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年末調整実務での改正点

 
秋の深まり🌰に合わせて、今年も「年末調整」の季節がやってきます。
企業ご担当者に負担の大きい年末調整の廃止論、個人的には賛成です。

 もしも年調を廃止するならば、月次給与においては高めの税率で所得税を源泉徴収をしておき、確定申告で税金を取り戻す形になるのでしょうね。

 給与所得者もみな自分で確定申告ということになれば、ますます税金には無縁でいられなくなりそうです。その心配は、さておき・・・

年調制度がある間、しくみとポイント、改正点を押さえておきましょう!


年末調整での定額減税(年調減税)


年調減税の対象者
 年末調整の対象となる居住者合計所得金額1,805万円以下である人。
 基礎控除申告書(「基・配・所」)に記載された合計所得金額の見積額が1,805万円以下であることを確認します。
(← 「本人定額減税対象」の欄へチェックが必要)

(注1)居住者 ・・・ 日本国内に住所または現在まで引き続き1年以上の居所を有する個人
(注2)非居住者 ・・・ 居住者以外の個人(国内に住所を有さず、かつ、現在まで引き続いて1年以上の居所も有しない人)


定額減税額
1.本人(居住者に限る)・・・ 3万円
2.同一生計配偶者または扶養親族(居住者に限る)・・・ 1人につき3万円

(注1)同一生計配偶者 ・・・ 所得者(合計所得金額の制限なし)と生計を一にする 配偶者で、合計所得金額が48万円以下の人
(注2)扶養親族 ・・・ 所得者と生計を一にする親族で合計所得金額が48万円以下の人


同一生計配偶者の確認(居住者に限る)

 「配偶者控除等申告書 兼 年末調整に係る定額減税のための申告書(基・配・所)」に氏名等が記載されている「控除対象配偶者」および「同一生計配偶者」
 (← 「配偶者定額減税対象」の欄へチェックが必要)


本人分は「基礎控除申告書」、
同一生計配偶者分は「配偶者控除等申告書」が
「年調減税申告書」との兼用用紙になっている


扶養親族の確認(居住者に限る)

 扶養控除等申告書に氏名等が記載されている扶養親族(16歳未満の扶養親族を含む)

年調減税の対象とする扶養親族は
16歳未満の年少扶養親族を含めて
「扶養控除等(異動)申告書」に記載


 なお居住者である同一生計配偶者または扶養親族に該当するかどうかは、年末時点の現況で判断します。
 ただし、所得者本人が年の中途で出国し非居住者となった場合や死亡した場合には、その出国時や死亡時の現況において判定します。

 また、年の中途で死亡した扶養親族等も死亡日の現況で要件を満たせば、年調減税の対象者となります。



源泉徴収票「摘要欄」の記載
(年末調整対象者は定額減税額等の記載が必要)

1.実際に控除した年調減税額 → 「源泉徴収時所得税減税控除済額 ××円
2.控除しきれなかった金額 → 1に加えて、 「控除外額 ○○円
   (控除しきれた場合 → 1に加えて、「控除外額0円」)
3.合計所得金額が1,000万円超である居住者の同一生計配偶者(配偶者控除等の対象とならない配偶者という意味で「非控除対象配偶者」といいます)を年調減税額の計算に含めた場合
 → 1・2に加えて、「非控除対象配偶者減税有
4.非控除対象配偶者が障害者に該当する場合
 → 1・2に加えて、「減税有 氏名(同配)
5.年末調整の対象者に給与以外の収入があり合計所得金額が1,805万円を超える場合 → 「源泉徴収時所得税減税控除済額 0円、控除外額0円」

 控除外額の記載がある(所得税から控除しきれなかった)場合には、調整給付金の交付により減税の恩恵を受けることとなります。

令和6年分「源泉徴収票」は摘要欄に
年調減税について記載



住宅ローン控除での借入金証明書の添付等が不要に!

