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【3分解説】インフレの何が問題なのか

インフレとは何か、なぜ起きるのか

・インフレとは、モノの値段、すなわち物価が上昇することです。
・日本はバブルが崩壊してから、長年にわたりインフレを経験してきませんでしたが、足元では、新型コロナを契機としてインフレを身の回りで実感されている方も多いのではないでしょうか。ガソリン価格、パンやスナック菓子の価格は大幅に上昇しています。
・なぜインフレが起きるかと言うと、需要の増加に供給の増加が追いつかないからです。
・なぜ、供給が追いつかないかと言うと、基本的には、需要が増加したという現象に企業が気づき、供給を増やすのはタイムラグが生じるためです。
・そもそも、経済が成長している国であれば、需要もまた継続的に増えているため、インフレは常に発生していくものです。
・企業の収益拡大→賃金上昇→物価上昇→企業の収益拡大・・・の好循環が続いていきます。
・日本は物価が低迷して久しいので実感は乏しいですが、高度経済成長の日本がそうでした。
・経済成長の大きな要因は人口増加なので、高度経済成長期の日本のように、人口増加がトレンドとして発生している国ではインフレも続いていく傾向にあります。
・人口が増加する多くの新興国はインフレが続いていますし、先進国でも人口が増加するアメリカでは継続しています。
・逆に言えば、人口減少が続く日本のような国では、経済成長とインフレは期待しづらいといえます。
・ただ、こうしたトレンドとは別に、一時的な変動要因(サイクル)によって物価は変動します。
・一時的な変動要因は、戦争であったり、今回の新型コロナのような現象であったりします。
・第二次世界大戦後の日本においては、戦争の空襲で生産能力が激減した中で鉄鋼や石炭産業に大量の資金を融資した結果、需給の不均衡が起き1949年までに消費者物価は100倍に膨らんだようです。
・こうしたインフレを適切な軌道に誘導するのが中央銀行の役割です。
・中央銀行は各国に設置されている、その国の通貨(銀行券)を発行する銀行であり、民間銀行に対し資金を融通する銀行の銀行です。中央銀行は民間銀行に融通する資金を通した政策(金融政策)により、物価の安定に責任を負っている政府の組織です。
・ただ、国によって違いもあり、例えば米国の中央銀行であるFRBは、物価の安定だけでなく、雇用の最大化にも責任を負っています。

何が問題なのか

・インフレの何が問題なのかというと、景気が良くない=賃金が上がらない中で物価が上昇すると、実質賃金が下がるので生活が厳しくなってしまいます(スタグフレーション)。
・一方で、インフレにならないと、企業は収入が増えないので、賃金も上がらない、ということになってしまいます。ただ、さっき確認した通り、単にインフレになってもダメで、経済が成長しないと一時的な現象で終わることになります。
・また、インフレ自体というより、インフレを抑制するために、中央銀行が過度に金融引き締めをしてしまうと、急速に景気が悪化する恐れがあります。
・バブル経済の際の日本があてはまります。1985年のプラザ合意により、ドル高を抑制するために各国が協調して外国為替市場でドルを売り自国通貨を買う介入をすることになりましたが、今後は逆に円高が進んでしまいました。
・そこで、日本銀行は民間銀行に貸し付ける金利(公定歩合)を引き下げ、市中に出回るお金を増やす金融緩和を行うことで円高を解消しようとしました。
・その結果、銀行から安い金利でお金を借りて、土地への投資を行う企業・個人が増加し、土地価格は実態以上の価格に高騰していきました。
・この価格高騰を抑制するために、日本銀行は銀行に土地目的の融資額を減らすよう指導(総量規制)を行い公定歩合も引き上げました。
・土地価格は逆に暴落し、価格の上昇を見込んで土地を保有していた企業は借金が返せず倒産し、不良債権が増えた銀行の経営も悪化する急激な景気悪化が起こりました。
・ようするにやり過ぎちゃったわけですね。銀行の貸し出し先に直接口出すのは、ちょっとコミュニケーションとして乱暴すぎますよね。

インフレは誰がどうコントロールすればいいのか

・インフレであっても、賃金の上昇を前提として、インフレもそのペースを上回らない範囲で伸びれば、経済も持続的に成長できます。
・こうしたちょうどいいインフレのペースにするためには、中央銀行が金利を引き上げて需要をマイルドにする必要があります。
・金利が引き上がると、企業は資金調達のコストが増えますので、資金調達を控えます。結果、投資を抑制するようになり、企業は投資をしないと収益が伸びないので、賃金も増えません。結果としてやはり需要も減ることになります。
・ただ、この引き締めペースが行き過ぎると、過度に投資が抑制され、景気が悪化してしまうことになります。
・ようするに、インフレは中央銀行のさじ加減が重要であるということです。中央銀行の動向を確認することは、インフレの先行きを占う上で必ず確認しなければいけないというわけです。

足元のインフレはどう見れば良いのか

・新型コロナ下で、需要とは関係なく供給が追いつかない状況(工場の生産停止、物流施設が機能不全)が発生し、インフレが急速に進行しました。
・新型コロナで当初の行動制限で大幅に抑制された需要の反動減に加えて、景気対策で各国が大型財政政策を実行したので、需要が想定外に増えてしまったのです。
・インフレを抑制するためにFRBが金利を引き上げようとしていますが、過去のバブル期の日本のように、今後は過度に景気が悪化する可能性があります。
・また、米国が金利を引き上げることで、景気悪化の懸念から新興国から資金が先進国に戻る恐れもあります。実際に新興国の景気悪化が悪化すれば、景気悪化の波が世界中に広がる可能性もあります。
・需要を冷え込ませるような事象(米中対立、ウクライナへのロシアによる軍事侵攻)の恐れもあります。
・ただ、新型コロナ含めて、こうした足元の現象は需要と供給の双方で変動を起こす一時的なもの(サイクル)といえます。
・政府、中央銀行、民間がどう立ち回り、一時的な変動がどれだけ続くのか、いつころ元のトレンドに回帰していくのか、見極めることが重要といえます。

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