【3分解説】サイクル投資①

・「【3分解説】株価サイクルとその向き合い方」では、株価サイクルが決まる仕組みと、どのように向き合うべきかをご説明しました。

・ここでは、サイクルに投資する、という観点から実際にどういった先に投資すればいいのか、という点についてご説明します。
・結論から言うと、個別銘柄ではなく、特定の地域・業種に連動するETFへの投資をとりあげます。

・サイクルに応じて投資する方法は、もちろん個別銘柄でもいいわけですが、個別銘柄の場合、企業特有の要因(経営陣のガバナンス、大株主の意向、、、)により材料視されるイベントが発生し、株価は大きく変動する可能性があります。
・個別銘柄については、景気サイクル・企業利益サイクルに準じた要因以外のノイズによる株価変動が影響が大きいため、投資先に起こるイベントを詳細にモニタリングする必要があります。
・投資先が増えるほどこうしたモニタリングに手間がかかる訳ですので、詳細な分析で成果が上がれば、やりがいはあるかもしれませんが、少々個人投資家の手には余ると思います。

・それでは、なぜETFかというと、これらは国や業種といったテーマ毎の銘柄の集合です。集合の中では、個別銘柄に固有の株価変動の影響は相対的に小さくなり、景気サイクル・企業利益サイクルに準じた投資がやりやすい、と言えます。
・同様に銘柄の集合という意味では投信もあり、それぞれ一長一短あるのですが、ETFが通常の株式同様、市場が開いていればいつでも売り買いできるのに対して、投信は売り買いのタイミングが1日に1回しかないため、場中の大きな変動に備える(近年ではブレグジット、米大統領選など)という意味では、ETFの運用に慣れておいたほうが良いといえます。

・どのようなETFが対象になるかというと、何らかのインデックス(S&P500、TOPIXなど)に準じた運用を行う先となります。
・ETFの運用スタイルには、大きく分けて、アクティブ運用とパッシブ運用があり、アクティブ運用はインデックスよりもリターンを稼ぐことを目的とする分、銘柄選択に見合う手数料も多くとりますが、パッシブ運用はインデックスに沿った運用を目的としているので、銘柄選択はほぼ自動で決まるため手数料も低く抑えられています。
・後者のパッシブ運用の場合、規模の大きな資産運用会社ほど有利になりますので、大手の会社のものを利用したほうが手数料を抑えることができますし、運用内容も対象インデックスにより近いものが再現されています。
・TOPIXのような国内株式市場の運用はともかく、海外の株式市場の運用であれば、海外の大手運用会社のETFのほうが手数料も低く、よりインデックスに沿った運用になっています。例えば、海外の最大手であるブラックロックは運用資産規模は1,000兆円超ですが、国内最大手の野村アセットで60兆円程度と、象と蟻のような状況です。
・というのも、インデックス運用の場合手数料が小さくなり、運用会社の身入りが小さくなりますので、逆にその分規模を大きくしないと食っていけない、という事情もあるのです。
・あまり日本では馴染みはないですが、先ほどのブラックロック、バンガード、ステートストリートといった米国の運用会社のETFが投資候補になります。

・じゃあETFでどこに投資すればいいのか、ということですが、①資本市場が整備された国の上場株式、②企業利益が長期的に成長が見込まれる業種・テーマといえます。順にご説明します。
・①の観点からは米国、欧州、日本、中国になります。
・そもそも、以下の「【3分解説】株価サイクルに影響を与えるサイクル①」でご説明した通り、経済が長期的に成長する条件は、出生率と生産性の伸び、の2つでした。

・こう考えると、出生率も高く、生産性の伸びの余地も期待できる新興国が良いのではないか、となりそうですが、こうした地域の成長自体は現地の企業に投資をしなくても、現地で事業展開をする先進国企業に投資すればその成長はリターンとして取り込むことができるのです。日本含めて国内市場の成長鈍化に直面する先進国企業は、海外進出を積極的に進めています。

・また、新興国が成長しても必ずしも先進国のような水準まで追いつくかは難しい点もあります。
・経済発展の段階としては、安価な労働力を活かせて投資もそんなに必要ない食品や衣料など軽工業から発展し、獲得した外貨で①電気水道・道路港湾といった社会インフラの整備と、②就学支援等の労働者のスキル向上、③資本市場の整備による対内投資の促進、といった条件がうまく揃うことで、重工業やより高度な産業に発展して国民も豊かになります。逆に言えば豊かな国民はそれ見合いの賃金を求めますが、賃金上昇はコスト上昇を通じて企業の競争力を削ぐことになりますから、産業の高度化が頭打ちになってしまします。
・では、外需の代わりに内需が牽引するかというと、多くの新興国の場合、民主主義国家であっても、政府関連や財閥など特定の層に富が集中する傾向にありますので、中間層が育ちにくい特徴があります。
・その国の権力層と富裕層は一致していますので、自発的に富を分散する政策はなかなか取りづらいと言えます。
・富を分散させるために、敗戦を機に、かつての日本で行なった農地改革や財閥解体といったようなショック療法が必要ですが、上記の背景から難しいでしょう。

・また、新興国の企業利益が集合として成長するとしても、投資が必ずしもリターンを生むとは限りません。というのも、その国の資本市場が先進国並みに十分に整備されるかは不透明だからです。
・例えば、先進国で上場する企業であれば、株主に好ましくない資本政策(成長の見通しもないのに増資して既存株主の持分を希薄化する)を行えば当然批判を受けますので、実施されることは少ないです。ですが、資本市場が十分に整備されていない場合、増資すれども成長につながらず、といったように持分の希薄化の効果が本来の成長分を上回る可能性があります。
・新興国において株主にとって好ましい資本市場整備がなされるかをモニタリングすることは非常に手間といえるでしょう。

・以上から、投資する地域としては、資本市場が整備された米国、中国、日本、欧州が候補と言えます。
・長くなりましたので、②企業利益が長期的に成長が見込まれる業種・テーマについては、以下で続きをご説明します。


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