(令和7(2025)年分以後の年末調整より適用)

 令和6(2024)年以後の居住分より、金融機関等から送付された借入金の年末残高の情報等の調書を基に、所轄税務署が適用申請者宛に控除額を明記した住宅ローン控除証明書を提供する方法とされます。

 住宅ローン控除証明書は、データ(e-Taxのメッセージボックスの利用)または書面で適用申請者宛に毎年提供または郵送されます。
 これにより適用申請者は、住宅ローン控除証明書へ借入金の年末残高証明書の添付、年末借入金残高の記載作業が不要となります。
 


住宅ローンの証明書の添付等が不要に!



 ただし、住宅借入金等の情報を記載した調書を一定期日までに所轄税務署へ提出することが困難である金融機関は、現行の提供方法による経過措置を適用することができます。


保険料控除申告書に関する改正

(令和6(2024)年10月1日以後の提出分より適用)

 保険料控除申告書について「申告者との続柄」の記載が不要とされます。
 具体的には、生命保険金等の受取人と申告者との続柄、地震保険等の契約者と申告者との続柄、社会保険料を負担すべき人と申告者との続柄の記載を要しません。


保険料控除申告書から
「続柄」の記載欄は削除されている



簡易な扶養控除等申告書の創設

(令和7(2025)年1月1日以後に支払う給与より適用)

 毎年最初の給与の支払いを受ける日の前日までに提出すべき「扶養控除等申告書」につき、その申告書に記載すべき事項がその年の前年に提出した扶養控除申告書の記載内容と異動がない場合には、記載すべき事項の記載に代えて、「異動がない旨」を記載した簡易な申告書により年初申告書を提出できることとなりました。

 なお今後、連年、簡易な申告書が提出される場合には、最後に提出された簡易な申告書以外の申告書の内容が分かるようにしておく対応が必要です。

 申告内容に変更がない(扶養控除等の変動がない)ことを確認するため、通常の扶養控除等申告書としての最新分(最終提出分)を保管、突き合わせが必要となりますので、会社側の作業が簡易になるわけではなさそうです。

 給与所得者の氏名、住所または居所および個人番号(他に台帳を整備しているなど一定の場合を除く)については、簡易申告書についても記載しなければなりません。


簡易な「扶養控除等申告書」
変更なしにチェックして
水色部分のみの記載でよい



支払調書の提出方法の見直し

(令和9(2027)年10月1日以後の提出分より)

 前々年に提出した法定調書等の枚数が30枚(現行:100枚)以上である場合には、各年1月に提出するその法定調書は、e-Tax、光ディスク等(CD、DVDなど)を使用して提出する方法、または、国税庁長官の認定を受けたクラウドサービス等を利用して提出する方法によらなければなりません。



源泉徴収票(給与支払報告書)の提出方法

(令和9(2027)年1月1日以後は市区町村への提出のみ)

 給与等の支払者が、市区町村の長に給与支払報告書を提出した場合には、その報告書に記載された給与等について税務署長に給与所得の源泉徴収票を提出したものとみなされます。
 市区町村へ給与支払報告書を提出するのみで、税務署への源泉徴収票の提出は不要となります。
 法定調書に記載されたマイナンバーで各人の課税状況が把握できるいま、縦割り行政は要らないということですね。

 また、この見直しに伴い、給与所得の源泉徴収票の税務署長への提出を要しないこととされる給与等の範囲を、給与支払報告書の市区町村の長への提出を要しないこととされる給与等の範囲と同じく、年の中途において退職した居住者に対するその年中の給与等の支払金額が30万円以下である場合のその給与等とされます。

(注1)給与支払報告書の提出範囲 ・・・ 1月1日現在において給与等の支払を受けているすべての受給者と、年の中途で退職した人のうち給与総額が30万円を超える人
(注2)退職所得の源泉徴収票については、この特例の対象とされない



 秋の心地良い季節は年々短くなり、猛暑が過ぎれば急に肌寒くなります。
 体調を崩されないようご自愛いただき、年調実務を乗り切ってください!


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