2024.7月観た映画、読んだ本、行ったイベント
1 観た映画
●『1.4ビリオン』
配信にて。もともと気になっていた映画だった。浅尾慶一郎という議員のドキュメンタリー。なんで劇場公開したんだろう、というクオリティ。『なぜ君』や『香川一区』に触発をされて作ったんだろう。しかし選挙や政治を描いてこんなに面白くなくなるなんて…という感じ。字幕やナレーションの日本語もところどころおかしく、人があまりかかわっていない感じがありありとわかる。
主人公の浅尾を「頭がよくて能力はあるけどちょっと不器用なやつ」という演出で編集をし、そんな浅尾の力を自民党が必要として、必死で選挙で支援をして当選を勝ち取った、という感じの映画。
面白くなさ過ぎてプロパガンダにすらなっていないところがお笑いである。
●『アメリカン・フィクション』
配信にて。黒人小説家が「黒人らしい小説ではない」ので売れない。世の中ではリアルな物語を求めている。
「何がリアルだよ」と思いながら戯れに刺激だけがある、黒人の貧しい暮らし、ドラッグ、犯罪が横溢した世界観を描くとこれが大ヒットして…という話。己の信じている才能と、己が売れるものを作るときに使う能力の乖離の悲しさよ。まあしかしそれでいいじゃんね、とも思う。そういうもんじゃんね、って。
●『アイ・アムア・コメディアン』
渋谷ユーロスペースにて。ウーマンラッシュアワー村本氏のドキュメンタリー。スタンドアップコメディに傾倒し、渡米計画を進める氏に密着をしている。むせかえるほどの村本氏の自意識に「ひあ」となりながら見続ける。最後に拍手がわっと起こるような芸で、あんまり興味のない芸だった。氏の芸は無駄に早口でよく噛む。わりに本番前に酒などを飲んでおり、ストイックなのかなんなのかよくわからない。もしかしたら酒が手放せない体なのかもしれない、と思って心配になる。また、芸人のドキュメンタリーの割に芸人仲間たちの姿も、相方と、アメリカのコメディアン数名しか絡んでいる姿は見えず。孤独を感じさせる。でもなんだか孤独に色気がないんだよなあ。
そう、コメディアンから立ち上る妖艶な色気、凄絶な魅力、といったことは画面からはまったく伝わってこず、それに対する撞着のみがスクリーンを埋めていた。
●『ゴールデンカムイ』
配信にて。こういう大作映画を観るのは久しぶりかもしれない。実にどうでもいい映画であった。何の感動も心の揺れも生まない映画。恰好がいい場面も全然ない。感動的な場面で感動的な音楽が流れて「ほら」なんて言われなくても感動したかったらこっちで感動するわいふざけやがって。というような気持が折り重なって観終わるころには夜を憎むこと甚だしい。
●『方舟にのって~イエスの方舟45年目の真実~』
ポレポレ東中野にて。イエスの方舟についてのドキュメンタリーを観る。若い監督のようで、市川崑→庵野秀明の流れのテロップ使いをしている。ちょっとやりすぎ感があった。『14歳の栞』という中学二年生という年代にとにかく密着したドキュメンタリーも庵野秀明感がすごかった覚えが。ドキュメンタリーに劇性を付与する際の庵野演出模倣の使い勝手の良さ。イエスの方舟の話自体は大変面白かった。バッシングを受けて共同生活を続ける。リーダーと女性たち、リーダーは死に、流れ流れて今現在は女たちで共同生活を送りながら全メンバー十数人で水商売を運営しながら暮らし続けている。という。ユートピアに見えた。犬なんかも皆で二匹飼っていて。あの世界がユートピアに見えるというのは疲れているってことなのかな
●『ブラックベリー』
配信にて。ブラックベリーというスマホの大本を作った人々の話。これはなかなか面白かった。よくあるスタートアップの栄枯盛衰もの。主人公の能力を見込んだ営業マンが会社の業績を伸ばしていく。そんな中で主人公の昔からの仲間であった男はその能力のなさで会社についていけなくなる。その時にその友にどのような扱いをするか。また、能力のなさが露呈した側はどのようにふるまうのか。「変わってしまった」って思うことも言われることもある人生になってしまったからか、そういう部分にぐっときた。
●『非常宣言』
配信にて。あれ、ソン・ガンホが出ている、と思って観る。飛行機内でパンデミックバイオテロが起こる話。日本が緊急着陸要請を拒否して自衛隊に民間機を攻撃させる場面などが熱い。日本は韓国からよほどタカ派に観られているのかもしれない。所謂「サイコ野郎」のキャラクター設定の乱暴さや、よくないクサさ、設定の不徹底などががあって全体的に受け付けないが、ジャンクさによって最後まで見ることはできた。
大臣役の人が加藤鮎子にそっくりであった。
2 読んだ本
