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「ローカルガストロノミー」イベントレポートno6

2020年11月「ローカルガストロノミー」をテーマに行ったイベントのレポートNo6です。舞台は発酵の町、秋田県湯沢市。秋田の伝統食材を使用し、未来に食文化を継承するべく「自然と人が共生する」を探究するべく、新しい地域の料理を楽しんだ1日目に続き2日目はシンポジウムを行いました。
そのシンポジウムの中で行われた『未来の食を考える分科会』についてこの記事を通して共有したいと思います。


「ローカルガストロノミー」のセッションでは、議論のトピックを「効率化と地域の食文化」と設定して行った。参加者は3名のゲストと、5名の学生たちだった。
ローカルガストロノミーをテーマとして設けた背景には、食においても効率性が優先されている中で、どこでも同じものが生産・消費されて、工業的になものになっているのではないか?という疑問を持っていたからだ。食が工業的になっているからこそ、ローカルの食材や文化が失われつつあり、生産者と消費者と料理人の距離が離れていき、食の背景が伝わることへの価値が薄くなっているのだと考えられる。その一方で、日本の各地には多様な食文化があり、それに可能性を感じていることから「地域の風土や歴史、文化を料理に表現する」という意味を持つローカルガストロノミーに着目した。地域の食材を使用することに価値があると考えている前提の上で、その場所のものだけを食べることが果たして本当に良いことなのか?と問いを立てていた。既存の「ローカルガストロノミー」という言葉を越える価値を見出し提言するための分科会となった。

分科会の中では、初めに10分ほど自己紹介を行い参加者同士の属性を知り合った。ゲストは、食文化の歴史を研究したり、心理学のアプローチから食を研究したり、海外のマーケットに向けて日本の伝統食文化を発信している方々だった。参加した大学生たちは、地域活性化や林業、持続可能性などについて学んでいる学生たちが参加した。その後、「自然と人が共生するための、これからのローカルガストロノミーとは?」を全体のテーマとして方向付けて議論を始めた。背景として、環境問題が問われている現代では、経済発展と同時に環境や文化を保全することが必要であるため、「自然と人が共生する」ことを探求した。大量生産消費が促進されてきた時代において、「便利である」ことに価値が置かれてきたが、これからの世の中では便利さではない評価軸を作ることの重要性を話し合った。
その後、今あるローカルガストロノミーの概念を超えるためには、まずは「今のローカルガストロノミーが何かを把握することが大事だ」という議論になり、ローカルガストロノミーについて話し合った。
そこで「未来に残したい秋田の食文化は何か?」を秋田県の大学生を中心に挙げていった。具体的には「いぶりがっこ/ババヘラ/きりたんぽ」など秋田に残る食材と食事を紹介してもらったことで、その土地に残る食文化にはその土地の人たちのアイデンティティが宿っているのだと実感した。伝統を未来へと残していくことの重要性を実感しながら、その後、正しくプロモーションをすることが大事ではないか?文化を残すためには、誰に向けて、どのようにPRしていくのか?といったビジネスという資本主義社会の中に組み込んでいくことがひとつ必要な視点となると話し合った。
ゲストと大学生と行った2時間の議論を踏まえて、再度学生たちで話し合って議論をまとめた。結果、「いただきます」と心から言えるような食事を増やしていきたいとまとめた。ローカルガストロノミーとは、食事を美味しく食べるだけではなく、同時に土地や文化、背景を体験することであるように背景を知ることだと考えてる。そのため、背景を知ることで、生産者・料理人・自然環境など食事ができるまでのあらゆる人たちに感謝できるような食事こそが、必要なのだという結論にいたり、全体の参加者たちに向けて提言した。

2日目の懇親会では地元の郷土料理を味わうことをテーマとした。秋田の郷土料理である「きりたんぽ」や「稲庭うどん」を使ったカレーうどんを作った。料理を担当したのが、秋田県で生まれ育ち在住している方々。比内地鶏を使用し本格的なきりたんぽを作った。「比内地鶏の肝を使うことで出汁にこくが生まれる。これがおいしいきりたんぽを作る秘訣」だと教えていただいた。稲庭うどんは現地の飲食店さんに来てもらい作った。前夜のローカルディナーで料理を担当したシェフのおふたりにも料理を作っていただいた。秋田の代表的な伝統食材である「沼山大根」や、鹿肉のソテーを作ってもらい、より秋田県の地元の人に親しまれている郷土料理を体験した。さらに秋田県内のコーヒーショップに来てもらいドリップコーヒーを入れていただくなど、地元の人たちに積極的に関わって作ってもらえた。前日のディナーではシェフ2人による特別なガストロノミー体験をゲストにしてもらったのとは反対に、この日は郷土料理らしさを前面に出すことによって、同じ食材食材を使っても全く異なる料理が出来上がった。
ゲストから新政酒造の日本酒を提供いただき、普通の提供方法とは異なるペアリングを行っていただいた。日本酒をいぶして香りと共に日本酒を味わったり、オイルをかけることで日本酒の味の変化を楽しむことができることを体験した。その新しい食体験に終始参加者たちは驚きを隠せず、大好評の体験となった。

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