への大事なポイントとなります。
多分これはどの分野にも当てはまる事だと思いますが、“肝心なときこそ余計な力を抜く”というのは、高度な技術の完成を目指す上でとても重要なポイントだと思われます(人間関係もそうかもしれませんね…)。

人間はとかく、頑張ると全身に力を込めて身構えます。ここぞというときに逆に脱力をするなんて、どうしたら良いかわからない??掴み所のない技術です。 
力は、入れるのは簡単ですが、不要に力んだ力を抜けと言われても、それを抜くのに余計に力入っちゃいそうです(笑)脱力なんて容易じゃありません。

「電車で居眠り、つい爆睡して隣の人に寄っかかってしまいました。重くてごめんなさい…」

これがピアノ演奏におけるフォルテ(大きな音)の状態です。つまり、全身の力が抜けて自分の体重(重心)がお隣の方へ移動した状態です。
自分のエネルギーやパワーを全て楽器に伝えるためには、その力の通り道を作る必要があります。そしてその通り道である腕の弛緩がうまくいかないと、パワーは身体の外へ出ていけず、楽器には一向に伝わりません。込めた馬鹿力の割には、思いのほかショボい音量になってしまいます。

大きな音を出すには、自分の重心(体重)をピアノに預けなければなりません。そのためには、脱力してそれを実現します。
弛緩がうまくいくと、しばしば弦を切ったりすることもあるほどです。高音部の細いものだけでなく、力を込めても絶対に切れない、低音部の極太の巻き線までも切ってしまいます。

それに対して、
「電車で居眠り、ついウトウトと…。でも完全には眠ってないので、寄っかかりそうになると気がついて、あっごめんなさい、あっごめんなさい、寄っかかっちゃいけない、いけない。」

お隣の方は寄りかかられてないので重くありません。
これがピアノ演奏におけるピアノ(小さい音)の状態です。自分の体重(重心)が楽器に移動しないように力を使ってキープします。もし力を抜いてしまうと、思ったよりもずっと大きな音が出てしまいます。“あっ、出ちゃった…”って感じで、全然小さい音になんかなりません。
小さな音にするにはピアノに寄りかかってはいけません。重さを預けてはだめです。それには全身の筋肉で重心を身体の外へ出ないように内在させます。どこかが弛んでいてはだめです。

つまり、フォルテは力を抜いて脱力、ピアノは筋肉でキープする、ということになります。これが逆になってしまっている(大きな音は最大限の力を入れて、小さな音は思いっきり力を抜いて、という風に)場合が多く見られますが、これでは、その先に待ち構えているたくさんの難曲をいろんな意味で弾きこなせなくなってしまいますね。

大きな音には力を入れない、小さな音には力が必要、これ鉄則ですね。

脱力を支える諸条件にからむテクニック諸々については、後の回でお話していきたいと思います。





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