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Tax Literacy 個人の税金③          単純累進ではない! 超過累進税率


所得税率の階段は7段階


 
 高城さんは勤務先であるワンダマル(株)に「扶養控除等申告書」を提出、かつ、年収2,000万円以下なので会社が年末調整を行っています。
 所得税額が正しいか、税額計算の流れをチェックしておきましょう。


 所得税は、その人の課税所得金額に応じて、5%~45%の7段階の「超過累進税率」により課税されます。
 税率を掛ける対象である課税所得金額を「課税標準」ともいいます。


累進税率と比例税率



 「累進税率」とは課税所得金額が増えれば税率も上がる課税方法です。
所得税、相続税、贈与税などは累進税率により課税されます。
 一方で、課税所得金額の大きさに関わりなく一律の税率で課税する場合は「比例税率」と呼ばれます。個人住民税、法人税、固定資産税などは、課税標準の大きさに関わりなく一定税率で課税されます。

 ただ超過累進税率では、課税所得金額が増えれば、単純に、いっせいに、
すべての課税所得金額に対して税率が高くなるわけではありません。

 課税所得金額が一定金額を超過する部分には累進的に高い税率を適用し、
一定金額までの低い課税所得金額には低い税率を適用することで税額計算を行うしくみが「超過累進税率」です。

 所得税額を算出するための速算表を見てください。
 課税所得金額が195万円を超える場合は、
「(課税所得金額(A)×所得税率(B)-控除額(C)」の流れで所得税額
を算出します。

 

所得税率は5%~45%の7段階


 たとえば、課税所得金額が500万円の場合、上記速算表の3行目なので、
「5,000,000円×20%-427,500円 = 572,500円」と所得税額を算出します。

 あるいは課税所得金額が1,000万円の場合も、「課税所得金額1,000万円に税率33%を掛けて所得税額は330万円」という単純な計算ではなく、「課税所得金額1,000万円×税率33%-控除額1,536,000円」という算式で所得税は、1,764,000円となります。


2037年までの長い付き合い、復興特別所得税


 2037年までの税額計算では、所得税に対して2.1%相当額の復興特別所得税も併せて課税されます。
 そのため復興特別所得税を含めた税率は5.105%~45.945%の7段階です。

 実際の計算では、課税所得金額に対して5%~45%の超過累進税率による所得税額を計算してから、その所得税額に102.1%を乗じることで、復興特別所得税(所得税に対して2.1%)を含む税額を計算します。


2024年は「定額減税」あり


 上記に加えて、2024年は「定額減税」の適用があるため、年末調整では、下記の順序で、復興特別所得税を含めた年税額を計算することとなります。

課税所得金額に対して税率5%~45%の累進税率により所得税額を算出

税額控除(住宅ローン控除)適用後の年調所得税額を計算
 ※所得税額から控除しきれない住宅ローン控除額のうち一定限度額まで、翌年の住民税額から控除される(上限あり)

年調で定額減税(合計所得金額1,805万円以下の居住者である本人3万円、居住者である同一生計配偶者と扶養親族1人につき3万円)を適用する
 ※所得税額から控除しきれない定額減税額(年調減税額)がある場合は、地方自治体から「調整給付金」が支給される

定額減税額控除後の所得税額に102.1%を掛けることで、復興特別所得税を含む年調年税額調整後の1間の所得税額)を計算する
 ※「年末調整」では、年調年税額と給与から源泉徴収した税額との過不足税額を精算をする形で会社を通して国に年税額を納付することとなります。


年末調整において
所得税額が計算される流れ



納付は100円未満切り捨て、還付は1円単位まで


 高城さんは課税所得金額195万円以下のゾーンなので、最も低い税率5%が適用されます。この場合は、課税所得金額1,643,000円に単純に税率5%を掛けることで、所得税額82,150円を算出します。

 住宅ローン控除の適用はなく、年調所得税額も82,150円。
 年調所得税額82,150円から定額減税額30,000円控除後の所得税額52,150円に102.1%を乗じることで、復興特別所得税を含む年調年税額53,200円を計算するという流れです。

 税額計算においては、1,000円未満の端数を切り捨てた課税所得金額に所得税率を掛け、納付すべき年調年税額は100円未満の端数を切り捨て、還付の場合には1円単位までというルールです。


高城さんは会社の年末調整で課税完了
国税庁「年末調整計算シート」


 

単純累進税率がダメな理由は ?


 超過累進税率では、課税所得金額が195万円を超えると速算表のとおり、「課税所得金額(A)×所得税率(B)-控除額(C)」により税額を計算します。


所得税額=課税所得金額(A)×所得税率(B)-控除額(C)


 たとえば、課税所得金額800万円の場合は「800万円×23%=184万円」という単純な計算ではなく、「800万円×23%-636,000円」という計算にて、所得税額1,204,000円を算出します。

 超過累進税率では、一定額を超過する部分の課税所得金額は高い税率を適用し、低い課税所得金額の部分には低い税率を適用します。
 課税所得金額が大きくなると税率の階段を上がり税額は増えるのですが、納税すべき金額は「税金計算のイメージ図」のように、控除額(C)636,000円を除いた網掛け部分(税率の階段を上がっていく部分)の金額となります。


所得税額は課税所得金額が増えるに従い
7段階の税率の階段を上がっていく


 もしも、単純累進税率で税額を計算するならばどうでしょうか?

 課税所得金額が690万円であれば所得税額138万円(=690万円×20%)、700万円では所得税額161万円(=700万円×23%)となります。
 頑張って収入を10万円増やしても所得税額が23万円増えることで、なんと手取り額は13万円も減少してしまいます。

 単純累進税率では税率が上がる際(きわ)で、手取りが減るという問題が発生してしまうのです。
 超過累進税率では、このような不都合は起きません。

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