ナイロビで”融合”を感じた

ケニアの首都ナイロビへ行って、スラム街からビジネス街へと足を運んできたので、その様子をお伝えしようと思います。

そもそもケニアに来た大きな目的はナクルという地域にて活動をするためだったのですが、せっかくケニアを訪れるのならば発展している側面も見てみたいと思ったこと、また知り合いの方がナイロビを案内してくれることになったことがきっかけで首都のナイロビを観光することになりました。

まるで別世界。

ナイロビはエリアごとによって、町の雰囲気がかなり異なります。スラム街が広がる地域、富裕層が集まる地域、機関が集まる地域。それぞれが隣り合わせに存在しているのに、一度エリアを跨ぐとまるで違う世界が広がっています。
私は知り合いの方に車でそれぞれのエリアを横断する形で案内してもらいました。彼の住む中級住宅街は立派なマンションが並んでいました。思っていたよりも立派な建物であって驚きでした。そこから車で10分程走ると、徐々に質素な景色へと変化してきました。コンクリートの道路から土の道路へと、高層ビルから屋台や露店へと。「ここがスラム街だよ。」と、町の有様の変化に慣れた頃には、気付けばいわゆるスラム街という場所に踏み込んでいました。

最先端技術と100年前の世界の融合。

道路の両端にはトタンに覆われた箱のようなお家が並んでいました。道端では商人の売るモノや屋台の光景が広がっていて。道路はコンクリートに覆われておらずガタガタで、ゴミも散らかっていました。まるで100年前の世界のような、家とは言い難い原始的な印象を受けました。

今回はスラム街を車で見て周るだけで実際に歩けなかったのですが、それだけでも感じることは沢山ありました。どうやって生計を立てているのだろう、彼らは幸せに暮らしているのだろうか、と。
しかし決してマイナスな感情だけではありませんでした。犯罪が起きる、怖い場所、と以前はスラム街に対してこのようなイメージしか持っておりませんでしたが、むしろそこには、思いの外生き生きとした人たちの生活が在ったのです。
道端で遊ぶ子どもたちの姿や、立派なカバンや服を身にまとう人々の姿があり、危険な雰囲気は感じない程でした。そして驚いたことが、彼らの殆どが携帯電話を持っており、日常に欠かせないものだということです。というのもM-PESA(エムペサ)というモバイル送金システムがケニア全土で使われており、彼らにとって必需品として機能しているのです。携帯電話のショートメッセージを使って送金する人と受け取る人が代理店を通してお金のやりとりをする仕組みです。M-PESAを使うことで携帯があれば買い物ができます。そして使用できる場所は多岐に及びます。例えば、スーパーマーケットやガソリンスタンド、バー、家の電気代に。今の日本でも電子決済サービスはあまり流行っていないと感じますが、ケニアでは10年前の2007年から開始したサービスだそうです。「低所得者をターゲットとしたビジネスの在り方って画期的で素晴らしいですね。」と話しながら。低所得者向けのサービスが開発されたのも、大きなスラム街を抱えるケニアという国だからこそであるのだなと感じました。

不自由のない生活。

そんなスラム街から再び車を走らせて5分ほどで、富裕層エリアへ。住宅だけでなくスーパーやレストラン、ホテルといった商業施設が多くありました。

食材を買うために実際にショッピングモールに行きました。食材の豊富さについても他のお店についても充実しており、ここは日本かな、と思うほど不自由さを感じませんでした。ただ個人的に驚いたのが、モノの価格が日本とあまり変わらないことでした。果物はケニアの方が安い、などやはりものによっては違うけれど、多くの場面では物価は高かったため日本の金銭感覚で買い物をしました。

食事も美味しく食べれました。野菜や魚も食べましたが、炭水化物やお肉が多く塩味が濃い料理が多かったです。手で取って食べるスタイルは初めてだったので抵抗感を感じましたが、美味しくお腹がふくれるまで食べれました。ローカルなレストランであったため、店員さんはフランクな雰囲気でした。注文がくるのが遅かったり、多めに飲むことを見越してドリンクを2本持った来たり、と自由な雰囲気でした。マニュアルがあって規制された接客の在り方ではない、自由な雰囲気が開放的で良いなと感じました。

中心街へ行くと、加えて大学や病院、高層ビルとあらゆる公的施設が揃っています。サバンナや動物だけでない、ケニアの一面が見渡せます。中国やアメリカからの企業や投資家の存在も窺えました。
そして特に町の中心では頻繁に渋滞に巻き込まれます。通勤や帰宅の時間は必ず渋滞が起こるみたいで、インフラ整備がまだまだ十分でない、という現地人の言葉に納得です。道が平らではない場所があったり信号が上手く機能していなかったり、住宅エリアがあるエリアに集中しているからこそ渋滞が起きたりと。
夜になると中心街は、道路の車線が無くなったかのように車とバスと通行人で道路は混沌とした状態になっていました。

コワーキングスペ-スであるiHub(アイハブ)も訪れました。この施設にはテクノロジー分野の起業家を初めとする人々や組織が集まり、イノベーションを促す場として利用されています。

空間全体のデザインはスタイリッシュで、入り口にはアート作品が見受けられました。クリエイティブな環境が求められるのはどこにいても変わらないのだなと感じました。担当者の方がオフィスを丁寧に案内してくれました。仕事場はパソコンやデスクなどの設備が揃っており、イベント用に自由に使える部屋や、アイデアを生み出すための部屋、ソフトウェア開発の部屋など機能別のルームを見学しました。

一番新しいルームは、オイルとガスに纏わる事業について議論を進めるためのルームだそうです。それは今年ケニアが原油の輸出を開始し、今後もパイプラインの建設などに投資する、というように石油輸出国への一歩を踏み出した情勢を受けてのことでしょう。
iHubの訪問を通して、今後ケニア発のスタートアップなどが生まれ、国境を越えるビジネスがどんどん発展して行くだろうと感じました。そして今の時代どの国でもイノベーションが求められているのだと思いました。

そして最後に欠かせないのがサファリ。ケニアの観光名所となっています。サファリができる国立公園がいくつかあるのですが、そのうちのひとつが首都ナイロビにあります。首都にあるため、動物と高層ビルが同時に見える場所として人気だそうです。
現地のガイドを車に乗せて案内してもらうのがポピュラーなスタイルです。また面白いのが、観光客の入場料は現地の人より数倍高く設定されていることです。観光業として力を入れていることを感じました。

最後に
原始的な生活のある一面と最先端を進む一面、という両面が混じり合っている、そんな空間でした。ナイロビ滞在を通して、あらゆる面で両極端の生活レベルを垣間見て、「こんなにも違う世界が隣り合わせにあるのか」と衝撃的を受けました。一部の人たちだけでなく、あらゆる層の人々の生活が幸せに生きられるそんな世の中であってほしいと思いました。
発展がすさまじく進むとき、人は目先のことばかりに囚われてしまうのではないかと思います。市民、国、そして地球にとって、長期的な視点で見たときにあるべき姿を見据えつつ開発を進めることが、難しいけれども大切なことなのだと思いました。

そして日本という経済的にも豊かな国で生まれたからこそ、こうして旅にでて異文化を知れたことに有り難さを感じました。ケニアはこれからも発展を続けるだろうし、数年後にはいかに国の様子が変わっているのかと思うとわくわくします。ただ、日本とは違う体験ができたからこそ滞在していてとても面白いと感じたので、ケニアらしさは変わらずに残っていて欲しいとも思いました。

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