●『不屈 松方弘樹 時代劇への遺言』
春日太一著。松方弘樹の殺陣が好きなので読む。松方弘樹が意図して殺陣に「静」の部分を作っていた、というのは講談にも参考になる。がちゃがちゃして間がない講談ってのはどうにもならない。たとえば殺陣にも感情を感じさせる時間なんかがあると一気に迫力が増す。今度講談をやるときに使いたい技術だ。あとは着物の着方。少し足をクロスして着付けをするときれいになるとか。
●『戦後噺家裏街道』
神保喜利彦著。
裏街道というタイトルの通り、噺家のうち、栄光の生涯を送れなかったものの列伝。
とはいっても一回売れたりしている人が多く、ほんとうにどうしようもなかったひとはあんまり載っていない。いや、もしかすると本当にどうしようもない人たちは昭和のうちは業界から放擲されていたのかもしれぬ。
いい芸人人生になりそうなところをうまくいかなかった例がたくさん乗っているのは「ありがたい』という気持ち。どのようにして人はチャンスの前髪を掴み損ねるのか。
ただ意外と「末期哀れ」ではないのが印象的。売れかけて売れなかった人なんて一番哀れになりそうなものだけれど、子どもたちに養われて楽隠居みたいな人けっこう多い。
あと、正岡容とか大西信夫とかがそういう人にけっこうかまったりしていたり、談志が芸談を残していたりしてなんだろう、本物の裏芸人はやっぱり載っていないんだろうな。
しかし今の芸界を見渡すとそういう本物の裏街道、いや、街道ですらない、市道村道、いや、あぜ道歩きの芸人のなんと多いことか。歴史に残らずエピソードも残らず消えていく芸人のなんと多いことか。
僕はいったいどうなるんだ。街道には出られそうにない。裏であろうと。こうなったら道なき道でも獣道でも突き進んでやろうと思う。変な講談師がいた、くらいには50年後の好事家に知られていたいものである。
ひとまずnote筆まめ講談師ってことでどうですか、好事家連よ。
このnoteというプラットフォームが永年続いたら強いかもしれん。株でも買おうか、noteの。
●『狭小住宅』
新庄耕著
不動産営業マンという僕から一番遠い人種の物語。人は不動産営業マンに生まれるのではない、不動産営業マンになるのだ。という小説。まとめサイトの自分語りスレを読んでいるかのような感じ。面白いけど。意外とドラマにしたら映えそうな内容。
●『トランスジェンダー入門』
周司あきら 高井ゆと里著
面白い企画をやっていた人が勧めていたので読む。もともとトランスジェンダーのことはまったくわかっていなかったが、これを読んで少しわかって、やっぱりそれでもわからない、という感じ。しかしマイノリティの問題をどう考えていくか。マイノリティの問題を考えるときに、マイノリティの権利を認めていく方向に動かない人たちの気持を類推するのに使える本であったと思う。そしてマイノリティが権利を獲得するには、武装蜂起路線でなければ民主主義に拠るほかなく。民主主義に拠る、ということは現在問題に対して関心をもっていない人や、変化を望まない人に態度を翻させることが必要になるわけで。
これに関してはちょっと人と話をして僕の心中をまとめていかなれば、という気持ち。
いい刺激をもらった本であった・
3 行ったイベント
●『お笑いの向こう側』
渋谷のユーロスペース。毎日新聞主催。
三拍子、にぼしいわし、マシンガンズの三組。思い立って行ったので当日だったが、満席気配大変盛況。10分の長尺漫才を観ることができて満足。10分の漫才だとまくらみたいな部分が付くという形になる。そう考えるとまくらなしで爆笑が起こる漫才というフォーマットはすごい。講談でまくらなしってなるとちょっと厳しいもんなあ。
4 そのほか
現在追いかけているドラマは『虎に翼』と『新宿野戦病院』。
ネットフリックスで韓国ドラマ『旋風』を。大統領に首相が毒を盛るところから始まる。吹き替えで見たのだけれど、ちゃんと悪役に女性が配されているのがよかった。月末に会った『加藤の乱』講談会で、この『旋風』の濃い演技に影響を受けてしまっていた気がする。
同じくネットフリックスの『地面師たち』は爆裂に面白かった。すべてを一気見。企業の名前が割と実名なところにネットフリックスの強みを感じる。畠山理仁さん出演で、都知事選関連の配信をいくつか購入して観る。観ていたおかげで、畠山さんとご一緒させていただいたイベントで独自性をもって話を聴くことができたと思う。都知事選の政見放送もやたら見た。
映画7本、本4冊。意外と本を読まなかった日々であった。
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